第15章 3. 運搬中の大行進
ようやく荷物と動物を馬車に積み込んだ一行だったが、道に出た途端、街の空気は一変した。
「わんわんっ!」
「ぴーちくぱーちく!」
「にゃーお!」
犬と鳥と猫が一斉に鳴き始め、馬車はにぎやかな大合唱の中心になった。
通りを歩く人々が立ち止まり、子どもたちは目を輝かせる。
「わぁー! 移動動物園だ!」
「お馬さんの上に犬が乗ってるー!」
ティティは子どもたちに手を振りながら、得意げに腰に手を当てた。
「ふふっ、わたくし、完全にアイドル扱いですわ♡」
「いやいや、人気なのは動物の方だろ」ライクが呆れた顔でつぶやく。
一方でルーンはというと、金魚鉢を抱えたまま足を滑らせ、水を頭からかぶっていた。
「うあぁぁっ! オイラびしょ濡れだぁー!」
子どもたちが爆笑しながら声援を送る。
「がんばれ猫ー!」
「おさかな守った!」
「ぐぬぬ……なんでオイラが“芸猫”みたいな扱いされてんだよ!」
それでも金魚は無事で、ルーンの腕の中で元気に泳いでいた。
グレンは無言のまま、犬二匹と猫一匹を抱えて荷台に乗せる。
その絵面はどこか様になっていて、見物人から小さな拍手が起きた。
「……やっぱりグレンさま、かっこよすぎますわね」
ティティはうっとりとつぶやく。
「おい見ろよ、旗がなくなった!」
ライクの声に振り向くと、先頭で振っていた旗をフェレットがくわえて逃走していた。
「待ちなさーいっ! それは隊長専用の旗ですのー!」
ティティがスカートをひるがえして追いかける。
「ったく、しょうがねぇな……オイラも行くか!」
ルーンもしっぽを振り立てて飛び出した。
子どもたちが拍手を送りながら、センターの馬車はまるでお祭りの山車のように街を進んでいった。




