第40話 勇者誕生の秘密
リクが召喚される1ヶ月前、空に禍々しい黒いキノコ雲が浮かび上がった。
見る者すべての本能が、あれは「災い」だと叫んだ。
そしてその日、王都には黒い雨が降り注いだ。
異様な光を放つその雨は、大地を蝕み、農作物を腐らせ、やがて人間の身体すらもむしばんでいく。
人々は怯え、祈り、神殿には終日灯が絶えなかった。
王国が派遣した精鋭の調査部隊が、雲の中心部へと向かった。
だが彼らは、髪が抜け落ち、全身に焼けただれた痕を負った姿で帰還する。
「そこに在るもの」は、もはや魔王でも魔神でもない――この世界の理を踏み外した、名状しがたい“異物”だった。
人々はそれを恐れ、こう呼んだ。
“災厄の王”――世界そのものを食らい尽くす、未知の存在。
日に日に広がる被害と、増え続ける死者。
焦燥する王族たちは、ある“策”にすがった。
それは、民衆の不安を打ち消すための象徴、勇者パーティーの創設だった。
選ばれたのは、王国に名を連ねる名門貴族の若きエリートたち。
剣士、魔導士、僧侶、弓使い――各分野の“完璧な戦力”が揃えられた。
しかし、彼らには決定的なものが欠けていた。
“神の加護”も、“異世界の力”も持たない、ただの優秀な人間たち。
真の勇者は、まだ誰も知らぬ、田舎の片隅に眠っていた。
全てを防ぐ力を持つ少年――リク。
無自覚なチート能力が、やがてこの世界を変える。
王都の奥深く、誰も知らない真実は、重い沈黙の中で蠢いていた――。




