第13章 3.夜のほっこり時間
宴会の後、港町の夜は海鳴りと提灯の灯りに包まれていた。
宿の裏手、丘を少し上った場所に、ニャンフレア号が停められている。
「ふぅ……満腹ですわ〜」
ティティが荷台の縁に腰をかけ、星空を仰ぐ。
「食べすぎだろ、おまえ」
ライクは笑いながら、荷台の端に腰を下ろした。
「でも旅行ってそういうもんですよ〜」
ミーナは両手で湯呑みを包み、湯気越しに空を見上げる。
ルーンは星図のように天井に広がる魔法の光を調整しながら、
「ほら、本物の星と重なると……流れ星になるんだぜ」
と言って得意げにしっぽを揺らした。
視線を上げると、天井の魔法と外の空が重なり、
まるで一面の夜空が荷台を包み込んでいるようだった。
「わぁ……」
ティティの瞳が、きらめきを映す。
ふと、遠くの水平線の上に、昼間より低く浮かんでいる影が見えた。
雲間から覗くその輪郭は、港町の灯りとは別の冷たい光を帯びている。
「……さっきより、近づいてませんこと?」
ティティの声は小さい。
「気のせいかもしれません〜。でも……少し、そうかも」
ミーナが星空から影へと視線を移す。
ライクは答えず、ただ前を見据えていた。
海風が髪を揺らし、波音が静かに寄せては返す。
ニャンフレア号の荷台は、まるで小さな展望台のように、
その夜の景色を全員で共有していた。




