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十七

 慎二がレストランに着いた時には辺りはすっかり暗くなっていた。島からこちらに戻ってきた時、ズボンのポケットに財布や店長からもらった店の合鍵が入っていて助かった。島にいた時とは所持品が異なっていて、銃など島で持っていた物は無くなっていて、代わりに島に行く前の財布などが戻っていた。

 凄惨な事件のあった店の近くにはもう誰も住んでいないようだ。慎二は合鍵を使ってレストランの中に入った。

 扉に付けられた鈴の音が寂しそうにカランと鳴った。電気を付けると立入禁止と書かれた黄色いテープが蜘蛛の糸のように数本貼ってあった。慎二はそれをはがすと冷蔵庫の中をチェックする。あれから数日しか経ってなかったのか、期限が切れていない物もチラホラある。電気も水道もまだ止められていなかった。期限が切れた食品を捨て、烏龍茶を出すと二階の部屋に上がった。

 八帖ほどのフローリングの部屋も警察が引き上げた後は特に荒らされていなかった。ソファに腰掛け、カップラーメンを作るとテレビをつけた。魔獣事件を取り上げた番組がやっている。慎二は急いで番組を録画した。

「これは水戸駅南口付近で取られた映像である。人混みの中、広場の曲がり角から突然現れた猛獣は駅の人たちに向かって襲い掛かったのだ。逃げ遅れた七人が犠牲になってしまった。警察とハンター達により射殺されたが、この魔獣と呼ぶにふさわしい獣については調査中でありいまだ詳しい発表はない。こちらは北口にある店舗の映像である。突然外に現れた魔獣が中に飛び込んできて店員が犠牲となった」

「この魔獣と呼ぶにふさわしい動物はですねェ~、おそらくクマとライオンを掛け合わせた世界でもまだ確認されたことのない稀有な動物でェ~」

 猛獣専門家の名札が置かれた席の男が得意げに誰でも分かる話を展開し出した場面に切り替わると、慎二は録画を停止して魔獣の出現映像を見返した。次々と切り替わる映像は、人を襲っているシーンはカットされていて映ってはいないが慎二には十分な情報を与えてくれた。

(……こいつだ)

 魔獣が出現する直前に出現する場所を見ている二十代の男が映っている。事情を知らない者には、出てきた魔獣に最初に気付いた一般市民に見える。間違いない。こいつが召喚士だ。部屋の電話が鳴った。

「本沢か? 俺だ笹山だ。お前の言う通りだった。何度か魔獣が出てくる直前にその方向を見ている奴が一人だけいたんだ! お前に言われたらすぐわかったよ」

「二十代後半くらいの男だろ? 俺も今テレビで見た」

「そいつだ。名前は最上小太郎。仕事をクビになって一時失踪してた男だ。自殺したと噂されてたが少しして目撃されるようになった。それからはフラフラと職を渡り歩いているようだが、こいつの周りではよく死亡事故が起きてる。ケンカした建設現場の同僚が落ちてきた鉄骨の下敷きになったり、飛び出して交通事故で死んだりな」

「こいつは今どこにいる?」

「今日の四時に特急列車に乗っている所が目撃されてる。東京に向かったようだ。俺も今から東京に行く」

「そうか。気を付けろよ」

「ああ、ありがとよ本沢。じゃあな」

「ああ」

 慎二は電話を置くと時計を見た。六時だ。

(今からだと……)

 慎二は再び受話器を持つとタクシーを呼んだ。

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