第7章 4.ここがオイラの舞台☆
塔の中を進むにつれて、通路の様子がすこしずつ変わっていった。
床はでこぼこになり、天井は低く、石の壁にはつたのような黒い文様が浮かんでいる。
その文様に近づくたび、ふわりと冷たい風が肌をなでるように吹いた。
「この感じ……塔自身が“生きてる”みたいですわね」
ティティが小さくつぶやく。
「たしかに……なにか、見られている気配がします〜」
ミーナの声は、ふだんよりもずっと静かだった。
すると前を進んでいたルーンが、ぴたりと足を止めた。
「ストーップ! この先、動く床。
たぶん“踏んだら流される”やつだぜ☆」
一同が足を止め、ルーンの指さす先をのぞきこむ。
床の一部が、うすくゆらゆらと波打っているように見える。
まるで風もないのに、水面みたいに。
「……どうする? 飛び越えられるか?」
ライクが言うと、グレンが無言で一歩前へ出た。
ごつん、と重たい足音を立てて、その揺れる床を一歩――
ゴゴッ――!!
瞬間、床がズルッと傾き、グレンの体ごと壁に向かってすごい勢いで滑っていった。
「グレン!?」
ドンッ!
壁に激突する大音量。……が、グレンは無傷だった。
ほんのすこし、服にホコリがついただけで、なんでもない顔をして戻ってきた。
「物理無敵にもほどがありますわ!」
ティティがつっこんだその横で、ルーンがふふんと笑う。
「こういうのは“感じる”のが大事なんだよねぇ。オイラに任せてっと……」
そう言うとルーンは、腰に下げた小さな袋から石ころをいくつか取り出した。
「こういう仕掛けは、重さとタイミングで反応するんだよ。だから……」
カラン、と軽く投げた石が、床の真ん中に転がる。
そして、ゆっくりと吸い込まれるように、石が床ごと消えた。
「やっぱり。下に“落とし穴+回転通路”だな」
「……ルーンさん、すごい……! 探知もできるんですね〜」
「探知っていうか、オイラのしっぽがピリッとするんだよな。こういうの、得意分野さ!」
彼は床のすき間をするりとすり抜け、壁ぎわの細い出っ張りを器用に渡っていく。
軽やかで、しなやかで、どこか楽しげだった。
「……ねぇ、おにーさま。あれ、ちょっとかっこよくないです?」
ティティがひじでライクの腕をつつく。
「……ああ。正直、予想以上だ」
ライクはルーンの背を見ながら、思わず言葉をもらした。




