第17話 神授スキル《ディバイン・パリイ》発動
ファルベラの教会の近くに、人知れぬ地下施設が存在した。
――〈黒蔦の会〉。
王国の政治家や魔法学者、王族すら知らない、世界の裏を管理する“影の調律者”たちである。
暗い会議室、円卓の前にフードを被った数人が座っていた。
そこに、ダークエルフ・ミルナが、ゆっくりと歩み出る。
ミルナ:「……報告があります。最近、この世界に異物が現れました。」
一同がざわめく。
幹部A:「異物……? 魔族か、異界の召喚体か?」
ミルナ:「人間です。“リク”という青年。おそらくは、無自覚ですが……彼の“防御”は、この世界の理に反しています」
幹部B:「まさか、“黒霧の因子”の沈静化に関与しているというのか?」
ミルナ:「それはないと思います。たた、剣聖ガルムの本気の一撃を、“流れるような仕草”で完全に無効化していました。」
静寂が落ちる。
幹部A:「……世界に一人、絶対の防御を得た者が現れた、というのか」
それから、今まで黙って報告を聞いていた主宰が殺意を持って口を開いた。
主宰:「異物を放置すれば、我らの“均衡”が崩れる。……排除だ」
すると突然、主宰は苦しそうに胸を押さえながら、倒れ込んだ。
一同は慌てて、主宰に近づく。
すぐに意識はもどったが、彼の精神は赤児のように純粋無垢に変貌していた。
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一方、リクは旅立ち前の挨拶にまた教会に来ていた。
静かな教会の中、染み入るような光と静寂に包まれながら、俺は長椅子に腰を下ろし、そっと手を組む。
と、その時
殺意が、意識を越えて世界に放たれた。
それはまだ、刃でも魔法でもない。
だが、“殺す”という強烈な意志が、空間の因果に触れたその瞬間――
(神授スキル《ディバイン・パリイ》発動)
教会の空気が一瞬、震えた。
リクの背後、祈りを捧げるその頭上に、金色の輪がふわりと現れ、今度は確かに光を放った。
偶然、黒蔦の会が、リクの50m以内で行なわれていたため、リクの意識とは無関係に、神授スキルの発動条件が満たされたのだった。
俺:「……なんか今、ちょっと涼しい風吹かなかった? ま、いっか」
いつも通り、俺はのんびりとベンチから立ち上がる。
頭の上には、一瞬だけ現れた金の光輪が、静かに消えていった。




