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第65話 ワープ体験

 炎のブレスがほとばしり、石畳を焼き尽くす。


「来いよ、バカでかいトカゲ! 俺が相手だ!」


 リクが叫び、左腕の盾を高く掲げた。盾の中心に刻まれた古代文字が淡く輝き、周囲に魔力の波動が広がる――《ヘイト・シグナル》が発動した。


「バロックさんの盾の初お披露目ね」


 ミルナが呟き、影の帳をまといながら背後へと回り込む。


「遅れないようにしなきゃ」


 リリアが疾風のように飛び出し、魔物の懐へと突っ込んだ。


 リクのヘイトの盾に引き寄せられたのは、紅き双角を持つワイバーンと、蒼炎を纏った火竜。ふたつの巨体が一斉にリクへ襲いかかる。


「耐えてみせる!」


 リクは両足を踏ん張り、火竜の爪を盾で受け止める。衝撃が全身を揺らすが、動じない。防御力∞のチートを活かした、彼の戦い作戦だった。


 その背後では、ミルナの影槍がワイバーンの眼を穿ち、リリアの剣が火竜の喉元を裂く。


「ナイス! あとちょっとだ!」


 リクが叫び、ふたたび《ヘイト・シグナル》を強化。魔物の動きが一瞬止まった隙に、仲間の連撃が炸裂する。


 数分後、焦げた鱗と瓦礫の山の中に、魔物の亡骸が崩れ落ちた。


---


 リクたちの靴底には、血と砂がこびりついていた。


「……深層、制覇っと」


 額の汗をぬぐいながら、リクはダンジョンの最奥の石扉に触れる。


──次の瞬間、眩い光が炸裂した。


「っ……!?」


風が巻き起こり、視界が真っ白に染まる。体が浮いたかと思うと、直ぐに地面を踏んだ感触があり、別の場所に立っていた。


「ここ……って……」


そこは、ダンジョンの一層目の入口だった。見覚えのある石柱、うっすらと差し込む天井の光。


「これで、正式なSクラスに一歩前進したな」


リクがそう言うと、リリアが思い出したかのように、剣を鞘に収めた。


そして、彼らは王都の宿──〈冒険者の羽根亭〉へと戻った。


しかし、宿の前には見慣れぬ黒衣の人物がひとり、静かに佇んでいた。夜の帳が落ちるなか、フードの奥から鋭い黄金の瞳がリクたちを捉える。


「……ミルナ・エル・ノワール殿ですね」


低く、透き通る声が名を呼ぶ。


「ええ……」


ミルナが小さくうなずくと、使者は懐から巻物を取り出した。



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