第18章 1. 結界の迷路
浮遊城へと続く大地を進むと、一行の前に奇妙な光景が広がった。
地面から半透明の壁がいくつも立ち上がり、絡み合うようにして通路を塞いでいる。
光は淡い青に揺らぎ、見る角度によっては道が途切れたり、逆に無限に続いたりしているように見えた。
「……なんですのこれ。迷路みたいになってますわ」
ティティが杖でつつこうとすると、ライクがすぐに手を伸ばして止める。
「待て。下手に触ったら何が起きるかわからん」
「じゃあ、オイラが先に抜け道を探してくる!」
ルーンが胸を張って壁の隙間に飛び込んだ。
一歩目は問題なかった。
二歩目で、ルーンの姿がふっと消える。
「おい!? ルーン!」
ライクが慌てて声を上げる。
次の瞬間、ルーンは壁の上から逆さに落ちてきた。
「ぎゃあああああっ!?」
どさりと地面に落ち、しっぽをぴんと立てて叫ぶ。
「な、なんだよこれ! 勝手にひっくり返されるんだけど!」
ティティはぱちぱちと目を瞬かせ、杖で壁を軽く突いた。
バチィッ!
光が弾け、杖の先が焦げた煙を上げる。
「きゃああっ!? な、なによこれ! 爆発寸前ですわ!」
「だから言っただろ、触るなって!」
ライクが頭を抱える。
グレンは無言で盾を構え、結界の光をじっと観察していた。
その眼差しには、ただならぬ緊張が走っていた。
奇妙な迷路は、彼らの行く手を試すかのように静かに光を脈打っていた。




