追憶1
今回も1と2に分けます。
レニーと最初に会ったのは随分前だ。
俺はこの通り厳格な家の産まれだから。小さい頃は嫌になってよく家を抜け出していたんだ。
その日は街にも行き飽きて遠くまで行こうと考えて街のはずれまで行った。
そこには高い塀に囲まれた城のような洋館があった。活気も何もないし使用人も居ないから廃墟だと思って中に入ったんだ。いい遊び場が見つかったぐらいにしか考えてなかった。
我ながらあの頃はなんて悪ガキだったんだろうと思っているよ。
裏手に回ってみると花が咲いている庭があった。そこで座って本を読んでる小さい子供を見たんだ。
あまりの綺麗さに人間ではないと思った。何か良くないものに化かされたと。
だから俺はすぐに帰ろうと思ったんだけどその子がこっちを見たんだ。
大きなガラス細工のような目がこちらを不思議そうに見てこう言ったんだ。
誰?どこから来たの?もしかして妖精?
ってね。妖精は君の方だろって思ったのを覚えてる。
何にも答えない俺に何を思ったかその子は近づいてきて、
僕とお話ししてくれない?僕本ばっかりで飽きちゃった。
って言ったんだ。歳下の子と接することなんて全くなかった俺はその子との会話が楽しかった。時間も忘れて夢中でその子と沢山の話をした。
どうやらその子はこの屋敷から出たことがないこと、親以外に会ったことがないこと、だから俺を妖精と思ったのだと。
話をしているうちにこの子の奇異な境遇を知った。なぜこの子はここから出られないのか、こんな大きな屋敷に住むんだから何かしらのパーティーに出席してもおかしくないのに。
その子に質問してもわからないとしか答えなかった。でも、もう少ししたら学校に通えるんだと喜んでいた。
本で見たように友達もできるかなって。
とにかくいっぱい話をしたんだ。だから気付かなかった。そんな俺たちを見ている人が居たなんて。
そろそろ部屋に戻らなくちゃってその子が言うからまた来るよ。って約束して帰ろうとしたら、男の人に声をかけられたんだ。
目がさっきの子に似ていた。
君、どうやってここに来たの、
男の人が俺に聞くけれど
俺は答えなかった。あの子が怒られてしまうかもしれないって思ったからね。
別に怒っているわけではないよ、たまにでいいからあの子に会いに来てあげて欲しいんだ。
寂しそうな顔をしてその人は言った。
なんであの子はここから出られないんですか
そう聞くと真剣な顔をして、
君、あの子が随分気に入ったようだね。
まだあの子は出せない。でもいつかはあの子も自由にしてあげたい。だから、その時が来たら、君が覚えていてくれたらでいいんだ。手助けしてくれる?
その時はしっかりと理解していなかったけれど、
俺はあの子が笑ってる顔が好きですって言った。
恥ずかしいませガキだったよ。
そう
て言って微笑んだ顔があの子に似ていた。
その後も俺はその子のところによく通った。
沢山話をしたし、いろんな遊びも教えた。
でもその子が学校に通う日が近くなってきていた。
俺たちは昼間に会っていたから、学校に通い始めると会えなくなるんだ。
そしたらその子は、
学校行かないでずっとここで遊んでたい。って言ったんだ。
ここから出たい、友達を作りたいって願いよりも俺と一緒にいる方が良いと言ってくれたんだ。すごく嬉しかった。
でも俺はその子に自由になって欲しいと思ってる彼の親の気持ちも知っていた。だから、
俺も君とずっと一緒がいい。でもまだ今の俺じゃあ叶えられないんだ。もっと立派になってまた君を迎えに来るよ。だから、待っててくれる?君が学校を卒業した後はずっと一緒だから。
そう言って猶予をもらったんだ。
そしたらその子、笑顔でわかったって。ずっと一緒ねって。
その代わりに僕の名前を教えてあげるって。迎えに来てねって。俺に名前を囁いてくれたんだ。
レオナルドだよ。
って。だからお返しに俺も名前を告げたんだ。
「ヴィンセント」
「そうだ、ヴィンセント。あぁ、そうだ。僕約束したのに、ずっと忘れていた。君はずっと覚えていてくれたのに、」
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