第45 リリアの怒り
遺跡に近づいたことを知ったリクたちは、気が緩んだ。
それに感づいたギランは、もう一度引き締めた。
ギラン:「まだまだ気を緩めるな。地面にはまだ古い爆弾が埋まってる。踏み抜いたら終わりだ」
ミルナ:「大丈夫です、気をつけます!」
ミルナがうなずき、精霊猫のシフもピリリと毛を逆立てる。
だが――その数秒後。
リク:「うわっ、こけるっ」
リクがつまづいて、2、3歩よろめき、最後は背中から倒れ込んだ。
リク:「やべえええええっ!!!」
リリア:「リク――!!」
次の瞬間、ズゴオォォォォン!!!
地面が大きく揺れ、炎と土煙が森中に炸裂した。
ギランが絶句しながら叫んだ。
ギラン:「な、何してんだあああああ!! 終わった!!」
だが、土煙が晴れたその中に――
リク:「……いてて。ちょっとびっくりしたかも」
リクは、まったくの無傷で、ぽりぽりと頭をかいて立ち上がっていた。
ギラン:「……え?」
ギランの口がぽかんと開く。
その服は少し煤けてはいたが、肌に傷ひとつない。
リク:「いやー、ちょっと転んだだけなんだけど……。あ、でも下に何かあったかも」
ギラン:「“何かあったかも”じゃねぇぇぇぇっ!! 今の、中型クラスの爆発だぞ!? 無傷ってどういうことだよ!!」
爆弾が破裂しても無傷だったリクは、服の埃を払いながら、周囲の視線を感じていた。
リク:「……俺、やらかした?」
ミルナは呆れ半分、感心半分の表情で肩をすくめ、ギランは「もう帰っていいか……?」と真顔で言っていた。
そして――
リリア:「リク」
背後から、低く、鋭い声が響いた。
剣姫リリアが、ゆっくりと歩み寄ってくる。
その目は笑っていない。むしろ、剣と同じくらい鋭く、冷たい光を放っていた。
リク:「え、あ、リリア? あの、その、転んだのは――」
リリア:「次、同じことをやったら――殺すわよ?」
リリア:「……え?」
リクは一瞬、何を言われたのか分からず、目を瞬かせる。
リリア:「お前が爆発で死んだら、こっちはどうすんのよ。せっかくここまで来たのに。なにより……」
そこまで言って、リリアは少しだけ言葉を詰まらせた。
リリア:「……お前が死んだら、私が……嫌でしょ、そういうの」
リク:「え、ええと……つまり、心配してるのか、怒ってるのか、殺したいのか……?」
リクはぼんやりと空を見上げた。
リリア:「分かれ、バカ」
ドスッ!
リリアはリクの額を軽く拳で小突くと、くるりと踵を返した。
リリア:「次はちゃんと足元見ろ。いいわね?」
リク:「「は、はい……」
リクは思わず背筋を伸ばして返事をした。
その背後で、ミルナが小さく笑っていた。
「まるで姉弟みたいね?」
こうして、リクは“無敵でも、リリアの怒りは怖い”ということを今さらながら学んだのだった。




