第15章 4. 搬入は大捕物
新居に到着した途端、馬車の扉がガタガタ揺れた。
「……いやな予感しかしねぇな」
ライクがそうつぶやいた瞬間、犬も猫も鳥も、どっと飛び出していった。
「きゃああああ! 逃げましたわーーっ!」
ティティが帽子を押さえて悲鳴を上げる。
犬は庭を駆け回り、猫は屋根へ飛び乗り、フェレットは柱をすべるように登っていく。
小型ドラゴンまで翼を広げ、空をぐるぐる飛び始めた。
「オイラが追う! まてこらーー!」
ルーンが飛び出して庭を疾走する。
「こらっ、そこで止まりなさいっ!」
ティティも杖を振り回しながら追いかける。
二人が入り乱れて走り回る中、オウムが高らかに叫んだ。
「もっと右ー! もっと左ー! はやく捕まえろー!」
「おまえが指揮するから余計ややこしいんだよ!」
ルーンがツッコミを入れた瞬間、ティティが勢いよく飛びついた。
「捕まえましたわ!」
……だが彼女の腕の中にいたのは猫ではなく、ルーンだった。
「ぎゃー! なんでオイラを捕まえるんだよ!」
「し、仕方ないですわ! 毛並みが似てましたの!」
「猫とオイラを間違えるなぁーーっ!」
庭先ではグレンが無言のまま梯子をのぼり、屋根の上の猫を抱えて降りてくる。
その姿は妙に堂々としていて、見物していた子どもたちから拍手が上がった。
「……やっぱりグレンさま、頼りになりますわね」
ティティはまだルーンを抱えたまま、しれっとつぶやいた。
「離せぇぇっ!」
ルーンの悲鳴が空に響き渡った。




