第15章 1. 鳴き声だらけの依頼
王都のはずれにある石造りの小さな屋敷。
門をくぐった瞬間、ライクたちを出迎えたのは――大合唱だった。
「わんっ! わんわんっ!」
「にゃーお!」
「ぴーちく、ぱーちく!」
「ごあぁぁぁ……!」(※小型ドラゴンの鳴き声)
「……な、なんですのこれはっ!? 小さな動物園ですわ!」
ティティは目を輝かせて両手をぱぁっと広げた。
犬が三匹、猫が四匹、鳥かごの中には十羽以上。
庭の池には金魚が跳ね、奥の小屋からはフェレットの顔までのぞいている。
その中央では、一羽のおしゃべりオウムが羽を広げ、得意げに叫んだ。
「いらっしゃいませ〜! いらっしゃいませ〜!」
「……誰がしゃべってますの!?」
「オウムだな」
ライクが肩をすくめる。
ちょうどその時、依頼主の若い夫婦が玄関から現れた。
ふたりは深々と頭を下げ、少し照れたように口を開く。
「今日はありがとうございます。実は……この子たちみんなと、新しい家に移りたいんです」
ライクは庭いっぱいの鳴き声に目をやり、苦笑をもらした。
「家具より数が多そうだな」
ティティはくるっと一回転し、胸を張る。
「お任せあそばせっ! わたくし、本日から“動物の女王”として振る舞いますわ♡」
「はぁ!? 動物の王国はオイラが作るんだろ!」
ルーンが耳をぴくぴくさせながら飛び出した。
「でもあなた、すでに“猫”じゃありませんの!」
「猫だからこそ王様なんだろ!?」
ふたりが鼻を突き合わせて言い合っていると、背後から犬が三匹駆け寄ってきた。
「わんっ!」
ルーンはまとめて飛びつかれ、ぺたんと地面に倒される。
「ぎゃー! やめろー! オイラは犬じゃなくて猫だってばーっ!」
必死に犬を押しのけるルーンの姿に、依頼主夫婦も思わず笑ってしまう。
ライクは額を押さえ、庭の喧噪を一望してつぶやいた。
「……こりゃ、普通の引っ越しじゃなさそうだな」




