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元・勇者引っ越しセンター  作者: Kahiyuka
第17章 空を運ぶ者たち
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第17章 3. 倉庫群の探索

浮遊大陸の外縁を進むと、やがて視界の先に石造りの巨大な建物群が見えてきた。

それは砦のように並び立つ倉庫で、壁一面にびっしりと刻まれた古代文字が、淡い青の光を放っている。


「うわぁ〜……ぜんぶ“倉庫”ですの? お城みたいじゃありませんの!」

ティティはスカートをひるがえしながら、目を輝かせて走り寄った。


入り口には歪んだ金属扉が残されていたが、魔力の鍵はすでに消えているらしく、押せば簡単に開いた。

軋む音とともに、乾いた空気と長い年月を閉じ込めたような匂いが一行を包んだ。


内部は広大な書庫のようだった。

天井近くまで積み上げられた木箱や巻物の束、石の棚に並ぶ瓶や道具。

どれも古代のものらしく、見たことのない素材や形をしている。


ルーンは棚の上に飛び乗り、しっぽを揺らして周囲を見回した。

「おい……こりゃ本当に“人間の倉庫”だな。武器も防具もあるけど、ぜんぶ封印されてやがる」


ミーナは慎重に巻物のひとつに手をかざし、目を閉じた。

「……中に込められているのは、“戦”の記録ですねぇ。

でも……文字がかすれて読めません。まるで、意図的に消されたみたい」


「意図的に……?」

ライクは眉を寄せ、奥の棚に足を向ける。


そこには“勇者の記録”と記された石板があった。

しかし表面は削り取られたように真っ白で、何ひとつ刻まれていなかった。


「……」

ライクはしばらく無言で見つめていたが、やがて拳を握りしめた。


ティティはその背中を覗き込み、首をかしげる。

「えっ、ここ、空っぽですわね? 誰かが間違えて“消しゴム魔法”でも使ったんですの?」


「……そんな単純なもんじゃない」

ライクの声は低く、硬かった。


空白の石板は、沈黙のままそこに在り続けていた。

まるで“勇者という存在”そのものを拒むかのように。

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