第18話 剣姫現る
出発の日の朝。
荷物をまとめて訓練場に立ち寄ると、ガルムがすでに待っていた。
……その隣には、すらりと背筋を伸ばした少女の姿。
俺:「あれ? お弟子さんっすか?」
ガルム:「いや――娘だ。名は《リリア・フレイ》。“剣姫”の名で呼ばれることもある」
リリア:「お初にお目にかかります。父より話は聞いております。“全てを受け流す旅人”殿」
俺:「えっ、それ俺の異名!? やめて恥ずかしい……!」
---
リリアは歳の近そうな少女で、長い黒髪を一つに結い、腰には細身の剣を下げていた。
動きに一切の無駄がなく、目の奥に燃える闘志と誇りが見える。
ガルムの“剣の血”を、間違いなく受け継いでいる感じだった。
ガルム:「リクよ。そなたの旅には、大きな流れが見えておる。娘にはその中で“剣士の目”を広げさせてやってほしい」
リリア:「――同行を許していただけるなら、私、全力であなたの盾となります」
俺:「いやいや、どっちかというと俺が盾側でして……」
---
道中。
リクとリリアは、ガルムから渡された地図を頼りに、次の目的地を目指していた。
リリア:「……ちょっと、リクさん。この道、本当に合ってるの? 私の記憶じゃ、正規の街道は南に……」
俺:「でもガルムさんが『こっちを通れ』って言ってたしな。地図にも“最適ルート”って書いてあるし」
そう、渡された地図には太く赤い線で「推奨進路」が描かれていた。
しかし――進めど進めど、山は険しく、川は氾濫し、道なき道ばかりが続いていた。
リリア:「(……これはおかしい。普通なら初級冒険者でも通れるような道を選ぶはず。なのに……!)」
そう思いながら、ふと地図の裏面を見てみると――
リリア:「……! な、なにこれ……」
裏面には、ガルムの走り書きがあった。
> 『――このルートは、リクとリリア、お前たちの“底上げ”のために調整した。
> 自然な形で実戦と連携を積め。リクの“異常性”と、リリアの剣技が交差すれば、
> 必ず次の境地が見える。
> なお、途中にいる魔物たちはわしが放流したものもある。気をつけろ』
リリア:「……完全に鍛える気満々じゃない……!」
俺:「あー、なんか言ってたかも。“旅は経験が宝だ”とか」
リリア:「そういうことじゃないのよ!!」
ガルムは元・剣聖。そして、娘であるリリアの“限界”を知っている。
それに、“規格外の防御力を持つ少年”――リクという存在を、誰よりも見抜いていた。
これはただの旅路ではない。
世界を知る者が敷いた、成長への特訓コースだったのだ。
---




