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第7話 静かに揺れる森
ファルベラの町が見えてきたのは、出発から5日目の昼前だった。
石造りの塀と風車が並ぶ、美しい町並みが丘の上に広がっている。
商人:「ふ~、ようやく着いたな。リク、手伝ってくれてありがとな。お前がいなきゃゴーレムのとこで詰んでたわ」
俺:「そうか? 俺は何もしてないぞ。」
そう言いながらも、俺は森の奥を一度、振り返った。
***
森の奥、静まり返った木々の間。
あの巨大な石の塊――眠るゴーレムは、そこにいた。
苔に覆われたゴーレムの胸元の“刻印”が、かすかに光った。
光は律動するように、脈打つ。
そして、胸の中――誰にも見えない“中枢魔核”が、静かに目を覚ます。
「記録再生――対象:人間“リク”」
「解析開始――感情:恐怖……非検出」
「警戒ランク……更新」
「対象、異常個体につき――“監視対象”に指定」
――ゴーレムの視界に、リクの姿が再び投影される。
石の巨人は、音もなく、眠ったまま“彼”を追い始めていた。