第62話 巨大ゴーレム、森へ還る
温泉付きの別荘での休息を終えたリクたちは、再び王城へと招かれた。
王都ミレスト、荘厳な玉座の間。
王の前に立つリク、リリア、ミルナ。
王:「まずは……再び礼を言わせてくれ。封印作戦は成功した。国を救ってくれたお前たちに、我々は多くを負っている」
王は重々しく頷き、そして本題を切り出した。
王:「ただ一つ、残された問題がある。“巨大ゴーレム アトラ=ヴァース”の今後について、だ」
沈黙が流れる。
リクが、一歩進み出た。
リク:「王様。あの巨大ゴーレムは本来、戦いのためのものじゃありません。きっと、もっと別の目的があったんです。僕は……彼を、森に返したい」
王:「森に、返すだと?」
リク:「はい。アトラ=ヴァースが長い時を眠っていた、あの森へ。人の手から離し、静かに休ませてやりたいんです。彼は戦いではなく、守るための存在だった……そんな気がするんです」
玉座の間に、柔らかな沈黙が広がる。
王は長く目を閉じたのち、静かに口を開いた。
王:「……その願い、受け入れよう。王国は、アトラ=ヴァースを森へ返すための支援を行う。だがその森が“聖域”となるよう、保護区域に指定しよう。未来の人々が、誤って目覚めさせぬようにな」
リクは深く、頭を下げた。
リク:「ありがとうございます、陛下。彼を――守っていきます」
そして数日後、リクたちはアトラ=ヴァースとともに、静かな森へと向かった。
春風が吹き抜ける中、アトラ=ヴァースは一歩一歩、大地を踏みしめ、かつて眠っていた場所へと戻っていく。
ミニゴーレムのコロロがそっと、ゴーレム語で何かを告げると、アトラ=ヴァースはゆっくりと膝をつき、木々に囲まれた地へと身体を横たえた。
その背には、もう芽吹き始めた小さな草花が――静かな眠りを祝福していた。
こうして、アトラ=ヴァースは、人の世界を離れ、再び森の守り手として、静かに時を眠ることとなった。
リクは空を見上げ、そっとつぶやいた。
「……ありがとう、アトラ=ヴァース。これからは、もう休んでいいんだ」
鳥がさえずり、森の風がやさしく木々を揺らす。
すべては、平和な日常の中へと、戻っていく。




