第16章 1. 王都ギルドからの特命
王都の朝。
センターの部屋は、いつも通りにぎやかだった。
「わたくしのプリンが消えてますわ!」
ティティが冷蔵棚を開けて叫ぶと、ルーンがしっぽを揺らしながら素知らぬ顔でソファに寝転がっている。
「し、知らねえな。……ただ、なんかオイラの毛が甘ったるくなってる気はするけど」
「それ、犯人確定ですわーーっ!」
ティティが飛びかかろうとした瞬間、グレンが無言で手を伸ばし、二人の間に割って入った。
そのままルーンの頭を片手でつかみ、テーブルにぽんと置く。
「ぐえっ! ……ちょっと、グレンの扱い雑すぎない!?」
「ふふ……神さまが“朝は甘いものよりお祈りが大事です”って言ってます〜」
ミーナは微笑みながら両手を合わせ、いつものように祈りを捧げていた。
ライクはスープをすすりながら、呆れ気味に全員を眺めている。
「おまえら、朝から元気すぎだろ。今日は落ち着いた一日になればいいんだが……」
その言葉の直後、玄関のベルが鳴った。
コン、コン――
「依頼か?」
ライクが扉を開けると、そこには黒い制服に銀の肩章を付けた人物が立っていた。
胸には、王都治安ギルドの紋章が輝いている。
「……王都治安ギルド・依頼受付部の者です。“元・勇者引っ越しセンター”様に、正式な依頼をお届けに参りました」
ティティとルーンが同時に声を上げた。
「きたーーっ!」「依頼きたーーっ!」
にぎやかな声が、朝のセンターに響きわたった。




