第58話 封印完成
積み上がる岩のひとつひとつが、大地に重く響いた。
最初は何も見えなかった。
災厄の王の怒りに応えるかのように沸き立っていた蒸気が、熱気をともなって視界を遮っていた。
まるで、世界そのものが封印を拒むかのようだった。
だが――。
アトラ=ヴァースが黙々と岩を運び、封印の棺桶を完成させていくと、
ミルナ:「……見て、リク! 空が……!」
ミルナが空を指差す。
濃く立ち込めていた蒸気の一部が、ふわりと薄らぎ始めていた。
リリア:「……蒸気が……減ってる……?」
リリアが目を見開く。
アトラ=ヴァースが次の岩を置き終えると、まるで呼応するかのように、空気が一段澄んでいく。
積まれていく岩の層ごとに、視界が広がり、風が抜けていった。
リク:「よし、……その調子だ……」
リクの声が震えた。
――封印が、効いている。
それは誰が見てもが封印が災厄の王を確かに抑えているという証だった――。
「戻れ! 戻れーっ!」
職人たちの声が響いた。
「おい、蒸気が引いてるぞ!」
「……これ、成功するかもしれん……!」
「リクのやつ、本当にやりやがったのか……!」
逃げ出した生産ギルドの職人たちが戻ってきた。
そして、岩を運び、鉛を巻き、封印の輪に加わった。
王都からも支援部隊が到着し、最終工程に取りかかった。
誰もが疲れていたが――その目は光っていた。
「最後の岩だ!」
リクが叫ぶ。
「アトラ=ヴァースを配置ポイントへ!」
コロロに合図を送ると、アトラ=ヴァースがゆっくりと、しかし確かな一歩で進む。
「……封印石、最終位置に配置完了」
カチリ、と音が鳴った。
風が、静かに吹き抜けた。
まるで、世界が――ほっと、息を吐いたように。
「終わった……?」
誰かのつぶやきに、全員が耳を澄ませた。
災厄の王は、完全に沈黙していた。
もはや黒い蒸気も、大地を揺るがす咆哮もない。
リク:「……ありがとう、みんな」
その言葉と共に、青空が広がった。
こうして、世界はひとつの災厄から救われた。
それは誰かひとりの力ではなく――信じ、支え合った者たちの絆が成し遂げた奇跡だった。




