第30話 奴隷商会での再会
ギルドマスター・グレヴェン:「さて、ダンジョンに入るには三人以上のパーティーが必要だ。実力に見合う者をこちらでも紹介できるぞ。“紅牙のレイグ”や、“幻影のミーナ”あたりが空いてる」
リク:「……なんか違う気がするな」
リリア:「……ねえリク、いっそ、奴隷を一人買うってのはどう? 犯罪絡みで奴隷にされた人や違法な奴隷商もいるけど、きちんとした奴隷商なら、“訓練済みの戦闘奴隷”もいるって聞いたわ」
リク:「奴隷かぁ……うーん、なんかすごい世界観を感じるけど……リリアがそう言うなら、見に行くだけ行ってみるか」
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街の外縁部に、ギルドも公認する「奴隷商組合」はあった。違法な売買は禁止され、全員が“魔術刻印”による身元管理を受けていた。
商会の奥から、渋い声の男が現れる。
商会主:「いらっしゃいませ。リク様と剣姫リリア様でいらっしゃいますね。ギルドマスターから事情は聞いております。どのような奴隷をお探しで?」
リリア:「ダンジョン探索に同行できる人が欲しいの。戦闘訓練がある程度されてて、でも……人としての尊厳は失っていない子がいいわ」
商会主:「なるほど……少々お待ちを。何名かご案内できましょう」
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こうしてリクたちは、薄暗い石造りの廊下を商会主に案内されて歩いていた。
通路の先、格子付きの小部屋のひとつで、リクの視線が止まった。
リク:「……あれ?」
その人影に見覚えがあった。
痩せこけ、肩までの髪は乱れている。だが、その長い耳と肌の色、そして気配――
リク:「……ミルナ?」
かつてファルベラの町で出会い、警戒心を持ちつつも、ときおりリクを見守るような素振りを見せていた、あのダークエルフのミルナだった。
彼女は今、細い呼吸を繰り返しながら、無言で膝を抱えていた。
リリア:「……っ、ひどい……!」
魔力の流れを読むリリアの目に、彼女を包む“黒紫の瘴気”が見える。
リリア:「これは……闇魔法に侵されてるわ。魂に干渉する、かなり悪質な呪詛系……!」
商会主:「彼女は半月前、外の密売市から流れてきたものです。“高位情報収集官だった”との触れ込みでしてな……しかし、到着時にはこの通り。とても販売には回せぬ状態で」
リク:「なんでこんなことに……」
リクは格子の前にしゃがみ込み、静かに手を差し出す。
リク:「ミルナ、聞こえるか? オレだ、リクだよ」
その声に、ミルナの肩がわずかに震えた。
彼女はゆっくりと顔を上げ――その瞳に、一瞬だけ、リクの姿が映った。
ミルナ:「……あ……あなたは……」
そして――
――パリイ!
リクが何気なく、彼女の前に漂っていた黒紫の霧を払いのけるように手を振ったその瞬間。
瘴気が、音もなく“弾かれ”、空気に溶けるように霧散した。
商会主:「なっ……なにを!? い、今のは……!」
ミルナの顔からは、わずかに苦しみの色が消えていた。
リク:「リリアミ、これも何かの縁だ。この女性にするよ」
こうして、リクたちは思いがけず、かつての“観察者”を保護することになった。




