第29話 バルゴの紹介状
ダンジョン潜りのため、あと1人必要になったリクたちは、ギルド内のレンタル登録カウンターへと足を運んだ。
そこには、腕組みをした受付の男がいた。筋肉質で、顔にはいくつかの古傷が刻まれている。
その横には、仏頂面の冒険者たちの顔写真がズラリと並ぶ名簿があった。
受付男:「おう、レンタルパートナーを探してるってか? 一時雇用で金は前払いだ。ランクによって値段は変わるが、希望はあるか?」
リリア:「とりあえず真面目で、無難に動ける人がいいわ」
リク:「できれば、こわくない人が……」
受付男:「あ? ここはルゼンナだぞ? こわくないヤツは逆に信用できねぇっての。」
リク:「あ、そうだ……」
リクは、ぽん、と懐から封筒を取り出して渡した。
リク:「あ、これ……紹介状? なんかバルゴさんからもらったやつなんだけど……使えるかな」
受付男:「バルゴ?」
その名を聞いた瞬間、男の表情が固まる。
受付男:「……ちょっと、見せてくれ」
封筒を見た男は、そこに記された封印と名前を確認し、目を見開いた。
受付男:「……これ、本物か? おい、誰か、ギルドマスターを読んでくれ」
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背の高い男が、奥の重厚な扉を開けて現れた。
場の空気が、一瞬で変わる。
男の名は――ギルドマスター・グレヴェン。
かつて「赤雷の狩人」と呼ばれた、元Sランク冒険者だ。
グレヴェン:「バルゴの紹介状を持つ者がいると聞いた」
その鋭い視線が、まっすぐにリクを射抜く。
受付男:「……マスター、これがそうです」
受付男が紹介状を差し出すと、グレヴェンはそれを両手で受け取り、封蝋と署名を丹念に確認した。
グレヴェン:「……確かに。バルゴの直筆。しかも“託すに足る者”とまで書いてある。……まさか、本当にいたとはな」
リリア:「バルゴさん、そんなこと書いてたの?」
シフ:「にゃふ」
グレヴェンは一瞬シフを見て二度見したが、すぐにリクへと視線を戻した。
グレヴェン:「……お前ら、名は?」
リク:「俺はリク。普通の冒険者ですよ。どこにでもいるFランクで、防御だけちょっと……」
グレヴェン:「“防御だけちょっと”? バルゴが剣を託す相手に“ちょっと”なんてあるか?」
リク:「いや、剣を託されたのは、こっちのリリア」
グレヴェン:「それにしては、お前の剣は何だ? まあ、いい……この手のタイプは昔からわかりづらい」
グレヴェンはふぅとため息をつくと、受付嬢に命じた。
グレヴェン:「登録記録を引き直せ。こいつのデータを再評価しろ。従魔もな。」
受付嬢:「了解です、マスター!」
リク:「え? 俺らはFランクのままで、問題ないですけど?」
グレヴェン:「お前らのような変なパーティーが、適当なやつらと組んで、いらん事故を起こすほうが問題だ」
グレヴェンの目が細められた。
そう言うと、グレヴェンはゆっくりと手を差し出した。
グレヴェン:「ようこそ、ルゼンナへ。“魂の剣”に選ばれし者たちよ。……深く潜れ。どこまでもな」
リクは、その手をおそるおそる握り返した。
まるで、これが――この先の冒険の、正式な“始まり”を告げる儀式のように思えた。




