第61話 この世界の構造
その日の午後は別荘の図書室で、この世界の構造について、調べていた。
「少しは知っておかないとな」
リクはキーワードを頼りに、古文書や地図、伝承の巻物を探し歩いた。
「世界の構造……世界樹……地脈……」
そして、埃をかぶった一冊の革表紙の書物に手を伸ばす。
《創世記断章──世界を支える樹について》
ページをめくると、なにやら虫がいたので、
「パリイ」
虫を排除した。
この行為が実はここにある貴重な書物を虫食いから防ぎ、本の寿命を延ばすことになったのだが、それはさておき、そこにはこう書いてあった。
> 「この世界は、大地の下に広がる“世界樹の枝”によって支えられている。枝は地下深くに網のように広がり、大陸そのものを支える“基盤”となっている」
> 「もし枝の一本が折れたり腐ったりすれば、大地は傾き、地殻に大きなゆがみが生じる」
> 「若木は、柔らかく、しなやかで、時に手で引き伸ばせるほど弾力がある。触れた者の心に反応して成長することもあるという。だが、その存在は極めてまれで、千年に一度、地上に顔を出すかどうかと言われている」
「……まさか」
リクは思わず声を漏らした。
旅の途中、巨大ゴーレムを探して訪れた森の中で見つけた、あの不思議な木――手で引っ張るとゴムのように伸び、切ってもすぐに再生するような、常識を超えた植物。
りくはあれが世界樹の若木だったという事実に驚愕した。
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リクは縁側に腰かけながら、世界樹の若木の小枝を手に、感慨にふけっていると、
「にゃっ!」
と、軽やかな声が響き、どこからともなくシフが飛びついてきた。
「わっ、シフ!? 急にどうしたんだよ!」
「にゃにゃにゃっ!」
シフの瞳は輝き、リクの手元の若木に釘付けだった。
そして次の瞬間、小枝を器用に前脚で押さえつけ、体をくねらせてじゃれつき始めた。
「お、おい、こら!世界樹の若木だぞ!? それ、たぶん、すごいやつなんだぞ!?」
だが、シフにはそんな理屈は通じない。
その柔らかくしなる若木は、この上ない“超高級猫じゃらし”だったらしい。
「にゃっにゃっ!」
リクはため息をつきながらも、思わず笑ってしまった。
「まぁ……お前が気に入ったんなら、それでいいか」
シフが世界樹の若木と遊ぶ姿は、どこかこの世界の大きさと小さな命の愛おしさを感じさせた。
やがてシフは、若木を抱えたまま縁側に丸くなり、うとうとと眠り始めた。




