願望
「これがレニーがここにいる答えだ。」
「ふぅん、君が悪いんじゃん?」
ジェリーが僕の肩に手を回したままで挑発する。
「そうだ、俺のわがままでレニーの自由を奪ったんだ。」
「ほんとうにすまなかった。許してくれとは言わない。レニーがここから出て行きたいと言うなら従う。援助もする。」
旦那様が僕をまっすぐ見て頭を下げる。
「どうする、レニー?謝ってるよ」
「許しません。」
「……」
「僕ってそれだけの存在なんですか?僕がここから出たいって言ったら引き留めもせず送り出すんですか?」
「レニー?」
「それに海外に移住なんてしたら約束守れてないじゃないですか。ずっと一緒にいてくれるんじゃないんですか?」
「そんな、だめだよ、それじゃあ甘すぎる」
「ふふ、狼狽えてる旦那様初めて見ましたよ。」
「僕も約束忘れてたからおあいこです。それに僕はこの国が嫌いなわけじゃないんです。お祖父様たちは嫌いだったのかも知れないけど、この国はだん、ヴィンセントやジェリーと出会えた国でもありますから。」
二人を交互に見てしっかりとした口調で僕は言う。
「レニー、」
「でも、僕、一度行ってみたいところがあります。」
「どこ?俺が連れてってあげるよ!」
ジェリーが僕の手を握ってはしゃぐ。
嫌そうな顔をするけど何も言わないヴィンセント。まだ本調子じゃないのかも。
「お祖父様たちの故郷です。」
「ジェリーの話だと僕のお祖父様はここでは無いどこかから連れてこられたんだよね?」
「うん」
「そこに行ってみたいんだ。ヴィンセントもね。」
「えっ?」「なんでこいつも一緒なの?」
「僕の最初の友達だし、僕のお父様やお母様はヴィンセントに僕をお願いって言ったんでしょ?なら一緒に行くべきかなって。」
「え〜、いいじゃん俺と2人で行こうよ」
「俺も行くよ、行かせて」
「ふふ、はい、一緒に行きましょうね。」
「それから。僕お金ないのは今も変わらないので、こらからもここに居させてくれませんか、あの、ちゃんと仕事は、する、の、で、」
なんだか恥ずかしくなってだんだん声が小さくなってしまったがここに居たいのは本心。
「ちょっとなにプロポーズみたいだからやめてよ、俺だってレニーと一緒に居たいんだけど」
ジェリーの能天気さが今はありがたいなと思ってジェリーに笑いかけると
「一緒にいてくれるの?俺、レニーを騙してたんだよ」
「いつまでも暗いひと僕嫌いです。」
「レ、レニー……、これからもここで暮らしてくれるかい?」
一度俯いてからしっかりとした顔立ちでヴィンセントが聞いてくれる。
「はい。よろしくお願いします。」
僕は笑顔で答えた。
よろしくお願いします。