風俗童貞の無名漫画家、風俗体験取材漫画家になる
はじめに
これは62歳、愛妻家、風俗童貞のオレが
はじめて風俗へ行ったときの記録である。
62歳、愛妻家、風俗童貞、
はじめての風俗
はじめてのバイ○グラ(恥ずかしながらEDだ)、
はじめての10代の女性、
はじめて風俗嬢の超凄テクニック……、
なにもかもはじめて。
歳を取ってから風俗にハマると身を亡ぼすなんて
言われたのは、昭和に平成……、遠い昔。
風俗嫌いの戯言、噂だったに違いない。
経験してみてわかったことだ。
声を大にして言いたい「六十歳からの風俗通いは最高!」
時代は変わっていく。
2025年、3人にひとりが65歳以上の高齢者。
62年間、オレは風俗に1度も行ったことがなかった。
実際に体験してはじめてわかったこと!
需要と供給。
風俗が廃止されないのが、ほんの少しわかったような気がした。
中高年からの風俗通いはギスギス、ギラギラしていないから
最高に楽しいのだ!
もう一度、ハッキリ言おう!
風俗は中高年からが面白い!
妻以外なら勃つ!
目次
とんでもない仕事を引き受けてしまった
スポーツ新聞社での打ち合わせ
風俗体験取材の仕事が決まったと妻に報告
風俗体験取材漫画家の第一歩
はじめてのバイ○グラを買う
バイ○グラを試してみる
風俗体験取材漫画の依頼がくる
はじめての風俗体験取材
風俗嬢とご対面
18歳の女性の前で全裸になる62歳
風俗嬢の超凄テクニック
風俗嬢さんの前に性癖をさらけ出される
風俗店を出る
(第一話完)
とんでもない仕事を引き受けてしまった
2015年、11月吉日。
62歳、漫画家生活40年の大ベテラン無名漫画家の
このオレが引き受けてしまったとんでもない仕事。
……それは風俗体験取材漫画。
風俗へ行って風俗嬢と気持ちいい行為をして、
その気持ちいい体験を漫画にする風俗体験取材。
しかも毎週連載ときたもんだ。
ふふふ。
はぁ~……(ため息)。
路上ですれ違った女性を見ただけでも勃起しそうな
20代前半の風俗好きエロ漫画家さんなら、
原稿料の話もせずに引き受けているかもしれないが、
オレといえば先ほども述べたが、今年62歳。
……。
はっきりと言おう(胸を張る必要もないが)、
ここ5年以上、おしっこ以外にムスコを使用したことがない。
俗にいうインポだ!
絶倫な奴に言わせれば、「60代でなにを……」と言われそうだが……。
実は20代はじめに経済的理由が大きく、
若くして結婚している。
若いころに妻とお互い獣のように(ノーマルな)Hを
しまくったせいなのか、40代ごろから急に妻とのHに冷めた
(これを見たら叱られるな)。
しかし漫画家という浮き沈みのある職業柄、
40年以上無名ながら続けてこられたのは、
漫画に集中させてくれた妻のおかげだと
本心で思っている。
だから、いやだからではないが、
とにかく、オレは愛妻家だ!
愛妻家だから……、オレは風俗に行ったことがない、
(知人に風俗好きもいなかったせいで、機会もなかった)。
さらにいえばHに1万円も2万円も払えない……、
払うぐらいだったらオ○ニーをして趣味でもある映画館に足を運びたい、
そんな考えを持っている(経済的なことが大きい)。
性病も怖いし……。
そんなオレになぜ、風俗体験取材漫画……?、
しかも毎週連載。
担当編集者に言わせれば「それだから面白い」とのこと。
聞けば、昨今、50歳、60歳まで童貞で、ふと、
風俗デビューする人が激増しているとのこと。
この不景気、50歳、60歳で独身が
一番自由になるお金を持っていること(らしい)。
確かに、出版業界も、
50代以上の「おやじホイホイ」企画の出版本が
信じられないほど多い。
また、高齢者が(年金だけでは生活出来ずに)バイト生活をはじめ、
虫籠に入れられた小さな昆虫のようにヨレヨレ、オロオロする
姿を描いた書物が売れているとか……。
ちなみに風俗嬢さんたちの話では風俗へ通う一番多い客は断トツに
「月イチ妻子持ち」客で、決して恋人がいない独身男性ではないそうだ。
しかも昨今は、30代、40代でセックスレス夫婦が激増していて
右肩上がりに月イチ妻子持ち客は激増しているそうだ。
……だからオレなのか。
担当編集者さんのいうことには、とにかく、60過ぎのおやじが
いまどきの進化した風俗事情に驚いてほしいとのこと!
―まさに高齢者ヨレヨレバイトの風俗体験版
(いや、いや、10代の女性の生肉体を見るだけで
腰が引けちゃうって、免疫ないし……)。
ニューハーフから男の娘風俗、
Hなしの手コキ風俗、
一方的に張り手、罵倒されるドМ風俗、
60歳の以上の完熟女専門風俗、
服を着た40代女性数名の前で全裸になるだけの風俗、
などなど……、
平凡(?)な家庭第一主義で
風俗記事は、雑誌でもネットでも
ほとんど目にすることがなかったオレ……。
担当編集者から昨今の風俗事情を聞かされ驚くことばかり。
知らないことを知るというのは本当に面白い。
人間の欲求には食欲、性欲、睡眠欲と同じぐらい
知りたいという知識欲があるといわれている。
漫画でさえ、楽しむより知識を得たいという読者が多く、
編集者さんに、「嘘でもいいから、豆知識を入れろ」と
よく言われたものだ。
まったく知らない風俗事情……。
飛び込んでみたい風俗業界……。
しかし、やはり妻や子供の顔が目に浮かぶわけで……。
風俗体験取材漫画を連載して思わぬヒット作品になり
オレ自身が表に出るようなことになったら、どうしよう?
妻や子供、親戚、近所の人たちに、なんていえばいいのか……?
性病なんてもらったらどうしよう……?
オレの紹介した記事でなにか不手際がったら怖い人が出てくるのかな……?
心配性なオレは行動を起こす前にあれこれと悪い方へと考える癖がある。
しかし、その日のオレは違っていた。
担当編集者に電話口で言いました。
「やります、やらせてください」
なぜなら、原稿料がめちゃめちゃいいからだ‼
取材と漫画1ページで5万円。
やらいでか!
妻よ、ごめんなさい。
これも親子三人、生きていくためや。
父ちゃん、風俗行って泡まみれになって面白い漫画を描くよ
(なんか楽しいそうじゃんか、オレ)。
明日、オレは妻には内緒で、
○○スポーツ新聞社本社に風俗体験取材漫画の連載の
打ち合わせに行く。
スポーツ新聞社での打ち合わせ
外は今にも雨が降り出しそうなドン曇り。
風俗体験取材漫画の打ち合わせは15時、○○スポーツ新聞社本社。
指定時間15時より50分前に○○スポーツ新聞社本社に到着。
小心者のため、人との待ち合わせには、
必ずと言っていいほど1時間前に到着するオレ。
だから、待ち合わせに正確ではない人が、オレは許せない。
前日に決めた待ち合わせ時間の10分前あたりに、
「今、そちらに向かっています。15分遅れで到着します」
「電車に乗り遅れた、1時間遅れる」
……、
なんて、携帯電話にメール連絡して来る奴ら
(携帯電話、スマホを持っている人が多くなり、
昨今、激増したように思える)。
論外である。
遅れて到着したかと思えば、謝りもせず、しまいには、
「外国人って、時間に縛られていなくてカッコイイですよね。
日本人も時間に追われないで、その時、その時を楽しんだ方がいいですよね」
なんていう奴までいる。
死ねばいいのに。
オレは、そんな奴らを絶対に許せないのだ。
思わず、「時は金なりっ!、待ち合わせ時間は守れ!」と、
そいつを目の前にして罵倒してやりたい気持ちでいっぱいだ。
しかし本人を目の前にすれば、何も言えなくて愛想笑い。
「ボクも、5分ほど遅れちゃいました」
相手に合わせてしまう始末。
オレはそんな情けない小心者だ。
そんなオレに、本当に、風俗体験取材漫画家なんて出来るだろうか?、
踏み出すまでに不安でいっぱいだ。
不安だ。
不安だ。
不安だ。
待ち合わせ場所も確認したので、オレは安心して周辺をゆっくりとうろつく。
冬の時期は、決まって、3年近く同じファッションだ。
スニーカーにGパン。
トレーナーにダウンジャケット。
毎回、風俗嬢に会うなら、服も新しいのを購入しないといけないのかな?
なんて考えながら○○スポーツ新聞社本社の周りをゆっくり散策する。
オフィス街なので、とても殺風景だ。
喫茶店はあるにはあるが、おしゃれすぎて、
いかにもコーヒー1杯の値段が高そうだ。
誰かのおごりでなくては、こんな高級な喫茶店は入れない。
コンビニもあるのだが、さすがにオフィス街だ。
立ち読みしている人がいない。
必要なものだけを購入して、足早に、コンビニを出ていく。
田舎のコンビニなら、まず、入り口に何人もの若者がたむろをしていたり、
座り込んで食事をしているのに……。
貧乏漫画家にとって、オフィス街は本当に歩きにくい場所、
だが憂鬱ではない。
なぜなら漫画家という職業病のせいか?、
仕事のない時も、1日中、机の前に座っていないと不安だが、
こうやって理由があって外出するのは大好きなのだ。
しかも自分を知らない人ばかりの街並みを歩くのが好きだ。
平日の昼間、自宅周辺で60過ぎの男がトボトボと街を歩いていたら、
たちまち、どこかのおしゃべりおばさんに見つかり、
「山崎さんちの息子さんでしょ、そうそう、60過ぎても
売れない漫画を描いている人、
さっき、スーパーの本屋で、立ち読みしていたわよ」
(残念ながらオレが住む田舎にはもう一軒も本屋はない、すべて閉店……、
といっても、昔から平日の昼間に客なんぞは誰ひとりいなくて
とても立ち読みが出来る環境ではなかったが……)。
なんて、噂をされる。
下手をすれば、尾ひれがついて、
「自殺の仕方、なんて本を立ち読みしていたわよ、
売れない漫画家は、生活が大変だからねぇ」なんて、言われる始末。
誰かの歌にあったな、
「他人の評価は気にするな、心が腐るから」って。
他人を評価する側ではなく、評価される立場に立ちたい。
なにかを表現したい。
立てなかったら、他人の表現したものを素直に楽しみたい。
たとえ、それがネット上の落書きでも。
オレは、そんな人になりたい。
願望だ。
誰かの小説にあったな、
「日本人は他人の欠点を見つけるのがとても上手です、
そして群衆によって引きずり落とすという行為が大好きなんです」
オレはそんな人にはなりたくない、そんな群れに入りたくない。
……。
相変わらず頭上の空模様は臼曇り。
オレは○○スポーツ新聞社本社の周りを、
ゆっくり、ひと回りして、本社内の正面玄関に向かった。
決められた時間の5分前に、○○スポーツ新聞社本社内4階の喫茶室に到着。
店内は大きなガラス窓のせいもあって、芸能界やスポーツ界、
さらには風俗界の闇をスクープし続けているスポーツ誌には似つかわないほど、
とても明るく清潔感があり、さらに大手新聞社本社内の喫茶室ということもあって、
どこからとなく、高級そうなコーヒーのいい匂いがする。
余談だがオレは、
コーヒーが好きで、1日5杯以上は飲む。
特に好きな飲み方は、小さなサイコロチョコレートを一粒、
舌の上で転がしながら飲むブラックコーヒー。
平日の昼過ぎということもあって、人がまばらだ。
店内の隅で、オレを見つけて、大きく手を振る人がいる。
この仕事を紹介してくれた某大手出版社の編集、里山さんだ。
隣にはオレの知らない、ともに40代後半の男性が2名座っている。
オレはその人たちに向かって軽く会釈をした。
里山さんとは、3年ぶりの再会だ。
短めのくせ毛でエラが武器のように異常に発達していて、
握りこぶしのような厳つい顔をしている。
一度見たら忘れられない。
オレの記憶が正しければ、今年で56歳だ。
オレより6歳年下だが、大手出版社勤務という安定感か?、
オレより年上に見える。
「山崎さんは、相変わらず、待ち合わせ時間には正確ですね」
里山さんがほくそ笑む。
里山さんのこの言葉の中には、
「だから面白い漫画作品が描けないんだよ」と、
いう裏の言葉があるのだ。
2年近く里山さんが担当で連載作品を持たせてもらったことがある。
そのとき、里山さんに、はっきりと、言われた。
「編集の決めた時間を守るような漫画家はダメ。
売れる作品は描けないよ。オレの知っている売れっ子作家の中で、
性格のいい人はだれひとりいないよ。みんな、わがままだし、
編集をクソ以下だと、思っている奴らばかり。
山崎さん、編集者なんかに気に入られようと思っちゃダメだよ」
連載が終了した時、大衆居酒屋で一気にまくし立てられたことを思い出した。
目の前の里山さんは覚えていないだろうな……。
里山さんは、オレにイスに座るようにイスを引いてくれた。
オレはこれまた、礼儀正しい人だと思われたくて、座る前に、
他の二人の前で、「山崎ひさし(ペンネーム)です」と、一礼した。
里山さんが、礼儀正しく挨拶をしているオレを見て苦笑いしながら、
「まぁまぁ、とりあえず、座って、座って」と、オレをイスに座らせた。
里山さんが右隣の、
小柄で、少しメタボな男性を紹介してくれた。
「○○スポーツ新聞社の文化部デスク、短野さん」
彼はオレと一瞬、目を合わせ、ほほ笑んだ。
ふくよかないい笑顔だ。
きっと毎日、おいしい料理を食べていると思われる上品な口元をしている。
あだ名をつけるとしたら、「小太り肉団子」かな。
仕事が決まれは今はメール連絡だけ。
はじめに顔見せすれば、編集者とも会うこともなくなる。
会っても1年に1度の出版社の忘年会、新年会の席だ。
そのときに名刺交換した人の顔を忘れないためにも、
オレは必ず、名刺交換した相手には、あだ名をつけておくのだ
(そして帰宅したら、すぐに名刺の裏に似顔絵を描いておく)。
短野さんが少し腰を上げ、オレに名刺を差し出す。
オレも腰を上げ、用意してあった名刺を差し出す。
里山さんが、また少し笑った。
さすがに大手○○スポーツ新聞社社員の名刺だ。
シンプルで、社名に権威がある。
それに引き換え私の名刺の手作り感。
中途半端な印刷、左にずれている住所と電話番号とメールアドレスと名前、
ハサミで切った感ありあり。
このいい加減さが、信用を失うのだろうな。
でもお金はかけられない。
名刺代もバカにならない。
「こちらは、広告会社社長、北南さん」
北南さんとの名刺交換。身長は170ぐらいだが、肩幅、胸板ががっちりしている。
あとで聞いたのだが、小学校のころから大学まで柔道をしていたそうだ。
こういうタイプは、文化系には珍しい。
あだ名をつけるとしたら、「ハンガー肩幅」か…。
里山さんが、話を切り出した。
「山崎さん、風俗体験なんて、したことあるの?」
「実話誌系の成人雑誌で、ライターさんの原作モノを、
数年、連載していた時期があります。
自分で体験したことを漫画にしたことはないですけど、
……やってみたいです」
オレはこの原稿料のいい仕事がどうしても欲しくて、意気込みだけは熱く語った。
里山さんは、ちょっと不安な顔をして、オレの顔を覗き込んだ。
「風俗店へ出かけて、風俗嬢と実際にプレイを体験して、
そのプレイ内容をこと細かく漫画にしてほしいのだけど、出来る?」
あらかじめ電話で、里山さんから風俗体験取材漫画だとは聞いていたので
余裕の笑顔で頷いた。
内心、まだ不安だったが、心の準備は出来ていた。
雑誌業界も大変だけど、新聞業界も大変だなと、思った。
なぜなら、ライターと漫画家を雇うよりも漫画家ひとりでライターも
漫画もやってもらったほうが、安上がりだから。
風俗店がスポーツ紙の宣伝広告のために風俗のプレイ代まで出してくれて、
その上、プレイ内容を記事にすれば、新聞社が原稿料までいただける。
男なら、こんなおいしい仕事はないだろう。
しかしオレは、何度も言うように愛妻家だ。
しかもオレは、55年間生きてきて、
1度も風俗というところに行ったことがない。
許せ、妻よ。
ユダヤのことわざが、自分を正当化するために、何度も、何度も頭をよぎる。
「世界を支えている3本柱は、お金とお金、それにお金だ」
愛する妻に服を買ってあげたい。
愛しい子供の結婚資金にお金を持たせてやりたい。
私はその場で、何度も、妻と子供の顔を思い出しては、
心の中で、ふたりに頭を下げていた。
唐突に里山さんがオレに話しかける。
「ニューハーフもOK?」
里山さんが面白そうに私の顔を見る。
ニューハーフ……、
マツコ・デラックス、それともはるな愛?
オレの中で振り子が大きく振れた。
オレは、漫画家になったばかりの20歳ごろ、
ある漫画界の大先輩に、言われたことがある。
「漫画界には、柳の下にドジョウが、2匹、3匹いる。
Aという雑誌が、探偵漫画でヒットをすれば、B雑誌、C雑誌でも
探偵漫画の描き手を求めるものだ。流行には、誰も逆らえないんだ。
信じられないようだけど、海外のヒットした映画、小説、アニメ、アメコミなどを
今、流行している漫画の話、絵柄、雰囲気を求めてくる編集は、本当に多いから。
持ち込みに行って、探偵漫画が描ける?とか聞いてきたら、
その時は、絶対に、昔から探偵小説が大好きでよく読んでいました。って、
いうぐらいアピールした方がいい。
あとで、死に物狂いで、海外の探偵小説を読めばいいんだから。
雑誌連載は、イス取りゲームだからな!」
実際、40年間漫画家生活をしてみて、とても共感できる発言だった。
出版業界、柳の下にドジョウが4匹、5匹。
ミュージシャン、桜の歌にドジョウが4匹、5匹。
業界人の間では有名な合言葉だ。
オレは里山さんの「ニューハーフもOK?」の問いに、
「がんばります」とだけ告げた。
仕事の流れは新聞掲載2週間前に、
広告会社社長、北南さんから、取材先の風俗店の地図とオーナーもしくは、
店長の携帯番号が、オレのところに知らされる。
そして風俗店側と私の間で取材日を決め、私が風俗店に出かけて取材をする。
取材してきた内容を、オレがネーム(ラフ)にお越し、
○○スポーツ新聞社の文化部デスクにメールで送る。
短野さんのOKが出れば、私が漫画にして、完成原稿を仕上げる。
そして再び、○○スポーツ新聞社の短野さん宛てにメール添付で締切日までに送信。
3日後にめでたく○○スポーツ紙に掲載という運びだ。
たぶん今日で、北南さんとも、短野さんとも、連載終了まで会うことはない。
いや、むしろ、今日で2度と、彼らとは会うこともないかもしれない。
当たり障りのない世間話をして、オレは○○スポーツ新聞社を後にした。
電車に乗る前に、妻に「○○スポーツ新聞社からの仕事が決まった」とメールした。
風俗体験取材の仕事が決まったと妻に報告
オレは仕事場には寄らず、帰宅することにした。
電車内で決まった仕事の内容を妻に聞かれたら、
なんて答えるべきかを考えながら……、
と言っても、結婚した当時から妻はオレの作品にはあまり興味がないようだ。
まぁ、大ヒット作で、アニメ化やドラマ化、映画化にでも
なっていれば少しは興味は持つのだろうけど、近所の知人たちには
オレの職業は「デザイン会社勤務」になっているぐらいだから……。
自宅玄関先でため息ひとつ。
玄関先のインターホンを押すと、妻が出迎えてくれた。
相変わらず、化粧っけもなく、
ボサボサな髪の毛だ。服も3年以上は、着ているであろうジャージ姿だ。
妻を見るたびに、漫画家で売れたい、ヒット作が描きたいと思う
(そう思いながら40年たってしまった……)。
「おかえり、仕事、今度はちゃんと支払いしてくれそうな会社?」
やはり原稿料のことを一番はじめに心配してきた。
当たり前だ。
ここ5年ほど、原稿料未払いの編集プロダクションに悩まされ続けて、
一番苦労しているのは、家計を切り盛りしてくれている妻だ。
「○○スポーツ新聞社は、しっかりしているよ」
オレは笑いながら、洗面台に行って、手を洗った。
そう、妻には言ってみたもののやはり、ここでも口約束だ。
一抹の不安は感じる。
しかし天下の大手○○スポーツ新聞社だ。
それよりも、帰りの電車内でオレは今回の仕事のこと。
風俗体験取材漫画の話を、どのように、妻に話せばいいのか、
いろいろと考えていた。
オレは、何気なさを装い、ゆっくり、落ち着いた口調で話し始めた。
「今度の仕事は、ページ5万なんだ」
「凄い!」
久しぶりに見る妻の満面の笑みだ。
「毎週だから、月20万ぐらいにはなるかな」
「凄い、凄い」
妻が小躍りをしている。
妻は出版関係者でも、同業者でもない。
大学を卒業して、一般の会社勤務をしていたOLだったので、
漫画業界の不条理な話をすると、驚いてばかりだ。
ほとんどの仕事が、口約束であることはもちろん、支払いが、
漫画が掲載されてから、3ヶ月後、さらには
半年後なんて編集プロダクションもあること。
一睡もせず実労時間24時間、アシスタント料1日1万円、
時給にしたら約400円ぐらいのアシスタントも少なくないこと。
話すたびに、「嘘、嘘」を連発していた。
最近は、アシスタントではなく、スタッフという言葉を使い、
正当な給料、バイト料を支払う有名な漫画家さんたちが、ちらほら出始めたことは、
漫画業界の裾野が広がるとういう意味でもいいのではと思う。
しかし、まだまだ漫画業界、
社会常識から考えたらおかしなことばかり。
「でも、今回は、仕事内容が少し面倒なんだ……」
オレは、伏せ目がちに話し始めた。
妻は私の顔をマジマジと眺める。
「実は、風俗店のPR記事漫画だから、
実際に指定された風俗店へ行って、
店長と風俗嬢に会って、話を聞い来なくてはいけないんだ」
これが電車の中で考えたオレの結論だ。
「仕事だもん、それくらいの我慢はしなくっちゃ」
オレが62歳、妻が57歳。
この年になって嫉妬なんてないと思っていたが、
あっけない妻の反応だった。
オレは、妻の本心を知る由もなく、
ふたりきりの食事を済ませ、自宅にある小さな自分の部屋へと移動した。
大学生の子供は、ここ最近、帰宅が9時過ぎだ
(なにをしているのかさっぱりわからない)。
20歳を過ぎたので、門限はない。
子供は、オレの仕事に一切、興味がない。
子供が帰宅したのは22時過ぎだ。
それから親子で何気ない会話をして
バカ笑いをした……。
テレビはつけっぱなしだったが
誰も見ていなかった。
風俗体験取材漫画家の第一歩
早朝、いつもより少し早めに事務所に向かった。
なぜなら、ネットで「風俗」を知るため、
それからもうひとつ、風俗体験取材漫画家として
仕事道具の「イチモツ」が役に立つかということを知るためだ。
なんせ8年近く、使っていないからな……。
……。
オレは机の前に腰掛け、自分のパソコンを立ち上げた。
焦る気持ちを抑えながら、「風俗店」を検索した。
別に聖人ぶるわけでもないが、62歳ともなると、
パソコンはあるのだが、世間で騒がれているほど、
普段はエロ画像、動画は見なくなるものだ。
たまに60代過ぎの男性が女性問題を起こしたりしているゴシップ記事を
見たりすると、同じ60代として驚かされるばかりだ。
パソコンを立ち上げたら、下半身も勃ち上がるなんて年齢でもない。
風俗サイトの周りにキラキラ踊る無料無修正エロ動画バナー。
上から下に降りてくる怪しげなバナー。
……パソコンを手に入れた、そう、20年前当時は、
「無料無修正エロ動画」という言葉に、敏感に反応して見まくったものだ。
デジカメを購入したときは、やたらと自分の性器を撮ったみたいに……、
いわばこれは男として、いや、好奇心への儀式かもしれない。
20年前、当時、仕事柄、一日中、パソコンの前にいたから、
気がつけば、無料無修正エロ動画を検索していた。
そんなことを、ふと、思い出し、あの時、あの時間、
もう少し無料無修正エロ動画ばかり見ずに、
しっかり漫画の勉強していれば、なんて過去を恨みながらも、
やっぱりオレは無料無修正エロ動画が好きなんだなぁと思う。
30年前、……今の若い人はわからないと思うが、自宅で映画が楽しめる
ビデオテープVHS、ベータなんてものが人気で、
レンタルビデオ屋なんて店舗が駅近に乱立していた。
最初はレンタル料1本1500円だったが、乱立したためにすぐに500円、
さらには300円近くまで安くなった。
オレは、映画は映画館で観たい願望が強いので、
映画料金とほぼ同じ値段のレンタルビデオ屋はほとんど足を運ばなかった。
たまに知人の編集者さんがアダルトビデオをくれたりしたが、
オレはどうにもロマンポルノでもない、延々と行為だけを見せられる
しかもボカシがあるアダルトビデオが好きではなかった。
当時、購入価格1本1万円はしていた裏ビデオの方が、まだ、興味が沸いた。
エロ動画にハマったのはネット動画の素人たちの流失動画が出始めたころだ。
ラブホ内で、女性が流暢に、近所の話、スーパーの買い物話をしていたかと思ったら、
急に無口になって、Hを始めるパターンは、とくに面白かった。
カメラを意識していないリアル感も興奮した。
一時期、仕事もせずにネットで素人のリアル映像を探しまくったなんてことも
あったが、さすがに四十路あたりから熱は冷めた……。
それにしても今の10代は恵まれすぎている。
「無料無修正エロ動画」と、ネット上で検索すれば、女性の性器、見放題。
オレたちの10代、童貞時代といえば、女性のアソコが見たくても、
見ることは出来ずに、山や海に落ちているエロ雑誌が落ちていたと、
クラスメイトに聞けば、休日、1日かけて、野山を探索したものだ。
断崖絶壁から飛び降りるほどの勇気をふりしぼり
大人のふりしてポルノ映画を見に行ったり……。
映画館内の隅に置いてある自販機、なぜか「裸の絡み」写真が
出てくるという自販機で、当時いくらだったか忘れたが、
身を切る思いをして、こっそり写真を購入したりしたものだ。
もちろん性器なんて見られることもなく、大相撲の力士の取り組みの写真だ。
まぁ、たしかに「裸の絡み」には間違いないが……。
―とにかく、エロパワーは本当に凄かった。
オレの中学時代にネットがあったら、
オレは間違いなくネット廃人になっていたのではないだろうか?と、思う。
しかし45歳を過ぎてから、妻とのエッチもしなくなったし、
仕事での徹夜もできなくなった。
肉体の衰えは激しい。
そんなことを思いながらパソコンの画面を見る。
久しぶりのじっくり見たネット上の風俗店サイトは、とても刺激的だった。
男として夢がいっぱい詰まった巨乳がどのページからも飛び出して来る。
ワクワクしてしまった。
いや、ワクワクが止まらない……。
こんな綺麗な娘の肌を、もしかしたら毎週、無料で、しかも原稿料もいただき
拝めるのかとドキドキしてきたが、下半身は無反応。
動画もあるし、風俗嬢たちの顔写真もある。
赤裸々に、私生活を語っているブログまである。
思わず、股間に手をやっていた。
穿いていたジャージを膝まで下ろし、股間を露出して利き腕の右手で握る。
あぁ~、なんという情けないムスコなのだ。
太くもなく、長くもなく、しいて言えば、カリが少しい大きいと思われる我がムスコ。
62年の人生を振り返れば男として生まれてきたならば、
もっと、たくさんの女性たちと経験したかったかもしれない?、
何も言わないムスコ。
愚痴ひとつこぼさないムスコ……、
若かりしころは、先走り液を挿入前に、こぼしてしまったこともあった。
正直モノのムスコ。
今では小便をした後に、ちょろりとこぼすこともあるが、オレは怒らないよムスコ。
なぜならお前がいたおかげで、私は悔しい時も、苦しい時も、悲しい時も、
お前を慰めれば、私自身、慰められたから。
ムスコ、ムスコ、可愛いムスコ。
あぁ~、オレのような人間関係が苦手で、女性の前では緊張してしまって、
うまく話せないような奥手な私で済まなかった。
ムスコよ、生まれ変わりがあるならば、社交的なイタリア人のムスコになれ。
二度とオレのような人見知りの股間に生えてくるな……、
などと、とりとめもないことをつぶやきながら、
パソコンの無修正画像を食い入るように見ながら、ゆっくりシゴいてみた。
……。
妻とのSEXがなくなり、自慰行為も、記憶は定かではないが、
15年ぶり……か(50代の頃は妻に隠れてセンズリをしていた記憶が……)、
10代のころは、自慰行為をしなければ、
寝られなかったのに、45歳を過ぎてからは布団に入れば寝ている。
しかし深夜3時、4時におしっこに起きてしまうのが悲しい。
ムスコをいじりながら、いろいろな思い出が脳裏に浮かぶ。
まさにムスコは性瞬のチンボルだ。
張りのない年をとったムスコをシゴいてみるが、やはり勃ちが悪い。
右手をムスコからマウスに持ち替え、パソコンの画像を変えてみる。
出てくるわ、出てくるわ。
無修正の女性のグロすぎるほど、よじれたアソコ。
50年前の中学生のオレが、今の時代にタイムスリップしてきたら、
絶対に自慰のカキ過ぎで死んでいただろう。
62歳となった今では、いろいろな卑猥な無修正のアソコを見ても
ムスコはピクリともしない。
時は残酷すぎる。
ムスコを出したまま、今度は、無修正動画にアクセスしてみる。
出るわ、出るわ。
画像よりも動画の方が多いし、アクセスしやすい。
美系からアイドル、ぽっちゃり、熟女、ニューハーフ……。
男性が考えられる性癖なら、すべて動画になっているようだ。
オレは、ぽっちゃり熟女系動画にアクセスをした。
一気に10本近く見た。
生田正子というAV女優に目が止まった。
この年になると、挿入シーンはそれほど、ヌキどころではない。
女優のアエギ声が、艶っぽければ別だが、初老のオレには、
いささかオーバー気味で、作り物感が強調されて白けてしまう。
しかし生田正子の、挿入するまでの演技力には説得力があった。
リアルなのだ。
いるよ、こんなおばさん!なのだ。
オレは生田正子のセリフ
「恥ずかしくないよ、おばちゃんに見せて、見せて」
オレの脳みそを擽る。握っていたムスコが硬くなっていくのがわかる。
「あっ」
オレは、声を漏らした。半勃ちで射精してしまった。
あわてて、イスから立ち上がり、机の前に置かれていたティッシュ箱から
ティッシュを2枚抜き取った。
何年ぶりかの射精は、思った以上に大量に出た。
そしてイチモツが痛かった。
はじめての精通を思い出した。
またティッシュを抜き取った。
飛び散るのではなくダラダラと大量には出たというのが正しい。
粘り気のない精液が太股に垂れている。
拭き取ったティッシュを開き、精液を見る。
その昔、精液を親指と人差し指で摘まんで、ゆっくり親指と人差し指を開いていき、
10センチ以上精液が、糸を引いていたら精子は生きていると、聞いたことがある。
嘘か、本当かは知らない。
しかし今では、3ミリ離したところで、精液は切れる。
なんとも粘り気のない精子なのだ。
親指と人差し指を自分の鼻先に持っていっても、
あの栗の花のような独特の精子の匂いさえしない。
10代、20代なら、1滴垂れただけでも、部屋中に、
あの精子の独特な生命の源のような濃い臭いが充満したであろうに……。
これだけ大量に出たにもかかわらず、まったく、臭いがしない。
まるでコメのとぎ汁。
オレは、静かにムスコを絞り、精液の最後の最後まで拭き取る。
10代、20代なら、拭き取っているその瞬間に、ティッシュがムスコの頭に、
ピタリとくっついて、痛い思いをしながら剥がしものだが……。
62歳、おしっこを拭き取るかのようにティッシュを丸めこみ、
机の横に置いてあるゴミ箱へと無造作に投げ捨てた。
たったいま、放出されゴミ箱に捨てられた精子は、いうなれば、
どうでもいい敗者たちなのだ。
まるでオレのようだ。
不安だ。
なんとかしてあと5年は、漫画業に関わって生活していかなくては……。
不安だ。
こんな半勃ちダラダラ精子で、風俗取材は出来るのだろうか?、
風俗嬢に笑われないだろうか?、
体験取材もロクにできずに、1週で連載打ち切りになるのではないのか?、
「やはり、バイ○グラ頼みか……」
オレが以前から、気にしていた「バイ○グラ」という言葉が脳裏に、
ふと、頭に浮かんだ。
はじめてのバイ○グラを買う
それから、オレは居ても立ってもいられなくなり
早速、ネットで調べたバイ○グラが購入できるクリニックを求めて
新宿まで足を伸ばした。
平日の2時ごろだというのに、相変わらず人が多い。
さすが1日の新宿駅の利用者数280万人近いだけのことはある。
まるで人々が競争をさせられている精子のように動き回っている。
元気のいい精子。
少し弱った精子。
立ち止まってしまった精子。
すべての精子が幸せの居場所を探して彷徨っているようにも見える。
新宿駅東口徒歩5分のところに、目的のクリニックはあった。
中古レコード屋、ラーメン屋、古着屋などが入っているノッポビル。
いかにも新宿・歌舞伎町らしい狭苦しいビルの7階にあった。
まるでゴミ捨て場に送られて行くかのような狭く汚いエレベータに
運ばれ7階に着いた。エレベーターを降りたら、
目の前は下に降りる階段と上に上がる階段。かなり狭い。
もしここで火災でも起きたら、逃げ惑う人たちでパニックになるのは明らかだ。
小心者で妄想癖のあるオレは、こんなところでは働けない。
エレベーターを下りた目の前、左側にドアがあり、
ドアの中央に○○クリニックの表札、ドアには、
「ご自由にお入りください」
と書かれた貼り紙。
ドアを開けると目の前が受付になっていた。
「こんにちは」
受付の20代後半だろうか、医療服を着た男性が私に向かって挨拶をした。
オレは軽く会釈をした。
左横に3人程度が座れる長椅子が、ピタッと、
隙間なく壁に押し付けられるかのように置かれていた。
どうやら、待合室のようだ。
客が3人いた。
オレのような50、60過ぎの男ばかりかと思ったら、さすが新宿・歌舞伎町。
ひとり、あきらかにホストのような20代後半の若者がいた。
余談だが、某作家さん情報なのだが、
ホストの金持ち熟女への枕営業は本当に大変らしい。
彼から聞かされた、拷問のような奉仕と屈辱感、
真実であるならば、オレは、ホストなんぞになりたいとは、
これっぽっちも思わせてくれなかったブサイク顔を実母に感謝すべきであろう。
次々に、名前を呼ばれ、バイ○グラ、レビ○ラを受け取る。
「初診ですか?」
受付の男性がオレに尋ねる。
「えぇ」
オレは周りに客を意識して小さな声で返事をした。
「それでは、軽く診察しますので、こちらのアンケートに記入してください」
A5サイズの用紙を受け取る。
住所と名前と、過去の病気、薬アレルギーのあるない。
早い話が問診票だ。
質問も大雑把なので、書く方も、つい適当になってしまった。
提出するにあたり、ちょっと、恥ずかしさを感じたが、
そのまま受付に渡すと、すぐに診察室らしき別室に呼ばれた。
四畳半ぐらいの狭い部屋に、デスクとイス2つ。
30後半の医者らしき男性が、デスクの前に座っていた。
今風のハイカラメガネ、口ひげ、セットされたオールバックヘア。
20代後半の助手らしき男性が、
ぴったりとそばで立っていた。なで肩、ナチュラルパーマ、細面。
一見、ホストっぽい。
冷静にみると、まるでテレビコントの現場だ。
イスに座った瞬間、大きなタライが頭上から落ちてきそうだ。
「おかけになってください」
助手らしき人が、オレに声を掛けた。
ありえないだろうが、オレは座る瞬間、イスを引かれたら、
面白いな…と、考えながらゆっくり腰掛けた。
「バイ○グラは、聞くのに、30分から1時間かかりますが、
レビ○ラは瞬時に効きます。
効いている時間帯は、個人差はありますが、ほぼ同じです」
医者はオドオドしたオレにバイ○グラとレビ○ラを進めた。
そして医者は、オレの先ほど待合室で書いた問診表を見ながら、
いきなり薬の説明をし始めた。
「どちらも、飲んだら、いきなり勃起するわけではありません。
飲んだらペニスをシゴいてください、で、ないと効きません。
それから飲酒後は効きません。
できれば空腹時に、飲まれた方がより効き目があります」
ようするに飲んだら、瞬時に勃起するのではなく、
刺激を与えないとダメみたいだ。
「顔が火照る感じになりますが、心配はありません。
それは薬が効いている証拠です。
ひどい頭痛、鼻づまりなど、
するようでしたら、もう一度、来てください」
やはり薬だな。
人によって症状が違うらしい。
オレの知人で、完徹、締め切り直前、風邪をこじらせて、
無理して市販の風邪薬を少し多めに飲んで、耳が聞こえなくなった漫画家がいる。
それは風邪薬のせいかどうかは、定かではないが、
すべての薬には副作用があると思って間違いない。
「噂ですが、心臓に悪いって聞いたのですが……」
オレはネットにあった書きこみについて聞いてみた。
「私の患者さんの中には、飲んで心臓が止まったとか、
悪くなったという報告は受けていませんよ」
医者はさりげなく答えた。
「不安でしたらはじめは薬を半分に割って、飲んでも大丈夫です、効きますから」
よほどオレが、不安そうに見えたのだろう。
笑顔で答えてくれた。
オレは医者に軽く会釈をして、コント現場のような部屋を出た。
診察とは名ばかりで薬の使用上の注意だけを聞いただけだった。
本当に、あの人は医者だったのだろうか?。
……。
待合室に戻ると、また新しい客が4名もいた。
大繁盛だ。
この程度を患者に説明して、薬を渡すだけなら、
毎日、締切、打ち切りに怯えて震えている漫画家なんぞは、
さっさとやめてED治療薬売りになりたいぐらいだ。
「山崎さん」
待合室の受付男性店員がオレの名前を呼んだ。
「今回は、どの薬を何錠ほど?」
医者が何日分を出すのではなく、患者が欲しいだけ、薬を注文するのだ。
バイ○グラも、レビ○ラも1錠1500円した。
かなり高額だ。
勃起一回の快楽と映画鑑賞とほぼ同額。
きっと感動を運んでくる魔法のクスリに違いない。
他の客は10錠、20錠とまとめ買いをしていたが、
オレは、バイ○グラ2錠、レビ○ラ2錠、合計4錠を購入した。
それでも6000円だ。
支払いをしている手が震えた。
もし勃起しなかったら?、風俗嬢とのプレイ中に、
毎日、締切、打ち切りに怯え震えている小さな心臓が、止まったら?、
薬を受け取り、クリニックを出るとき、ほんの少し立ちくらみがした。
現在、お小遣い月1万円の貧乏漫画家にとって6000円は、
本当に痛い買い物だ。
仕事関係とは、いえ、妻に堂々と、
「必要経費だから」
とも言えず。
ネットの噂、ED治療薬が心臓に悪いというのは、
ある意味、貧乏人にとっては本当だw。
バイ○グラを試してみる
ひとりの仕事場に戻り、早速、試してみた。
まずは知名度のあるバイ○グラ……。
医者の言った通り、まずは、普段使用している百均カッターで
半分に割って飲むことにした。
1錠50mgだから、その半分25mgだ。
バイ○グラの効き目が出るのは30分から1時間と、聞いていたので、
その間にパソコンの電源を入れ、また、生田正子というAV女優の
映像を探して、鑑賞した。
……。
30分ぐらいしてからだろうか、顔が少し火照り始めていくのがわかる。
机の前の鏡でそっと自分の顔を覗きこむ。
気のせいか、赤ら顔のような気もする。
ジャージを膝まで下ろし寝癖の付いたチン毛を枕にスヤスヤと眠っているムスコを、
マウスを握っていない左手の指先で弄り始めた。
スコスコ、スコスコ……。
「おっ、おっ」
思わず、声が出た。
硬くなっていく。
「おぉーっ」
弄れば弄るほど硬くなる。
「すっ、凄い」
全身の血液がムスコに向かって全速疾走しているようだ。
まるで睾丸の精子が、イワシの大群のように一斉に向きを変え、
尿道口に向かって泳いでイクようだ。
硬い。
とても硬い。
いつの日か、薬1錠でハーバード大学生並みの知識を得ることも可能だろうか?と、
ふと、オレは思った。
鏡を覗いた顔は、あきらかに62歳なのに下半身は10代と言っていいだろう。
目を下にやれば、威きり勃ったムスコの一つ目小僧がオレを見上げている。
オレはイスから立ち上がり、下半身を露出したまま、股間を突き出したポーズをとった。
腹にピタッと、張り付いているほどムスコが直立不動をしている。
ムスコ……、いや、血管が浮き出て、亀頭がテカる、
まさにイチモツと呼ぶにふさわしい。
妻に見せてやりたい。
ネットAV動画の生田正子がニヤニヤして、こちらを見ている。
妻は今のオレを見て、なんて言うかな?、
笑うのかな、それとも、無言のまま、私を押し倒すのか?、
だが決して、妻の前では見せられないこの下半身
(早く挿入したいぃ~、ベム、ベラ、ベロ、ペロ、ペロ………)。
バイ○グラを購入してきたなんて、言うこともできない。
根掘り葉掘り聞かれたら家庭崩壊だ。
……たぶん。
それとも、「お金のためだから、風俗嬢と楽しんできて、
風俗ファンのためにも面白い体験漫画を描いてね」なんて、
言ってくれるだろうか?、
それはない、断じてない。
それにしても見事に勃った。
まさに昭和31年生まれの東京スカイツリー。
改めて薬の威力を知った。
思いっきりカチカチになったイチモツを指先で弾いては、
お腹でパチンと、音を楽しんだ。
ピタン、
ピタン……、
ゆっくり、ゆっくりと、硬さを何度も確認するかのように右手でシコシコした。
どれぐらい硬いかと言えば、この硬さなら障子プスプスは、
出来るのではないかと思った。
すぐに発射するのはもったいない気がしたので、
何度も、指先でイチモツを弄りまわし、シコシコを楽しんだ。
取材用のデジカメで、いろいろな角度から、
勃起したイチモツを撮影した。
映像を見ては、すぐに削除した。
そんなことをしていても、勃起力は衰えなかった。
ネット動画の生田正子の声がイヤらしい。
さらに、リズムよく、テンポよく、気持ちよく、シコシコした。
ズリズリした。
机の隅にあるティッシュ箱から、数枚、ティッシュを引き出した。
右手の動きを早めた。
手首をスナップをきかせ、さらにシコシコを早めた。
明らかに亀頭の色が赤黒く、先走り液で、さらにテカり
水晶玉のように輝いている。
ネット動画の生田正子のイキ顔。
「……あぁっ~」
ネットAV動画の男優さんを、気持ちよくイカせて、
大満足している生田正子の笑顔を見ながら、
思いっきり発射した。睾丸がきゅんとして、中枢神経から脳に電流が走り、
悦楽が脳みそをくすぐった。
私の脳内に蒸気機関車が走る、加速する。
シュッ、シュッ、ポッポッ、
シュッ、シュッ、ポッポッ、
シュッ、シュッ、ポッポッ、
シュッ、シュッ、ポッポッ、
シュッ、シュッ、ポッポッ……、
「ひぃいい~」
5年ぶりのシコシコは睾丸がきゅんきゅんした。
「あっ、出る……」
ピュッ……、だら、だら……、
発射した瞬間の痛み、10代に戻ったかのようだった。
だが、そのあとが、やはり60代……。
精液の勢い、粘り気、匂いまで、10代、20代とはいかなかった。
またしても米のとぎ汁。
ティッシュの上に、放出された粘り気のないサラサラ精液は、
両手でクシャクシャと丸められて、机の下の赤いゴミ箱に捨てた。
ひとりの仕事部屋なので、なにも考えず、ポイッと捨てた。
しばらく放心状態が続いた。
どうやら、心臓への負担はなさそうだ。
医者が言ったように少し、顔が火照る。
頭も別に重く感じないし、鼻づまりもない。
まだ、なんとなく、シコシコすれば、カチカチになりそうだ。
なんとなく、風俗体験取材漫画家として、勇気がみなぎった瞬間でもあった。
バイ○グラ2錠、レビ○ラ2錠を購入したことを黙ったまま帰宅。
……。
朝起きるとバイ○グラの余韻なのか、朝勃ちまでしていた。
気持ちがいい。
妻はまだ隣で寝ている。
何十年かぶりに感じる朝勃ち。
勃起している男は、なんだか知らなきけど楽しそうで愉快。
いまの夢は勃起したままヌーディストビーチをスキップしてみたい…、
できればブルンブルン揺れる巨乳の女性を手を繋いで。
オレは布団の上で大きく背伸びをして、
股間を妻に見せないようにしてトイレに向かった。
風俗体験取材漫画の依頼がくる
朝、11時前、仕事部屋に到着。
仕事部屋に移り、パソコンを立ち上げる。
いの一番にメールボックスを開く。
普段、誰からも来ないパソコンメールに、久しぶりにメールが届いた。
○○スポーツ新聞社本社でお会いした広告会社社長の北南さんからの
第1回目のメールが来た。
人間前向きだと、なにもかもうまくいくようだ。
このスケジュールの流れは、打ち合わせの時に、話していた通りだ。
口約束の出版業界で本当に、口約束通りにスケジュールが運んでくれると、
それだけでうれしい。
特に売れていない漫画家は、資料を渡されるのも、
締切の翌日、なんてことも少なくないからだ。
ひどい時には打ち合わせの時間を、
担当にドタキャンされるなんてことも少なくない。
一般の企業の方々には、本当に不思議な世界だと思うが、
無名作家との約束当日、ドタキャン、
1時間遅れ、2時間遅れする編集者の多さは異常だ。
オレの周りの名も無き漫画家たちも、口を揃えていう。
「締切厳守なんて言いながら、時間厳守で打ち合わせにやって来た
編集者に出会ったことねぇ!あぁ~、売れてぇ!」
人気商売、売れなければ、ゴキブリ以下なのだ。
なんとかして、この風俗取材体験漫画を面白く描き、
読者に認められるように頑張るぞ。
人気が欲しい、
売れたい、
認められたい、
と、思うその前に、自分が1番楽しんで漫画を描けと、
売れっ子漫画家さんたちに散々、言われてきたけれど、今回は認められたい、
売れたい、人気が欲しい。
バイ○グラで勃起もする。
余韻で朝勃ちもする。
北南さんは、口約束通り、仕事依頼をメールしてきてくれるし、
今回は、幸先いいぞ。
でも、いいことがあると、落とし穴があるのが世の常。
こんなことを考えて、立ち止まるから、絶望が舞い込んでくるのだろう。
「笑う門には福来る」
とにかく、前向きで仕事をするぞ。
こんなことを考えながら北南さんのメールを細かく見る。
指定してきた風俗店のホームページ先。
連絡先のオーナーの携帯電話番号が書かれていた。ホームページ先を開く。
18歳以上をクリック。
「アイドル」
「可愛い」
「平成生まれ」
「18歳」
ロリ男心を擽る文字が目に飛び込んでくる。
残念ながらオレは、熟女好きなので、冷静な目で、彼女たちを見る。
まるでテレビアイドルを紹介しているようなポップで元気いっぱいなサイトだ。
場所は、千葉県○市駅前。風俗の種類は箱型ヘルス。
在籍している女のコたちは、10名程度で、全員が20代前半。
どの女のコがオレの相手をしてくれるのだろうか?、
どのコにしても、若い、若すぎる。
うちの子供よりも若い子もいる。
チクチクと罪悪感がよぎる。
ホームページの顔写真には、全員目線が入っている。
お店の会員になれば、目線なしの顔が拝めるらしいが、
取材でお邪魔するだけで、常連客にはならないって、いうか、
本来なら、毎週、毎月、風俗へ通える身分ではない。
ドキドキが止まらない。
夕方、4時ごろ、仕事場。
オレは、机の前に座り、広告代理店社長の北南さんが、
メールしてきた風俗店のオーナー原口さんの携帯番号を、
怖々、自分の携帯電話に打ち込んだ。
生まれてはじめて、風俗店のオーナーという職業の方の携帯電話に電話をした。
トゥルル、トゥルル……。
すぐには出ない。
たぶん初めてかかってきた着信に、誰なのか考え中なのだろう。
しばらくして出た。
無言だった。
すかさず低姿勢に私が話しかける。
「原口さんの携帯電話で、よろしいでしょうか?」
「……はい」
よほど、面倒な電話でもあるのだろうか、かなり煙たそうな返事だ。
「○○スポーツ新聞社の依頼で、お店を取材させていただくことになった
漫画家の山崎ひさしです」
「あーっ、どうも、どうも。聞いています」
オレの正体がわかったらしく、急に声のトーンが変わった。
誰にでもあることだ。
気さくでいい人そうだ。
安心した。
女のコのスケジュールを聞いてから、
のちほどオレに電話をくれるとの約束をして切った。
はじめて風俗店の経営者と電話口で直接話をした。
緊張した。
会社勤めもしたことのない名も無き漫画家としてはまずまずの営業だろう。
―というより、さすがに客商売だけあって、
相手の対応が丁寧で好感触といったところか……。
しばらくして、オレの携帯電話がなった。
着信音は、大好きなカーペンターズの「青春の輝き」。
着信先はすぐにわかった。
取材先のオーナー原口さんだ。
取材相手の女のコの名前はレイ。
18歳。
バストは92ですよと、2度も強調された。
明日のお昼過ぎ、3時、言うことで決まった。
取材日が早ければ、作画に時間がかけられるからうれしい。
それにしても仕事が早い。
出版業界では考えられないことだ。
何度、「今日中に連絡します」と言われ、忘れられたことか……。
まぁ、編集者と出版社にとって生産性のない名も無き漫画家、
片や、取材してほしいお店のオーナーと取材する漫画家、
かなり立場が違う……。
とにかくはじめての風俗体験取材漫画。
ワクワクが止まらない。
そして罪悪感が重く肩にのしかかる。
ゆるせ妻よ。
オレはニヤニヤしながら天井を見上げた。
……。
はじめての風俗体験取材
初取材の日が来た。
緊張のせいか、興奮していたせいか……、
昨夜はあまり寝られなかった。
それでも朝9時起きだ。
普段に比べると2、3時間も早い。
なるべく妻には普段通りを装い、ソワソワしないように気を使った。
仕事場でシャワーを浴びてから取材に行くと決めていたので、
少し早めに家を出た。
取材に行く前にすることを、今一度、頭の中で整理する。
爪を切る。
シャワーを浴びる。
下着を変える……。
とにかく清潔にしていくことだけを心掛けた。
取材用メモ、筆記用具、デジカメ、掲載予定の○○スポーツ新聞……。
そしてなによりも大切な「変身」アイテム~バイ○グラ。
普段よりも時間を取り食事を終え、取材の支度をする。
5年以上はぶら下げているであろう黒いショルダーバッグに重要なものを、
ひとつ、ひとつ確かめながら、詰め込んだ。
そしていつもの、黒のダウンジャケットにGパン。
どこから見てもファッションセンスゼロの中年だ。
中身のない人間なんだから、せめて身なりだけは、
みすぼらしい格好をしたいものだ。
余談だが最近は、キャバクラに行くにも、見えが大切ということで、
靴、カバン、服など、身につけるもののレンタル業が流行しているらしい。
風俗に精通している担当編集者さんに言わせると、
身なりで、騙されるアルバイト感覚のキャバ嬢も少なくないとか。
夜の世界、狐と狸の騙し合いである。
そんな世界に世間を知らない風俗体験未経験の55歳、名も無き漫画家が、
毎週、取材に行くのだから、この先、波風、嵐は当たり前。
どうせ最初に見栄を張っても長続きはしないのだから、正直に突撃するしかない。
前向き、前向き……。
何度も仕事部屋のガス、電気、水道、戸締りをチェックして、仕事部屋を出た。
そして、いつものように、待ち合わせ時間の1時間前に到着。
駅から徒歩5分。
待ち合わせ時間は、お客さんが少ない平日の午後2時。
○○駅の構内で小便をすませ、黒いショルダーバックの中の
小さなポケットの中から、ティッシュに包まれたバイ○グラを
先日、使用した半欠を取りだした。
プレイ前の1時間前、ペットボトルの水と一緒に飲み込んだ。
さらに黒いショルダーバックから口臭の臭い消し薬を取り出し口内にワンプッシュ。
思わず、駅構内のトイレにある鏡の前で、
「お前はどこぞの俳優じゃ」とつぶやいた。
ゆっくりチンポジを直し、駅の改札を出た。
取材先の風俗店はすぐに確認出来た。
派手な店名看板だ。
待ち合わせまでには、まだ20分ほどあるので、オレは駅前をふらついた。
待ち合わせ時間の10分前までふらついた。
5分前にお店の前に立っている。
それがオレのルールだ。
腕時計で3時10分前を確かめ、ゆっくりと指定されたお店へと向かう。
わりと通行人は多い。
他人の目が気になる。
風俗店に入っていくオレの姿を見て、
「平日の午後に風俗かよ」って、思っている人もいるだろう。
「取材だ、私は取材ですよ」
心の中で、何度となく自分に言い聞かせ、風俗店の前まで来た。
バイ○グラを飲んでいるせいなのか、やはり少しだが顔が火照る
(ような気がする)。
ちょうど5分前だ。
5階建てマンションの2階。
オレは覚悟を決め、一歩、大きく足を進めた。
階段脇のお店の看板を確認して階段を上る。
上がったところに受付があった。
「○○スポーツ新聞の取材です」
受付に居たスーツ姿の30歳手前、今どきのサラリーマン風兄ちゃん店員が笑顔で、
「お待ちしていました」と、
小さな小部屋の受付の扉を開け、出てきた店員は、
オレをそのまま手前の待合室に案内してくれた。
明るい派手な花柄カーテンを開けると、そこにはお客がいた。
40歳前後のメガネをかけた一見、まじめそうな人だ。
強いて言うなれば、教師っぽい。
待合室には6個の椅子が、並べられていて、教師っぽい人は一番端に座っていた。
オレは、もう片方の端から2個目の椅子に座った。
すると、すぐに、他の店員が現れ、オレは事務所らしき個室へと案内された。
サラリーマン風兄ちゃん店員と、同年代に見える小太り店員だが、
たぶん、ここでは先輩では、なかろうか、態度に落ち着きと自信が漲っている。
なんだ、だったら、最初から、個室に案内してくれればいいのに、
なぜお客のいる待合室に案内されたのだろうかと、ちょっと不思議に思った。
そこへ受付にいたサラリーマン風兄ちゃん店員が、
お客のようオレにお茶を持ってきてくれた。
そして一礼して、部屋を出て行った。
たぶん受付が、彼の持ち場なんだろう。
「相手の女のコは平成生まれの19歳、うちのナンバー1、みさきちゃん、
バスト92のEカップですよ」
小太り店員がオーナーと同じように、ここでもバスト92センチを自慢げにPRしてきた。
嫌味はない。
頭の中では、すでに、バスト92センチを誇張して、漫画には描こうと決めていた。
オレは黒いショルダーバックから雑誌のコピーと大まかな掲載絵コンテを見せながら、
今回の取材の趣旨を説明した。
小太り店員は取材慣れしているのか、とにかく漫画家であるオレに、
女のコを可愛く描いてくれるように、何度も強調していた。
差し出されたちょっとヌルめのお茶を、一気に飲み干し、案内された個室へ向かう。
すれ違うことがやっとの狭い、けっして綺麗とはいえない廊下を進む。
個室が左右6部屋ある。
簡単な壁で区切られている。
廊下の突き当たり奥にはシャワールームがある。
オレの指定された個室は奥から2つ目。
風俗嬢とご対面
ゆっくり薄いドアを開ける。
パァーッと、オレの目の前にお花畑が広がった(感じがした)。
超ミニのキャミソール姿で、目鼻立ちのハッキリした今どきの女のコが立っていた。
ヤバい、こんな間近に10代の女性の柔肌を見たのは何十年ぶりかな…。
個室、生肌……。
ドキドキしてきた。
「60分コースで大丈夫ですよね」
「はい」
オレは、いきなり、取材を忘れそうになっていた。
ドキドキが止まらない。
バイ○グラのせいもあり、絶対に血圧が上がっている(と思う)。
「みさきちゃん、よろしくね」
そう言うと小太り店員が個室から、急ぐように出て行った。
個室に2人きり。
2畳ほどの個室に置かれた簡単なベッドが生々しい。
最近、寝ていても尿意を催し、深夜に起きてしまう55歳のオレと
明らかに1度寝たら爆睡するであろう肌艶のいい19歳のみさきちゃん、
ふたりっきり。
2メート近くの薄い壁に仕切られた個室で、
上の方は天井から30センチほど空いている。
隣の客と女性の声が聞こえてくる。
行為に集中出来なければ、とても落ち着かないだろう。
―とは言っても、手を伸ばせば、触れることが出来る
いまにも零れ落ちそうな彼女の巨乳。
さすが、オーナーや店員が勧めるだけのバスト92である。
しかも18歳。
熟女好きのオレでも、見ているだけで嬉しくなってしまうのは哺乳類の性か?、
薄い壁の隣からは、別のヘルス嬢のアエギ声が、かすかに聞こえてくる。
なんとも淫靡な空間だ。
「よろしくお願いします」
18歳、みさきちゃんが、ちょこんと首をかしげた。
取材をさせていただく立場のオレは、深々と頭を下げた。
「よろしくお願いします」
彼女が笑った。
「緊張しないでくださいよ、こっちまで緊張しちゃいますよ」
ファーストコンタクトで、62歳……、18歳の彼女に悟られたようだ。
格闘技なら、この瞬間、秒殺。
しかしオレは、かろうじて平静を保って見せた。
一呼吸おいた。
彼女の顔を見た。
笑顔が可愛い。
うちのナンバー1、だと、小太り店員が胸を張るだけのことはある。
今から62歳のオヤジが、平成生まれの女のコと肌を絡ませるかと思うと、
うれしさと罪悪感が入り混じり内臓が口から押し出される気持ちだ。
「60分コースで大丈夫ですよね」
少し彼女も取材に対して緊張しているせいなのか、
お互いの沈黙を怖がり、積極的に話しかけてくれる。
「はい、取材は気にせず、いつも通りのプレイでお願いします」
開き直って、まるで風俗取材のベテラン漫画家のように答えた。
平成生まれ18歳、バスト92のEカップのみさきちゃんが、
オレの黒いショルダーバックを受け取り、
部屋の隅に置いてあるスチール製の脱衣ワゴンの中に置いた。
18歳の女性の前で全裸になる62歳
彼女の顔が私の顔に急接近して、オレの衣類を脱がし始めた。
まさに白魚のような細い指先が、リボンの紐をほどくように手慣れた様子で
オレを脱がしにかかる。
どれだけの男たちをドキドキさせたんだ、この指先は…
(思わず、手を握りたくなった……)。
彼女の甘い匂いが、オレの脳を溶かしていくのがはっきりと分かった。
きっと高級な香水なのだろう。
妻の安っぽい、癖のある香水とは月とすっぽんだ。
いつか高級な香水でもプレゼントしたいが、
オレが風俗体験レポートで得たお金で購入したなんて、
わかったらなんていうだろうな?、
愛妻家のオレは、この場に及んでも、妻への罪悪感が拭いきれなかった。
しかし時は残酷だ。
あっと、いう間にオレは彼女の前で全裸にされた。
62歳のしなびたイチモツが18歳のピチピチの女性の前で
申し訳なさそうにぐったり現れた。
バイ○グラとは、飲めば1時間後に勃起するというクスリではなく、
イチモツに刺激を与えないとまったく勃起しないクスリなのである。
彼女も恥ずかしげもなく、オレの前でキャミソールを脱ぎ、
ブラ、パンティーを、サッと、脱ぎ捨て、
ベッド下の脱衣ワゴンに隠し入れた。
あっという間に全裸になった。
恥ずかしげもなく、股間の真っ黒なヘアをさす彼女。
よく手入れされた綺麗なヘアだ。
これが18歳の陰毛か……。
オレと目が合うたびに笑顔を見せてくる彼女。
風俗に来ていなければ、55歳、決して、拝むことが出来ない草原の輝きだ。
「シャワー、入ります」
店内にシャワー室がひとつしかないため、他の客とブッキングしないために、
店内に聞こえるように大声を発するそうだ。
バスタオルを胸から巻いた彼女は、オレのムスコをまるで子供の手を取るように
やさしく握り、オレを個室の外へと連れ出した。
握られた瞬間、早くも硬くなった。
「元気ね」
彼女が笑った。
「エヘへ、バイ○グラのおかげです」などとは絶対に言えないわけで、
「久しぶりだから」と照れて見せた。
18歳の女のコの前で、露出する気持ちよさはたまらなく恥ずかしかったが、
清々しかった。
興奮した。
癖になりそうだった。
たまに路上で女性に性器を露出する大バカ者がいるが気持ちはわかる。
バイ○グラのせいなにか、半勃ちしていた。
カチカチではなかったが、軽くニギニギされたら射精してしまいそうな勢いだった。
半勃ちのまま、射精したら、どうしよう?、
これから起きることに対して不安と期待とが、
睾丸のなかで小魚のようにワサワサと跳ね回り、
尿道口から、ピョンと、飛び出しそうな騒々しさだった。
彼女は片手で、オレのムスコを握り締めたまま、シャワー室のドアを開けた。
つい先ほどまで他の客が使用していたらしく、湯気で「むわっ」とする。
彼女から使い捨て歯ブラシを渡された。
半勃ちしたムスコが、歯ブラシを動かすたびに揺れていた。
オレは大胆にも揺れるムスコを、彼女に見せつけていた。
なんとなく調子に乗って来た自分がいる一方で、
風俗好きがなりそうなオレがいて怖かった。
彼女が、チラ見するえだけでオレの股間に電流が走る。
股間のムスコが、ピンと、ひと踊りした。
こんな経験は、62年生きてきて一度もなかった……。
言ってみればその場限りのH、彼女の本名さえも知らない、
明日、人混みの中で出会っても気が付くかどうか……、
今が楽しければそれでいい。
マン毛チンペイがいたら、きっと言ってくれるよ。
「明日のためだと……、うるせェ―っ!いまが楽しけりゃ
それでいいんだじょお―っ!」ってね。
理性と世間体で閉じ込められていたオレの性癖がビックバンを起こす。
彼女は、シャワー室に置かれていたイソジンを手に取り、
横に置いてあったコップに数滴たらし、シャワーの水を注いだ。
「うがいしてください」
オレに手渡した。
彼女も同様に、オレの目の前で、イソジンでうがいをした。
そして志村けんが口から一気に「アバ―」と吐き出すように
オレもイソジンを口から「アバ―」と吐き出した。
彼女は少し笑ってくれた。
「熱くないですか?」
シャワーをオレの足元にゆっくりとかける。
「あちちっ……、なぁ~んちゃって」
62歳のオヤジギャグ全開。
一瞬、彼女は驚いた顔を見せたが、また、笑ってくれた。
「漫画家さんって、やっぱり面白いぃ~」
目は笑っていなかったが、オレは彼女の前に全裸になった時から、
オレは今を楽しみたいと決めたんだ。
せっかくの取材だ、楽しもうと!
「匂いのないボディーシャンプーだから、安心してくださいね」
62歳、風俗初体験のオレには、最初、彼女の言った意味がわからなかった。
「彼女や奥さんがいる人が、石鹸の匂いをつけて帰宅したら、
夫婦間で、いろいろと問題が出るでしょ」
前のも担当編集者から聞いていたが、
風俗利用者は妻帯者の月イチ利用者が断トツに多い、
したがって最近では、匂いなしボディーソープが一般的とのこと。
オレは妙に納得した。
ちょうどいい湯加減のシャワーを、オレの股間に当てて、
液状のボディーシャンプーを、自分の手の平に乗せ、両手で泡立てる。
オレの胸元からお腹、股間からお尻をヌルヌルとリズミカルに彼女の手の平が踊る。
18歳の細い指先が、62歳の疲れきった股間の周りを踊るように、
浮遊するように、ヌルリ、ヌルリと駆け巡る。
そして彼女は、バスト92にもボディーシャンプーを垂らし、
オレの胸、背中、お尻を密着させ、プルルン、プルルンと滑らせていった。
背中で彼女の乳首を感じる。
ペタリと密着したかと思えば、触れるか触れていないような羽毛ぶとんの感覚で、
サワサワと乳首の先端が這う。
背後に回った彼女は、グググと乳房をオレの背中に押し付け、
右手で、すでに恥ずかしいほどカチカチ棒をやさしく握る……。
バイ○グラのバカ―っ!
カチカチ棒の根元を掴み、ゆっくりと亀頭の方に指先をスルスルと移動させた。
「ぁあぁ、気持いい?」
彼女はオレの耳元でイヤらしく囁いた。
「はぁあ~い」
オレはカチカチ棒を弄り回す彼女の指先を見下ろしながら答えた。
……オレって、Hのときにこんなにも声が出たっけ?
金銭的、さらに孤独の自営業…、いろいろな条件が重なって55歳まで
風俗へ一度も行ったことがなかったオレ。
正直に言おう、正真正銘、女性経験は今の妻と、学生時代、少しだけ付き合って
1度だけHな関係になった元カノだけだ。
四捨五入すれば、40年間、妻一筋。
まさに変態中の変態だ。
キモ変態だ。
オレは間違っていた。
変態に見られたくないためにエロ雑誌の受け売りで、
ノーマルなHしかしてこなかった。
20代、30代、もっと心の命ずるまま正直な変態プレイがしたかったんだ。
……。
「ぃひぁあぁぁああああ…」
彼女の小さな5本の指先が、まるでネジをハメこむように
亀頭をクルクルと回し始めた。
「こっ、これが風俗嬢のテクニックか!」
オレは心の中であまり気持ちよさに叫んだ。
初めての経験、至上の幸福は甘美な痛みを伴い、
まるで蒼い麦穂を軽やかに踏み鳴らすように
オレの股間に未来を感じさせてくれた、18歳の彼女。
さらに、股間をシゴいたかと思ったら、金玉袋の裏に指先を這わせ、
中指をアナルに入れてきた。
いや、滑り込ませてきた。
ヌズッボ、ズッボ……、
「ぅひゃん」
オレは思わず、なよっとした声をあげてしまった。
「イクときは、女の子みたいに声を出していいのよ」
44歳年下の彼女が、また、オレの耳元で痴女のように甘く囁く。
あ…あかんて、マジで廃人5秒前。
バイ○グラの力を借りているとはいえ、
聳え立つ股間だけを見れば10代、
恥ずかしいほどカチカチに勃起していた。
オレは心の中で叫んだ。
62歳、まだまだイケる。
軽くシャワーをで、全身の泡を洗い流し、バスタオルで雫を綺麗に
拭き取ってくれた。
まるで至福の老人介護プレイだ。
オレは、もっと早く、風俗を体験しておけば良かったと悔やんだ。
風俗嬢の超凄テクニック
個室に戻り、全裸のまま、仰向けにベットの上に寝かされた。
さすがに放置されたムスコは、抜け殻のように横たわっていた。
若い時のように勃ったら、ずっと、勃ち続けているわけにはいかない。
若作りしても62歳は62歳だ。
彼女が全裸のまま、オレの上に覆いかぶさってきた。
顔が近い。
風俗初体験のオレは、遊び方を知らないから、
彼女とい目を合わせられない。
慌てて目をそらした。
ドキドキする。
軽く唇を重ねてきた。
そしてゆっくり、私の唇を開き、舌を入れてきた。
ベブボッレロレロブブッ……、
まるで口の中に地球外生物が入り込んだようだ。
これが本物、あるいは男殺しのディープキスか……。
風俗初体験の私には想像できないような動きで、オレの舌に絡みついてくる。
レロォロォロロロ……、
この舌の動き、なんと表現したらいいのだろう、
まるで小さなダンサーが私の口の中で、
ブレイクダンスをしている感じ。
舌と舌が絡み合う卑猥な音が耳に残る。
同時に彼女は右手で、器用に、リズミカルにテンポよく、ムスコをシゴく。
スコキュッキュッスコスコ……、
彼女の凄いところは、すべての動きに強弱があるところ。
あまりのテクニックの前に、オレは我慢の一文字。
彼女の乳さえ揉むこともできない。
いや、緊張して手が動かない……。
「触っていいのよ」
彼女の方から、オレのオドオドしている手を取り、胸まで誘導してくれた。
バスト92センチ。マシュマロのように柔らかい。
オレは両手で目の前にある巨乳を、まるで、ぶら下がっているスイカを持ち上げる。
ニュートンも思わず前かがみになるほどのイヤらしい重力。
プニュプニュしたあとで、ツンと親指と人差し指で、
ピンク色の乳首を摘む、軽く引っ張る、人差し指で乳輪に円を描く。
「お口、あぁ~ん」
訳も分からず、彼女に言われたまま、口を開く。
トゥーーー、
彼女は笑いながら、オレの口の中に唾液を落とした。
初体験の経験に全身電流が走る。
なんと美しい変態行為。
素晴らしすぎる風俗。
半勃ちのまま、ガマン汁が噴出しそうだ。
余談ではあるが、その昔、知人の先輩漫画家アシスタント(当時46歳)、
初めて、知人たちに連れられて激安ヘルスに行ったときのこと。
あまりの感動と快感とで、病みつきになり、
連載漫画家への夢を捨てて、フリーターとなり、
現在も、月のバイト料半分以上をヘルスに使っている日々。
今のは、快楽に溺れた彼の気持ちが痛いほどわかる。
男なら、一度は風俗嬢のテクニックの前に、すべてを委ねるべきだ。
会社も、資本家も、銀行も、官僚も、政治家も、フリーターも、無職も、
甘えられる人がいるなら甘えたほうがいい。
意外と、人生チョロいかもしれない。
人生、甘えたもの勝ちである。
世間の嫉妬は厳しいけれど、甘えられる場所があれば甘えた方がいい。
人は、一生甘えん坊!
「あぁ~」
オレは彼女の海で、プワリ、プワリと漂う年老いたウミガメ。
目の前の亀頭はガマン汁でテカテカに輝いている。
目線を彼女に移すと、彼女がオレの目を見つめる。
なんていやらしい平成生まれなのだ。
生まれて、たった18年間で、一体、何人の男をイカせたんだ、このコは……。
一旦、彼女は、半勃ち状態のムスコから手を離し、
体を静かに下に移動させ、ムスコに軽くキスをした。
そして彼女は口を開き、舌を丸めたり、Sの字にクネクネと動かした。
……こ、これがプロの舌技。
感動さえ覚える。
「いただきます」
彼女はチン毛を気にしながら、半勃ち状態のムスコをスケベな唇で、
パクリと一気に飲み込んだ。
咥えたまま、イヤらしく、オレに目線を送る彼女。
睾丸の裏あたりが、きゅんとなった。
そして咥えたまま、彼女は、笑みを浮かべながら、
自分の頭を左右に揺らした。
ドスケベ過ぎる18歳。
唇の動きが彼女の男性経験を誰よりも雄弁に語っているような気がした。
半勃ち状態のムスコが彼女の口の中で膨張したのがわかった。
ブルルゥボボッロレロッレーッ……、
口の中で、卑猥な音を立てて、彼女の舌がムスコを上下左右と刺激する。
「あっ」
思わずオレの腰が浮く。
Hをしていて腰が浮いた経験なんてあっただろうか……。
まるでオレは過去から未来に連れてこられた人間だ。
彼女の前でM字開脚させられている私。
すべてが丸見え。
全身の血液が、ムスコに集まり、勃起しているというより、
ドM開眼で、勃起しているといったほうがいいかもしれない。
恥知らずなポーズに脳みそがひっくり返る。
18歳の彼女のテクニックの前に、62歳の風俗初体験中年は声出まくりである。
「ぁあっあああぁ~」
妻とのセックスに、声がでるなんて言えば、発射寸前の、
「イク」の一言ぐらいだろう。
妻には、変態だとは悟られたくなくて、
一度も変態的な行為はしたことはない
風俗嬢さんの前に性癖をさらけ出される
しかし本来、ドM願望の強いオレ。
学生時代からМっ毛はあった。
痴女熟女たちに囲まれ、笑われながらオナニーをしてみたい……。
女王様のペニスバンドで、思いっきり、ケツマ〇コを犯して欲しい……。
初めての風俗初体験で、こんなにも性感帯を見つけられては先が思いやられる。
連載半年後には、本当にドM開眼ではないだろうか?、
楽しみでもあり、恐怖でもある。
彼女はカチカチになったムスコを口から、出して、
親指と人差し指でつまんで淫らな笑みを浮かべる。
「わぁ~、美味しそうな色になってきたぁ」
赤紫色に膨張した亀頭は硬くイキり勃ち、
仰向けに寝ているオレの顔をひとつ目のような尿道口が、
グッと、私を睨みつけている。
いつのまにか手にしていたローションを彼女は、
オレのムスコにたっぷり垂らし、微笑みながら、ゆっくりと、
オレを楽しむように、いたずらっぽく手コキを始めた。
「あっ」
スゥーーーッ……、
オレは、イキそうになり、大きく息を吸った。
その様子を見て、彼女は動かしていた手を止め、オレを見て笑った。
「まだ、イッたらダメだお」
「はっ、はい…」
オレは声にならない声をつぶやいた。
過去に何百本もの男性性器を握ったであろう18歳の指先が、
62歳のパンパンに張った亀頭を摘み、ピロッと、ムスコの尿道口を軽く開いた。
「先っちょから、なにか出ているよ」
彼女は、人差し指の先についた私のガマン汁を、ペロッと、舌先に乗せ、
オレを挑発するかのように舐めてみせた。
「苦ぁ~い」
顔をクシャとさせ、彼女は笑った。
そしてまた、ムスコの根元までを丸呑みした。
ブシュブッブボボボッ……、
さらに、唇が、掃除機の吸い口のように、玉袋をビロビロ吸い込みながら丸呑み。
動きが、さらに激しさを増す。
ビブブッボボボッ……、
ビブブッボボボッ……、
ビブブッボボボッ……、
「ぃひぁん」
オレは、まるで女の子のような声を上げてしまった。
彼女は、そんなオレを面白がっているのか、
さらに、細い白魚のような中指をオレの肛門にニリニリとゆっくりと
反応を楽しむかのように挿入してきた。
ヌズボズボボッ……、
指人形の気持ちはわからないが、この屈辱的痴態にオレは指人形のようにくねり踊る。
62歳の中年男性が18歳の娘の前で、ムスコも、玉金も、お尻の穴も曝け出し、
よだれを垂らし、白目を剥き、乱れ狂い、酔い痴れる。
眼球の裏で稲妻が走り、頭の中が真っ白状態になる。
かき回す、突き上げる、彼女の中指。
内蔵が快感の津波に押し上げられる。
「ぁあっ、いっ、いっ、ぃいぃ~」
アナルというものは、挿入されるよりも、中指が抜かれる瞬間のほうが、
100倍も気持いことを知った、
いや、知らされた(ニューハーフ風俗、どんとこいって感じだ)。
彼女は体を起こし、仰向け、M字開脚のオレを見下ろしながら訊ねた。
「シックスナインがいい?それとも、いきなり素股?」
シックスナイン……、彼女の恥部を目の前で拝めるのか……。
「シックスナイン!」
オレは満面の笑顔で答えた。
彼女は大きなお尻をゆっくりとオレの顔の前に移動させた。
「(ひぃ~~~、でた!18歳の鍾乳洞)」
オレは頭の中が真っ白になった。
と、同時に彼女がオレのイチモツを丸呑みした。
オレも負けず?に彼女の恥部を舌で転がし始めた。
襞を舌でめくっては折りたたみ、軽く甘噛みしては
舌をレロレロ上下に、左右に高速で動かした。
「ぁあああぁ~」
甘い声を上げながら彼女はオレのイチモツをまるで吸い上げる。
今にも射精しそうだ……。
なにくそっ!
せっかく8年ぶりに天を仰いだオレのイチモツ、
ファラされただけでイッてたまるか。
「スッ―」
オレは思いっきり息を吸った。
「なに?」
彼女はオレの上でシックスナインの状態から振り向いた。
「……イキそうなので、素股に……」
オレは正直に答えた。
彼女は笑顔で頷いた。
イチモツを握り締めたままオレの股間の上で、大きく股を広げた彼女。
まるで今にも割れそうな風船のように、膨張したイチモツを
自分の股間に持っていき、イチモツの先っぽを、女性器に、
ヌラヌラと擦りつける。オレは唾液を飲み込み、彼女の刺激を受け止める。
亀頭がビラビラからクリを刺激している。
「あぁ~、気持ちいいぃ」
上から、仰向けになっているオレを見下すドスケベな彼女。
完全に、オレは彼女のオナニーの道具。
学生時代、こんなシチュエーションを、何度も妄想していた。
62歳、初めての風俗で、妄想が現実になった瞬間。
人生は本当に、何が待ち受けているかわからない。
長生きはするもんだ。
カチカチになっているイチモツを握り締めたまま、彼女が、グッと、
オレの腰の上に、腰を下ろした。
彼女の縮れた黒々とした茂みの下からカチカチ状態のイチモツが、
まるでドロガメが獲物を探しているかのように反り返っている。
オレのイチモツを、そっと、握り締める彼女。
オレのイチモツが、彼女のイチモツかのようにも見える。
その姿、まるでオレの腰の上に、ニューハーフが乗って、
オレに向かって、イチモツを見せつけ、挑発しているようだ。
しかし、しっかりと根元と玉袋に、彼女の柔らかいヒダヒダを感じる。
風俗秘伝のタレ、ローションの影響か?、
敏感すぎるほど、彼女のアソコを感じる。
アソコを私の下腹部に密着させたまま、ローションを味方につけ、
腰を自由自在に遊ばせる彼女。
「ぁあっあぁ」
自然と声が出るオレ。
情けないほど気持ちがいい。
彼女のヒダヒダが、スリスリ前後道、オレの急所を擦り回す。
握りこぶし大の小さな脳みそが、頭の中で、蒸発しそうだ。
廃人になりそうだ。
「あんぁあっあんああん」
彼女は、個室の薄い壁が気になるか、少し声を押し殺して艶っぽくアエギ出した。
「ぁんぁいっ、いいっあぁああぁ」
薄い壁の向こうには、待合室で出会った教師っぽい客がいるのか?、と思うと、
オレも恥ずかしくなって、急に、先程までの、
自分がアエギ声を出してしまっといことが恥ずかしくなった。
「あっあ、いっいいいっ」
彼女の腰の動きが左右、上下、回転と激しくなるにつれ、
彼女のアエギ声も、生々しく、さらに大きくなった。
彼女のマン毛の奥から、真っ赤になった亀頭が見え隠れする。
ヌニュヌ、ヌニュヌ…、
さらには、バスト92センチを私の胸、顔に押し付ける。
「ひゃっ、ぁん」
もう、隣の個室のことなどどうでも良くなってきた。
恥ずかしいほど、女のコのようにアエギ声が出てしまう。
「ィ・・・イっ」
62歳の中年が、思わず、硬いベッドのシーツを両手で握り締める。
やばい、射精しそうだ。
18歳の彼女は、オレの上で身体全身を、滑らかに、イヤらしく、大胆に揺らしいていた。
その姿、まるで熱々のうどんの上に乗った鰹節。
「イっ…」
イクと言う前に、発射してしまった。
勃起はしていたが、精子の勢いはなくダラダラという感じで、
尿道口からシャンプー1回分ぐらいが垂れ落ちた。
彼女の腰の動きが、大きくゆっくりになった。
ゆっくり、ゆっくり、女性器をムスコに密着させながら動きを止めた。
オレの股間から下りた彼女は、金玉袋の精子を最後の一滴まで、
搾り取るかのように、オレのイチモツを何度も絞り上げた。
「いっぱい出たね」
まるでアダルトビデオを見ているかのようなセリフを聞いた。
18歳の彼女の前で全裸、喘ぎ声、射精…、
なにもかもが新鮮だった。
しかし彼女がオレの放出した精子をティッシュでふき取り
ゴミ箱に無造作に捨てた瞬間、
オレは風俗体験取材漫画家の顔になっていた。
どんな顔かといえば、プレイ中の顔が性欲仮面ならばスッキリした今は、
間抜け仮面とでも言っておこう。
入店する前は読者のために、面白い流れを妄想していたけど、
結局、風俗嬢の前に、ただただ男として風俗を楽しんだだけのような気がする
(情けない…)。
ローションと精液でビトビトとなったお互いの股間を洗い流すために、
再び、シャワールームに移動。
「シャワー入ります」
たわいもない会話をして、お互いバスタオルを巻いて個室に戻る。
「(風俗、面白すぎるわ)」
心の中でオレは、そう思いながら素早く服を着た。
新聞の発売日を告げ、彼女を残し、個室を出た。
風俗店を出る
明るい派手な花柄のカーテンで隠された待合室を通り過ぎ、
サラリーマン風兄ちゃん店員がいる受付に行き、何度もお礼を言ってお店を出た。
数名の通行人に見られた。
しかしなんとなくではあるが、オレの中でみょうな恥ずかしさは消えていた。
スッキリしたせいか?、足取りも軽かったが、
オレは、ふと、思い出したかのように駅構内のトイレで立ち止まった。
風俗といえば性病はつきもの…、
とりあえず、気休めの性病予防。
学生時代に、小説で読んだことがある。
戦争時代に軍人さんたちが、性病予防のために、
娼婦と寝た直後にチンコの皮を伸ばし、
亀頭を完全に包み込み先っちょを、しっかりと密封するかのようにつまみ、
その中におしっこを一瞬、溜め込み、一気に放出。
ようするに尿道口をおしっこで消毒するのだ。
おかげさまでオレの場合、いつも、剥けた状態ではあるが皮は余っている。
余裕で平常時ならば、皮を伸ばせば、亀頭が包み隠せる。
実際にやってみたのは、今回が初めてだった。
駅構内のトイレだということもあって、人を警戒したが、
偶然にも誰もいなくて、心機なくチャレンジできた。
しかし初めてなこと。
放尿したときの、包み込んでいる亀頭の先っちょの皮。
開き方のタイミングが分からず、ベチョベチョに、右手を濡らしてしまった。
小説の受け売りだが、気休めとして、はじめて性病予防なる行為をやってみた。
バカバカしくて可笑しかった。
洗面所でゆっくり、手を洗い、駅のホームへと向かった。
都内の電車は、次から次へとホームに入ってくるのでイライラがない。
「ニューハーフは、大丈夫?」
打ち合わせで編集の里山さんの言われた言葉を
仕事場に戻る電車の中で、思い出していた。
オナクラ、個室ビデオ、ピンサロ、本サロ、ヘルス、ガールズバー、
セクシーパブ、おっパブ、デリヘル、イメクラ、エステ性感、M性感、
睾丸マッサージ、ホテヘル、ソープ、ニューハーフ、カップル喫茶、
ハプニングバー、ちょんの間、立ちんぼ、連れ出しスナック、3P専門店、
手コキ専門店、裏メイド喫茶、裏添い寝専門店、裏耳かき専門店、
母乳専門店、着ぐるみ全身拘束専門店、フェチ専門店、赤ちゃんクラブ、
乱交、変態バー、SMクラブ、人妻、熟女、ラブドール、ロボットデリヘル…、
風俗店を、さくっと、ネットで検索しただけで、そのプレイ内容も様々だ。
これからの取材を考えただけでもワクワクする
(もうワクワクしかない!)。
電車内だというのに勃起しそうだ。
まだ、なんとなくバイ○グラを飲んだせいで顔と股間が火照っている。
ふふふ。
思わず笑顔になる。
オレの憶測ではあるが、日本ほど性癖が細分化された男を楽しめる風俗は、
ないのではないだろうか?、
「年を取ってから、風俗にハマると怖い」
誰かが言った言葉だが、それは逆だった。
男はムスコがすべて、ムスコは男の履歴書!
「妻は義務、風俗は明日への活力」
いい気になって、思わず、本音とも言えない言葉が浮かんできた。
ムスコが元気でなくては、明日への活力はない。
62歳、ぽっちゃりハゲで同級生たちと比べたら、情けないほど貧乏。
そんな名も無い漫画家が、18歳の白くて柔らかい肌にむしゃぶりついて、
射精したあとに、頭を撫でられ、
「いい子、いい子」
してもらえるなんて、風俗でしか考えられない。
妻には本当にすまないが、オレは風俗で男を取り戻した。
満員電車内、オレは痴漢と間違えられないように、
両手でしっかりと、つり革を握りしめていた。
(敬称略)
著作 山崎ひさし
あとがき
最近は瞬時に効くレビ○トラを飲んで風俗取材に行っている。
1年、2年と毎週体験取材を重ねていると少し余裕が出来たせいもあり、
オーナーさんのご厚意により風俗嬢さんたちの待機部屋での
打ち合わせをしたりして、プライベートな日常会話も楽しんでいる。
70歳、いやいや最高齢では83歳のおじいちゃんが
ヘルスにやってきたこともあるとか……。
50代、60代、まだまだ鼻たれ小僧、80代には負けてはいられない(勝ち負けかよ)。
とにかく3年近く毎週、風俗体験取材をして少しわかったのは、
風俗はただ性欲を処理するだけではなく
(もちろんそれ目的の客は多いが……)、
風俗は妻にも子供にも相手にされない人たちや
本当に孤独を感じている人たちの憩いの場だったりもする。
とある風俗嬢さんが言っていました。
「会話だけを楽しみ来てくれるお客さんの多さにはびっくりしました」
これは異例中の異例だと思うが、とにかく、なんとなくだが、
昨今、孤独を怖れている人が多いような気がする。
とある風俗嬢の言葉
「射精したいの?、
Hがしたいの?、
性器を見せたいの?、
叱られたいの?、
会話したいの?、
……、
とにかくお客の性癖が
細分化しすぎていて、対応しきれないです」
女性の前でフルチンになる。
頭の中、真っ白になる。
それだけでも風俗に行ってよかったと思った。
今年65歳、まだまだ風俗三年生。