明かされしtruth
奥の椅子に座っている社長は、社長室に入ってきたシルキーの顔を見てすっくと立ち上がった。
「おぉ、シルクロード。お前さんはあの日から変わらず別嬪さんだなぁ」
「当然ですわ。義体ですもの」
そうして室内に幾つか置かれたソファーに一同が座ると、社長が話を始めた。
「知っての通り、ミルキーウェイを改装して冥王星に送り込む作戦の指揮を執ったのはこの私、大塩仙次郎だ。あんたらが知りたいことは大体察しが付くが……なぜミルキーウェイで実験されていた次世代型人工知能と義体システムが今の時代に普及しているのか、だろう?」
「えぇ。私に関するデータは全て船内のメインシステムに移されて、研究所に残されていたデータは削除されていたと記憶していますわ」
シルキーが大塩の目を見つめながら言う。
「その意志が強そうな赤い目も変わらんな」
大塩の表情が和らぐ。
「義体の普及の理由の前に、普及に至るまでの諸々を先に話すぞ。シルクロードへの改造が終わって、メインシステムに意識を封印した直後のことだった。連邦軍の総司令官、ケイン・バウンティーが突然辞任するという報せが入った。同時に軍の組織を再編する必要があるってんで、全ての部隊は最寄りの基地に移動しろと政府から指示が出たんだ。それで辞任の理由なんだが……」
大塩は今から言うことがシルクロードにとって辛い事実になると思い、苦虫を嚙み潰したような顔をした。
「……地球人種純血主義のケイン総司令は異星人との交流を深める政策を推進していた政府が気に入らず、クーデターを企てていたんだ。軍内部の純血主義者だけでなく、純血主義を唱える過激派団体まで利用してな。その計画の初期段階として行われたのが、次世代型人工知能を開発したユウイチ博士の殺害と、実験型駆逐艦ミルキーウェイの解体処分、そして天野一彦艦長の軍籍剥奪だったんだ。内部に抱えた地球人類ではない知能を持つ存在を消すために」
シルキーは間を置いて、少し震えた声を発した。
「ユウイチ博士が今際の際におっしゃっていました。『これは恐らく私を狙った……』と」
「彼が住んでいた集合住宅へのテロは過激派団体によるものだったが、裏ではケイン総司令が糸を引いていたんだ。軍の手を汚さずに計画を遂行するために過激派団体を利用したのさ。ユウイチ博士がどこまで察していたのかは解らないが。……それでだな」
シルキーが辛そうにしているのを見て大塩は言葉を詰まらせる。だが、シルキーは再び大塩の目を見つめた。
「この後も辛い話はあるかもしれませんが、私は知りたいのです」
それを聞いて、大塩は話を続けた。
「ユウイチ博士を殺害した後、次世代型人工知能を抹消するためにミルキーウェイと義体の解体処分を行い、人と同等の感情を持つ知能に育てた天野艦長の軍籍を剥奪して同じようなものが生まれないように仕向けたようとした。だが途中でクーデター計画が政府に知られて総司令は辞任に追い込まれた。軍の再編も計画の協力者を追放するのが目的だったってわけだ」
ふと、大塩は天野の顔を見た。
「次に話すことは、君の……大河君の幼少期にも関わる話だ」
「自分の、ですか……」
天野は顔をこわばらせた。
「総司令の辞任で解体の話も有耶無耶になり、シルクロードの存在を秘密にする必要は無くなったが、引き取り手は必要だった。そこへ声をかけてくれたのが当時の沿宙域警備隊の長官、オリバー・ハミルトンだった」
「オリバー・ハミルトンって……!」
「そうだ。今は沿宙域警備隊訓練学校の教官を務める、君を引き取った人物だ。天野一彦艦長とは大分歳が離れた友人で、シルクロードに関する一部始終を話したらすぐ理解してくれて、冥王星への配備を含めて色々と協力してくれたよ」
天野は手に汗を握っていた。なぜ養父が今までこれらの事実を黙っていたのだろうかという疑念が頭の中で巡る。
「少々話が逸れるが、君がオリバーさんに引き取られるまでのいきさつも話したほうがいいだろうな」
「えぇ、是非お伺いしたいです」
天野が少々前のめりになりながら言うと、社長の横でずっと立っていた秘書の揚羽が口を開いた。
「それについては、私からお話ししましょう」




