第2話 どうやら罰ゲームらしい
五限の授業が終わった後、俺はそそくさと2−1の教室を出てあかりがいる2−4の教室に向かう。
気分は潜入ゲーム。敵に気取られず、標的の情報を入手する。気配を消すのは得意っていうか癖になってんだ、音殺して歩くの(陰キャ)
開かれた教室のドアを覗くと、あかりが複数の女子を連れてこちらに向かってきているところだった。
俺は急いで物陰に身を潜める。わいわいと楽しげに話しながらあかりたちが向かう先は人通りの少ない廊下の曲がり角。
あかりたちは階段付近にたむろって何か話している。
気になった俺は限界まで距離を詰めて聞き耳を立てる。
「つかさー、あかり本当にやんの?」
「と、当然よ! 罰ゲームだもの!」
「いやそんなに無理しなくてもいいよ? 言い出しっぺは私だけど、流石にあいつに告白とかやばいでしょ」
「別にやばくないし。やってやるわよ」
告白?
罰ゲーム?
……あっ。
全てを察した俺は天を仰ぐ。
なんてこった。
まさかこんなことになっているなんて思いもしなかった。
様子がおかしかったのはそういうわけか。
「でも声震えてるよ? 本当にキツイならやめていいんだよ?」
「震えてないし。むしろちょうどいい機会だなって思ってるくらいだし」
「ちょうどいい機会?」
「そうよ。あの生意気な虫に身の程を教えてやるいい機会だわ!」
ああ、あかり! あかり……! そんな、どうして……。
ショックのあまり俺はその場に頽れて涙を流す。
なんて不憫な幼馴染。ツンデレという生物の非業な結末の一つを垣間見た気さえしてしまう。
どうせあれだろ?
罰ゲームで俺に告白するように命令されて、断るのも格好悪いから承諾したって感じだろう。
しかし罰ゲームかぁ。
レアカード引いちゃった感あるな。
でもそういうことしちゃうんだ。一線は越えない子だと思ってたんだけどな。おじさんガッカリだよ。
学校で有名な美少女から告白罰ゲームなんてされた日には、常人なら余裕で人間不信ルート直行だ。
俺が全てを理解している系幼馴染じゃなかったら死人が出ていたところだぞ。
あかりの友達は告白されて勘違いしちゃう俺を指差して嘲笑うつもりなんだろう。そんな地雷にわざわざ飛び込みたくはない。
でも呼び出しを無視したら後であかりにボコボコにされるし、行かないわけにはいかない。
「……仕方ない」
約束は守る。
ただ、俺だけが痛い目を見るのは割りに合わない。
あかりにも同等の痛みを味わってもらおうか。