第11章 6. 後日談
数日後のセンター。
午前中の依頼整理を終えて、一同は久々にまったりしていた。
「……いや〜、この前のカインの顔、思い出すとニヤけるな」
ルーンがソファでゴロゴロしながらしっぽを揺らす。
「恩返しできたって、わたくしたち的にも気持ちよかったですわね〜」
ティティは机の上で帳簿をぱらぱらめくりながら、満足げにうなずく。
「まあ、“借りは相殺”って言われたからな。これで堂々と胸張れる」
ライクがカップを置いた、その時。
コンコン、と玄関がノックされた。
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扉を開けると、そこに立っていたのは、緊張で耳まで赤くした若い騎士団員だった。
「こ、こんにちは……あの、センターさんに……」
「あら、この前の部下さんですの?」
ティティがにこっと笑うと、青年はこくこくとうなずき、小さな包みを差し出した。
「これ……その、お礼です。受け取ってください!」
「まあまあまあ♡ なにかしら〜?」
包みを開けると、中から出てきたのは――銀色に輝く、小さな金属プレート。
表には猫の肉球の刻印、裏には「認定・荷物警護許可証(仮)」と書かれている。
「……なにこれ」
ライクが思わず眉をひそめる。
青年は一歩前に出て、真剣な顔で言った。
「騎士団の正式許可はまだ出てませんが……個人的に、“あなた方の猫様”を護衛資格者として認めたいと……!」
「猫様!?」
ルーンの耳がぴくっと立つ。
「そう! あの時、あなたのしなやかな動きと背中からの支援……僕は忘れません!」
「いや、オイラそういうの嫌いじゃないけどさ! なんで“猫様”固定なんだよ!」
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「ふふふ……いいじゃありませんの、“猫様引っ越しセンター”の爆誕ですわ♡」
ティティがにやりと笑う。
「やめろ、その呼び方が定着したら一生引きずる……!」
「神さまも、“かわいいのは強い”っておっしゃってます〜」
「……許可証、棚の一番上に飾っとく」
グレンがぽつりと言うと、ルーンは耳まで真っ赤になって飛び上がった。
「や、やめろってば!!」
笑い声と、ルーンのしっぽのばたばたが、センターの昼下がりに軽やかに響いていた。




