第23話 その剣、抜けます
バルゴの試練を終え、剣姫リリアが息を整えている中、一行は鍛冶場の奥、古びた石の祭壇の前に向かった。
バルゴ:「ここに収められているのは、“星辰の剣ヴァルゼリオン”。選ばれし者――“真なる勇者”にしか抜けぬとされる、伝説の剣だ」
バルゴは厳かに語った。
バルゴ:「先代の勇者がここに剣を戻して以来、剣は再び封じられ、今に至るまで誰一人として抜けておらん……」
リリア:「そんな大層な……。でも、リクなら……」
俺:「へぇー、抜けないんだ。んじゃ、触っても大丈夫なんだよな?」
シフ:「ニャ?」
誰も止める暇もなく、リクはツカツカと石の台座に近づき、剣の柄に手をかけた。
――ズボッ。
それは一瞬のことであった。
まるで傘立てから傘を抜くかのような気軽さで、伝説の剣がスッと引き抜かれた。
バルゴ:「……」
リリア:「……え?」
シフ:「……ガ?」
バルゴ:「ま、待て……。な、なぜ抜けた!? お前、勇者か!? 魔王を倒す定めを背負って生まれし者か!?」
俺:「えー……まぁ、職業だけは勇者になってるけど? たぶん、違う……パリイしかしてないし。とりあえず戻しておくわ。」
そのとき、天井の天窓から神々しい光が差し込み、抜かれた“ヴァルゼリオン”が淡く輝きはじめた。
バルゴ:「お、おい……その反応……本当に、選ばれたのか……?」
リク:「んー、なんか変な力入ってきた。
……やっぱり、これ、もらっとこ。なんか光ってるし」
ヒュッと鞘に納めて、背中に斜めがけ。
その姿はまさに――伝説の装備者そのもの。
全員:(この人、ほんとなんなんだ……)
こうして、“勇者にしか抜けないはず”だった剣は、リクによってあっさり抜かれ、しれっと装備された。
星辰の剣ヴァルゼリオン
・攻撃力500
リクは無自覚だったが、今までずっと1だった攻撃力が501に上がっていたのだった。
神話とは、こうして日常の中で上書きされていく――。




