表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元・勇者引っ越しセンター  作者: Kahiyuka
第3章 海を越えて、崖の上へ
18/126

第3章 2.海の底からこんにちは

翌朝。

日の光がゆるやかに海を照らし、船は順調に東方沿岸を進んでいた。


ティティは早朝から甲板でぐるぐると回りながら、海風を浴びていた。


「本日も快晴〜! 波も穏やか、空も青い、風は魔力を乗せてきもちよく……最高ですわ〜♡」


ライクは手すりに寄りかかりながら、少し疲れた声で応じる。


「ぐるぐるすな。酔うだろ……こっちが……」


その背後で、グレンは静かにロープの結び直しをしており、

ミーナは手帳に海の“気配”をメモしていた。


「今日は、海がちょっとざわついてますねぇ……」


ライクが振り返る。


「風向き?」


「いえ〜、“下から何か来てる感じ”なんです〜」


「……下?」


その直後だった。


ドォンッ――!!


船体が一瞬、横揺れする。


数秒の静寂の後、今度は甲板の下からゴゴゴ……と唸るような音。


ティティが顔をこわばらせる。


「な、なになになに!? 地面じゃないのに地鳴りですの!?」


ライクが目を細める。


「これ……まさか」


海面が盛り上がった。


バシャアアアアッ!!


巨大な水柱とともに、海からそれは現れた。

体長十数メートル、濡れた鱗を持つ海棲モンスター――《カイダルス》。


ティティが悲鳴を上げる。


「モ、モンスターですのぉぉぉ!!」


ライクが叫ぶ。


「なんでこのルートにこんなの出るんだよっ!?」


ミーナが淡々と答える。


「このあたり、海の底で魔力が渦を巻いてて、ときどき“別の場所から何かが流れてくる”ことがあるんです〜。たぶん、今のも……そういうのですね〜」


ライクががくっと肩を落とす。


「もっと早く言ってくれぇぇ!!」


甲板は騒然とする。

乗客が悲鳴を上げ、船員が警戒体制に入る中、ライクが即座に叫んだ。


「センター、迎撃体制! いまは引っ越し屋より……元・勇者だ!」


ティティが魔法陣を展開しながらにやりと笑う。


「任せてくださいませ〜♡ 光と炎、混ぜたらたぶん“いい感じ”になりますわ!」


「混ぜるな危険!!」


ミーナは両手を胸に当て、祈りを重ねる。


「神さま、モンスターを“よき方向に反省させて”ください〜……」


「反省じゃなくて撃退でいいからな! グレン、いけ!」


グレンは無言でうなずき、甲板の板を踏みしめて突進。

その手には巨大な収納コンテナの蓋――盾代わりだ。


戦闘は短く、しかし濃かった。


ティティのまぶしい魔法がモンスターの目をくらませ、

ミーナの光の壁が船を守る。


そのあいだにグレンが突っ込み、蓋で思いきりぶん殴った。


ライクの指示でバランスを崩したモンスターは、潮流に巻き込まれて沈んでいった。


しばらくして、甲板には静けさが戻る。


「……終わった?」


ティティが胸を押さえて息を整える。


「ふわ〜〜……ティティ、本日も大活躍でしたわ♡」


「自分で言うな……」


グレンは座り込んで空を見上げ、ミーナはぺたりと甲板に座り込んだ。


「でも、みなさん無事でよかったんです〜」


ライクは汗を拭いながら、ふっと笑った。


「……おれたち、本当に“引っ越し屋”なんだよな?」


ティティがにこっと笑う。


「たぶん、そうですわ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ