第15話 新たな冒険のすすめ
日が落ち、訓練場を朱に染めるころ。
剣を納めたガルムは、しばらく無言で空を見上げていた。
俺:「ん? 今日はもう終わりっすか? まだパンひとつ分くらいしか動いてないんすけど」
ガルム:「……リクよ。そなた、自分の強さにどこまで気づいておる?」
俺:「うーん……まあ、頑丈なのは自覚があるよ。剣への対応も今回の修行でちょっとは行けそうな感じ?」
ガルム:「……うむ、だろうな。やはり無自覚か」
ガルムは小さく笑いながら、石の腰掛けに座った。
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ガルム:「かつての我は、“強さ”を追い続けた。戦えば戦うほど、己の剣が研ぎ澄まされていく感覚……それは、たしかに心を満たすものだった」
俺:「元・剣聖って肩書きもすげぇし……やっぱ強さの象徴ですよね」
ガルム:「だがのう、頂に立つほど孤独だった。誰も届かぬ高さに立ち、誰も挑めぬ恐れを抱かれ、気づけば己の剣に意味を見失っていた」
俺:「……」
ガルム:「だがそなたは違う。“強さ”を“守り”として使い、意識すらせぬままに世界の流れを変えている。」
俺:「さ、さすがに、そこまでは無いですよ。俺、ホントにただの旅人で……」
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ガルムはゆっくりと立ち上がり、訓練場の中央に歩を進める。
そして、一本の古びた木剣を、俺の前に差し出した。
ガルム:「剣を越えた男よ。そなたは、確かに強い。しかし、その力だけでは、災厄には勝てない。北のルディエルという町へ行け。――そこには、わしがいたパーティーのタンク(盾役)がいる。やつめに盾の奥義を学ぶのじゃ。」
俺:「盾の奥義? しかも北へ行ったら、また王都からはなれちゃうじゃん。」
ガルム:「リク。そなたはもう、『強さを使える人間』になっておる。ただ、その意味に気づいていないだけじゃ」
こうして、俺は、自分の意思とは関係なく、新たな町へ行くことになってしまったのだった。




