第44話 先導犬ルーファ
遺跡都市へと続く古の森は、朝靄に包まれ、どこか異様な静けさを湛えていた。
ギランは黙って腰の斧を確認すると、そばにいた犬に小さく合図を送った。
ギラン:「行け、ルーファ。いつも通り、先に頼む」
ルーファ:「「ワン!」
茶色い毛並みの犬――ルーファは軽やかに駆け出し、森の中へと消えていく。
リク:「……あの犬、爆弾検知犬ですか?」
リクが歩きながら訊ねると、ギランはふっと口元をゆがめた。
ギラン:「まあな、俺の優秀な相棒だ」
ギランの視線の先で、ルーファが地面を掘り返し、前足で軽く地面を叩く。
リク:「ルーファが掘った場所、赤い苔が生えてる……」
リクが気づき、立ち止まる。
ギラン:「そいつは警告だ。赤い苔はなぜか爆弾のあるところに生える。そこには何かがある可能性があるってことだ」
ギランは木の枝を拾い、ルーファが掘った地面の脇に目印を立てた。
ギラン:「この森を抜けるには、奴の鼻と俺の勘が頼りだ。無闇に地面を蹴るな、魔法もなるべく控えろ。……命が惜しけりゃな」
リクたちはさらに森の中へと進む。ギランの案内で、静かに奥へと進んでいたが、
――あまりにも、静かすぎた。
風の気配はある。木々は揺れている。だが、どこか異質だった。
リリア:「「鳥の声が、しない」
リリアが不安げに言った。
普通であれば、森の中にはさえずりや羽ばたき、時には小動物の鳴き声が絶え間なく聞こえる。だが今は、まるで世界から“音”だけが抜け落ちたかのように、沈黙が広がっていた。
ギラン:「心配ない。遺跡に近づいた証拠だ」
ギランが立ち止まり、見つめた先には太陽が眩しいほどに輝いているのが見えた。




