変化
アル出てきません。代わりに新キャラ出ます。
「君、レニーかい?」
「は?」
え、いや、僕言ってないよ。僕も確かにえって思ったけど言ったのは旦那様。
「そうだよ、その泣きぼくろ!」
「ちょっと、何?君なんて知らないよ。」
いや、だからなんで僕が答えるところを旦那様が答えてるんだ。
「いやぁ、ずっと会えなかったからどうしたのかと思ってたよ!まさかこんなところにいたなんて!」
「だから、君、馴れ馴れしすぎ。」
それ僕のセリフ。でも僕が彼を知らないのは合ってる。
旦那様に珍しくお客様がお見えになられたので、専属執事としてお茶を出そうと近づいた時、急に言われたんだ。
「馴れ馴れしいも何も僕、レオナルドと同じ学校の生徒だよ」
「はい?」
今度のは僕。僕と同じ学校?こんな派手な見た目の人いたら忘れるはずがないんだけどな。
「あ〜。無理もないか。俺、学校行ってた時はこんなに素を出してなかったからね。ん〜、裏の庭園て言えばわかるかな?」
「え!?あの、おとなしかった子!?」
はしたなくも大きな声を出してしまったがプライベートな訪問らしいし許して欲しい。
「そ!やっぱり覚えててくれた?」
「覚えてるも何も全然違うじゃないか!」
僕が覚えているのは緑の目をした可愛らしい男の子。
僕の通っていた学校は執事同伴オッケーな貴族学校。ギリギリ通えてたレベルなんだけどね。そこには貴族学校らしく裏庭に結構大きめな庭園があった。
そこで昼休みなどアルと一緒にお茶したり本を読んだりするのが僕の日課だった。
ある日いつものように庭園に行くと僕と同じぐらいの女の子と見まごうほどの可愛い男の子がいたんだ。名前はジェラルド。
何してるのって聞いたら、君に会いに来たんだって言われて。なんでも、僕とお話がしたかったらしい。
なんでかわからないけどクラスのみんなは僕の事を遠巻きにしててなかなかお話もしてくれなかった。だからそう言ってくれた事が凄く嬉しかったんだ。じゃあ毎日ここでお話ししようねって約束してその日から庭園では3人で過ごしたんだ。
庭園以外では何してるの?って一回だけ聞いた事があるんだけど、レニーが気にする事じゃないよってはぐらかされちゃってさ。なんだか聞かれたくない事なのかな〜てそれ以上は問わなかったけど。
まさか、あれが猫かぶりだったとは。確かに目の前の人も緑の目をしている。
「ちょっとレニー、僕もお茶飲みたい。」
緑の目を見ていたら旦那様に呼ばれてハッとする。
「た、ただいまお持ちいたします。」
そう言って急いでお茶を旦那様の前に出すと、
「で、なんで執事してんの?」
「関係ない」
「俺レニーに聞いてんだけど。」
「お前、レニーって呼ぶな」
「?俺たち同じ学校だって言ったよね?庭園で毎日話してたの。そりゃあ愛称で呼び合うだろ。な?レニー。」
えぇ、ここで振られても困る。旦那様の後ろに立ってるから表情は全く見えないけど不機嫌なのは沸々と伝わってくる。
たかが執事の過去に何をイラついてるんだ。
「私は、今は旦那様の執事ですので。」
「ヴィンス」
「?」
「これからは旦那様じゃなくてヴィンスて呼んで」
なんでこんなに張りあってるんだこの人。第一、ジェリーは元々旦那様に用があって来たんじゃないのか?
「お客様、本日は旦那様に何か御用があったのでは?」
「ジェリー!」「ヴィンス!」
それぞれがそれぞれの名前を呼んで欲しいらしい。
はぁ。ため息もりもりだよ。心の中だけに留めた僕を褒めて欲しい。
「お客様なんてやめてよ、昔みたいにジェリーって呼んで欲しいな。ま、確かに今日は君に用があって来たんだ。」
そう言ってジェリーは旦那様に向き合う。
「前々からしてた貿易の話をしに来たんだ。」
ジェリーの家は貿易を得意とする商家だ。庶民はもちろん、貴族、時には王族すら相手になる。近隣国では一番と言っていいほど大きな商い屋さんだ。
そんなジェリーと旦那様との貿易の話だ。相当大きなモノが動くのだろう。
「大方君の要望通り進めよう。ただし一個だけ条件をつけようと思ってね。」
一瞬僕の方を見てから言葉を続ける。
「レニーを解放してくれ。」
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