第1話 はじめての転生
「勇者リクよ。貴殿に授けよう。この世界を救う力を――」
まばゆい光に包まれ、俺が目を覚ましたのは、重厚な柱とステンドグラスに囲まれた、中世風の大広間だった。
天井の高いその部屋には、ふしぎな光がさしこみ、空気までもが異世界っぽい。
「……マジか。本当に来ちまった。異世界転生って、ホントにあるんだな」
呆然としつつも、目の前の神官のような美女が差し出してきたのは――一冊の、古びた本。
その中に書かれていた俺の“力”は、たった一つ。
《固有スキル:パリイ(完全反射)》
「攻撃を受け流す……じゃない。“跳ね返す”だと?」
さらにスキルの説明文の最後には、こうあった。
《すべての攻撃は、パリイ可能である》
すべて!? 魔法も!? 必殺技も!?
「おいおい、万能すぎんだろ……って、待てよ」
次の瞬間、ステータスが表示された。
攻撃力:1
防御力:∞(むげん)
「……極端すぎんだろォォ!!」
ツッコミを入れた俺に、女神はまじめな顔で言った。
「あなたの使命は、この世界に現れた“災厄の王”を――打ち破ることです」
「今ちょっと、声ちっちゃくなかった?」
剣も魔法もなし。俺にできるのは、すべての攻撃を“カウンター”することだけ。
つまり――やられないけど、やれない。
だが、俺はそのとき決めたのだ。
(……攻撃手段がない?不遇職じゃね? まあ、上等じゃねぇか。だったら“全反撃”で世界を守ってみせようじゃねぇか!)
こうして、攻撃力1の男による、無敵の防御冒険譚が幕を開ける―