表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元・勇者引っ越しセンター  作者: Kahiyuka
第11章 静かな恩返し
69/126

第11章 5. カインの本音

返却任務は、驚くほど穏やかに終わった。

屋敷の主人はお茶と菓子で見送りまでしてくれ、何事もなかったように夜は更けていった。


センターの面々が拠点へ戻った頃には、東の空が少し明るみ始めていた。




「……ご苦労だったな」


玄関先に立っていたのは、カインだった。

外套を羽織り、手には小さな包みを持っている。


「……これ、礼だ。中身は大したものじゃないが」


ライクは受け取りながら首を振る。

「礼なんていい。今回はオレたちの方こそ、返したいものがあったんだ」


「返す?」


カインが片眉を上げる。




「……最初の依頼、覚えてるだろ。

 あんとき、おまえが仕事をくれなかったら、センターは始まってなかった」


ライクはそう言って、わずかに笑う。


「今回は、その借りを返しただけだ」


カインは一瞬だけ目を細め、それから肩で短く笑った。

「……そうか。なら、借りは相殺ってことにしておこう」




ティティがソファの背から顔をのぞかせる。

「え〜、でもケーキ代は別ですわ♡」


「ケーキ?」


「お礼といえばケーキですの! おにーさま、そういうの大事ですわよ!」


カインが小さくため息をつく。

「……今度な」


「やった〜!」




ふと、カインは視線を落とし、小さくつぶやいた。

「あの部下……孤児院の出だ。あいつなりに必死にやってきたが、余計な真似をした。

 処分は軽く済むだろうが……記録に残らない形で片付けたかった」


その言葉には、硬さと温かさが入り混じっていた。




「……あいつは、またやり直せるさ」


ライクの言葉に、カインは短くうなずく。

「お前がそう言うなら、そうなんだろうな」


そのまま踵を返し、夜明けの街へと歩き出す背中は、以前と変わらぬ真っすぐさだった。




扉が閉まると、ティティがにやりと笑った。

「やっぱりカイン様って、ちょっとかっこいいですわね〜」


「おまえ、さっきまでケーキしか言ってなかっただろ……」


ルーンの突っ込みが、夜明けの空気に軽く響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ