第54話 王都の決断
リクが巨大ゴーレムと再会した頃、王都ミレスト、王宮の評議の間。
「なぜ、リクとかいう誰も知らない男に任せるのだ! 我らの“勇者セイリオス”こそが、王を討つ存在ではなかったのか!」
重鎧に身を包んだ貴族たちと、教会の長老たちが集まり、激しい言い争いが続いていた。
「封印だと? 滅ぼすべき敵を生かすとは、何たる愚行!」
「だが勇者パーティーは……」
老魔導師が絞り出すように言った。
「“災厄の王”に近づいただけで、全員倒れた……。あれは、ただの魔物ではない。滅ぼすことなど、もはや叶わぬ」
静寂が広がる。誰も、リクの作戦を否定しきれなかった。
そのとき、ひとりの少女が前に出た。
フィーネ――勇者パーティーの僧侶だった。
後衛職だったため、他のものよりは軽傷ですみ、現地の状況を説明できるのは、現状、彼女一人であった。
「リクさんは、私たちができなかった“選択”をしているんです。滅ぼすのではなく、封じる。世界を壊さずに未来を選ぶ……それは、本当の意味で“守る”ということなのではありませんか?」
評議の間に、波のように戸惑いが広がった。
「しかし、ルゼンナからの報告書を読む限り、彼の行動は怪しいものばかり」
そこに、ひとりの若い書記が控えめに手を挙げた。
「……あの、失礼いたします。リクという人物の“職業”に関してだけは間違いがないと報告があります」
「職業だと?」
「はい、各地のギルドで記録されたステータス情報を照合したところ……リクの職業欄には“勇者”と記されています」
一瞬、部屋の空気が凍りついた。
「勇者……? あの、王の神託によってのみ現れるとされる……?」
「まさか、勇者召喚に失敗したあの時期に……」
一気にざわめく場内。軍司令の男が声を荒げる。
「本当にそれが事実なら、我々はとんでもない過ちを犯したかもしれん! ギルド! いますぐ、王都ギルド本部で彼の職業鑑定を実施しろ!」
「はっ!しかしながら、彼はまだ王都に到着していません」
やがて王が口を開く。
「……この役目、リクに任せよう。彼の決断に、我々は従う」
一部の貴族は歯噛みしたが、反論できなかった。
こうして、リクの計画は正式に王都によって認められ、「僻地に転生された勇者」は、ようやく世界を導く“勇者”として認められたのだった──。




