第13話 パリイしてはいけない相手だったらしい
ファルベラの町は今日も平和だった。
そんな中、俺は市場の帰り道、町はずれの広場で老人がひとり素振りをしているのを見かけた。
俺:「……あの爺さん、毎朝いるな」
見た感じは腰の曲がった普通のおじいちゃん。でも、剣の振りが妙にキレてる。軽い音しかしてないのに、空気が切れてる感じがするというか……。
好奇心で近づいてみたら、老人はにっこり笑った。
老人:「おや、兄ちゃん。少し、付き合ってみるかの?」
俺:「え、俺でいいんすか? ただの通りすがりですよ?」
老人:「ちょっとした手合わせじゃ。老いぼれの暇つぶしにな」
その言葉に気軽な気持ちで木剣を受け取る俺。
---
数秒後――
老人:「参るぞ……“風閃・初太刀”!」
ズバッ!!
風が鳴る。木剣とは思えぬ鋭さと速さで、一閃が俺の肩に向かってくる。
俺:「あ、やばい。―パリイ」
――ガギィィィン!
風ごと打ち消される音と共に、老人の木剣が真横に跳ね飛ばされた。
俺は無意識にパリイしてしまつた。
老人:「くっ――……ほ、ほぅ?」
俺:「あ、え? いまの、全然軽かったっすよ? もっかいやってみます?」
---
その場にいた周囲の見物人たちが、凍りついた。
通行人A:「い、今の爺さんの技……あれ、“風閃の剣聖”の型じゃねぇか……」
通行人B:「伝説の剣士、ガルム=フレイの技を……真っ向からパリイした……!?」
ざわめく町。
そして――
ギルド職員:「ちょっとリクさん!? なにしてくれてんすか!!」
俺:「え、俺なんかやっちゃいました?」
---
数時間後、ギルドの会議室にて。
ギルドマスター:「……よりにもよって、“元剣聖”ガルム様の太刀をパリイするとは。下手すりゃ宣戦布告だぞ、常識的には」
俺:「いや、なんかちょうどいいタイミングだったんで、つい」
ギルドマスター:「“つい”で剣聖パリイすんな!」
---
その日の夕方。
ガルム老人がふらりと宿の前に現れた。
ガルム:「あのときの一撃、全力ではなかったが……それをああも綺麗に受け流されたのは初めてじゃよ」
俺:「いえいえ、単なるまぐれてすよ……」
ガルム:「ふむ、次は本気でいく。近いうち、また手合わせ願おう」
その目は、戦士のそれだった。




