追憶2
「レニー、」
「ヴィンセント、思い出したよ、ごめんなさい、僕ずっと忘れてて、」
「レニー」
「なんでこんな大事なこと、僕の最初の友達を」
「レニー!」
「あ、ごめん…なさい、」
「レニー、大丈夫。君が忘れてるのも無理はないよ。なんせ君はとても幼かったからね。」
「それより、謝るのは俺の方なんだよ。」
「君の自由を願っていたのに、それを奪ってしまったのだから。」
君を卒業後迎えに行くことは事前に君のご両親に伝えていた。
その時に君たち一族の話は聞いたんだ。
レニーを頼んだよって言われてね。
その時はレニーだけじゃなく、ご両親まで一緒に幸せにしようと思っていた。
そう出来るだけの努力はしてきたつもりだった。
でも、君の卒業を待たずにご両親が亡くなったことを君の執事のアルフレッドに手紙でもらってね。
これから生きていく為のお金が少ないことは容易に想像できた。
そこで考えた策が海外への移住だ。
レニーはこの国からおさらばできるし、執事もいるからどこでだって生きていける。もちろん金銭的な援助はするし。
自由を得られるんだ。
陛下にとっても君の海外移住は厄介払いできるいい口実だ。
今の陛下は先代と違って君たち一族を離したくないわけじゃないからね。
この計画の通り進め始めようとしたのが君の卒業の1週間ほど前だ。
君の意見も聞かなければと思っていたからね。
でも、君に会えない日々は俺が思っていたよりも辛かったみたいで。
君の姿を一目見てもうだめだった。
閉じ込めたくなってしまった。
その後すぐに俺は君と会うために動いた。
執事に連絡を取ったりね。
たぶん君のご両親から俺のことは聞いていたんだろう。すぐに予定を立ててくれたよ。
そっからはレニーもわかるね。
君の弱みにつけ込んで俺の家で監禁まがいなことをした。
お金が無いなら俺が君を買い取るよって。
それ以外の生き方もあるのに、それしか方法が無いような言い方をして。
レニーは案の定俺の事をすっかり忘れていたけれど不思議と悲しくはなかった。
これから一緒に過ごす時間で少しずつ取り戻せばいいし、それよりともっと素敵な思い出を作ろうと思った。時間はたっぷりあるんだし。
俺は先代となんら変わらないんだよ。
俺のそばにいて欲しいから執事という立場を与え、離れてほしくないから買い取ったという名目で監禁する。
失望した?こうなることは予想できたんだけどね。
この生活が心地良すぎて目を背けていたんだ。
本当にごめん。
ただ、俺はレニーと一緒にいたかっただけなんだ。そばにいてほしかっただけなんだ。
これは本当だから。
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