第6話 眠れる巨人
出発から半日、商人の馬車は森を抜けてなだらかな丘陵地帯に差し掛かっていた。
商人:「おい、ちょっと早いけど昼休みにするか。……って、おい、あれ見ろ」
馬車の先の道を完全に塞ぐように――巨大な岩の塊が横たわっていた。
……いや、ただの岩じゃない。明らかに形が「人型」だ。
俺:「……寝てる?」
商人:「あれ、たぶん……ゴーレムだぞ。おいおい、マジかよ。なんでこんなとこで昼寝してやがるんだ……!」
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見た目は高さ10メートル超、全身岩と苔に覆われ、体のあちこちに小鳥の巣まである。
胸元にはかすれた古代文字の刻印。間違いなく古代の魔導ゴーレム――しかもデカい。
商人:「引き返すか? 回り道するか? 」
俺:「いや、俺がやってみる。」
俺は、ゴーレムにそっと近づき、静かに声をかけた。
俺:「パリイ」
……反応なし。相手が攻撃してこないので、パリイは発動するはずはなかった。
俺:「やっぱり、不遇職だこれ……」
と、そのとき、その巨体が、モゾモゾと動き始める。
ゴーレム:「……グ……ムゥ……」
商人:「おいおい、何をした?……!逃げるぞ!」
遠く離れて見守っていた商人が慌てている。
俺:「落ち着け、たぶん……こいつ、悪いやつじゃない」
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ゴーレムはゆっくりと体を起こし、石がこすれ合う音を立てながら立ち上がった。
目の部分にあたる箇所に淡い光が灯る。
ゴーレム:「……ココハ……ドコ?」
俺:「通行路のど真ん中だ。寝るならもう少し端にしてくれ」
ゴーレム:「……ワカッタ……」
――ズシン……ズシン……
ゴーレムはのそのそと森の方へ歩き、木の陰でまた横になった。
商人:「お、おお……すげぇ、説得で動いた……!」
俺:「パリイだけが解決じゃない。会話も重要だな。」
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その夜、焚き火の傍で商人がつぶやいた。
商人:「なあ、あのゴーレム……やっぱりおかしい。目を合わせたとき、俺、全身が凍りついたんだ」
リク:「ん、そうか?」
商人:「いや、マジで。足が動かなかった。……あれ、殺気とかそういうレベルじゃねぇ。まるで、魂が握られてるみたいな――」
リク:「ふーん、俺は何も感じなかったけどな。」
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実はこのゴーレム、“古代の精神吸収兵器”だった。
戦争の時代、人間の“恐怖”を感知し、それを吸収して魔力に変換するよう設計されていた――
だがリクは防御力∞のため、無自覚にもそれがまったく存在しなかった。
その結果、ゴーレムは“糧”を得られず、本能的に眠りに戻ったのだった。