第19章 3. 混乱の幕開け
影狼が飛びかかり、空気を切り裂くような唸り声が響いた。
ライクが剣を構え、グレンは無言で盾を前に突き出す。
火花が散り、衝撃で地面が震えた。
「きゃあああっ! わたくしがまとめて吹き飛ばして差し上げますわ!」
ティティは勢いよく杖を掲げ、呪文を唱え始めた。
「ちょ、待て! 狭い場所で大魔法は――」
ライクの声が最後まで届く前に、光が爆ぜた。
ドォォンッ!!
炎と雷が入り混じった奔流が放たれ、影狼を何匹も吹き飛ばした。
しかし同時に、壁が崩れ、天井から瓦礫が降ってきた。
「ぎゃあああ! なにやってんだよティティーーっ!」
ルーンは必死に跳びはね、瓦礫を避ける。
だが頭上から落ちてきた木箱にしっぽを挟まれ、情けない声をあげた。
「い、痛たたっ! オイラのしっぽが荷物扱いされてるぅぅ!」
「ちょっと! なんであなた、そんなとこに尻尾突っ込んでるんですの!」
ティティは慌てて箱をどかそうとするが、逆に杖が瓦礫に引っかかり、バランスを崩してルーンの上に倒れ込んだ。
「ぐええええっ! 重いっての!」
「レディに向かって失礼ですわ!」
二人が取っ組み合いのように絡まっている間にも、影狼は次々と湧き出してくる。
錆びた鎧の怪物がずしんと一歩踏み出し、赤い光を放った。
「おい! おまえら遊んでる場合じゃねえぞ!」
ライクは剣を振り払いながら叫んだ。
混乱の中、戦いはさらに激しさを増していった。




