序
高く険しい山の頂にその王国はある。
建国は未だ200年余の新しいその国はかつて魔王と呼ばれる者が支配する土地であった。
ある時雄なる者が魔王を打ち倒し、近隣の王よりその土地を与えられて建国した。頂にわずかにある平地の国土へは長い洞窟を抜けなければならない。
それゆえに人口は多くはない。しかし堅実にその王国は成長を遂げた。
時はかの女王の治世になる十数年前。
建国当時より続く王立学園の入学式数日前。
ここは身分に関係なく優秀な者を集め、その分野のプロを育てるための学校である。政治、医療、建築、芸術、武芸…等その分野は多岐に広がり、卒業後は王国各部門の幹部となり働くことになる。
「入学の書類は全てお揃いですね。これで手続きは完了です。
ご入学おめでとうございます。寮へご案内しますね。」
全寮制のこの学校は親の職業や身分に関わらず、入学時の成績によって最初の決定がされる。寮室の質もそのうちのひとつである。
「上位入学者には特別室が割り当てられます。
この部屋を維持できるよう学業に励んでくださいね。ではこれで。」
そうして静かに扉が閉まる。
ここにまた1人新しい人生を切り開く若者が訪れた。
珍しい白銀の髪を肩まで伸ばし、ほのかに赤い瞳。
表情は次第に緊張が解けていく。
私はこの若者の成長を見届けることとした。