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シルクロード月へ

《巡視船シルクロードは第3灯台衛星の誘導に従い入港せよ》

「了解。第3灯台衛星からの策定航路受信。これより沿宙域警備隊基地第5岸壁、第1係留ポイントへの接岸準備に入ります」

 基地との通信を終えた天野が、マイクを端末に戻す。

「月……『シルクロード』としてこの星に来るのは初めてになりますわね」

 そう呟くシルキーの赤い瞳は、どこか郷愁のようなものに満ちていた。


 シルクロードが月面基地に接岸し、シルキーを含む船橋の面々がタラップから下船する。

「おぉ天野。あの船の砲撃に晒されてよく生きて帰れたな……」

 出迎えたのは羽藤だった。シルクロードを砲撃したコデ・マイシツクの一件は、既に沿宙域警備隊だけでなく市民にも知れ渡るところとなっており、基地の要員たちの間を漂う空気もどこか張りつめていた。

「予定では羽藤が月での案内をやってくれるんだったよな」

「あぁ。そういうわけでこれから皆さんにはこのバスに乗って移動してもらうことになる」

 一行が小柄なバスに乗り込む。羽藤が運転手に合図をして、バスが基地の外へ向けて走り出した。

「向かう先は?」

 保尊が聞くと、羽藤は鞄から資料を取り出して皆に配った。

「『大塩エレクトロニクス株式会社』。船舶用人工知能と義体の製造を独占している企業の本社と工場が月にあることは皆さんご存知だとは思いますが、今日はここの社長との面会の約束を取り付けました」

 一行は驚く。宇宙船に欠かせない存在を製造する大塩エレクトロニクスは社会的に大きな役割を果たしている企業だが、報道機関はおろか連邦政府の者さえ殆ど立ち入ったことが無いとされ、謎の多い企業という風評が流れているのだ。リノと瀧尾は渡された資料に書かれている社長の名前を見て、以前羽藤が言ったことを思い出した。

「確か、シルクロードを冥王星に送り込んだ人とここの社長が同姓同名なんだっけ」

「あれについて何か解ったのか?」

「それなんですが、交通調査部が調べた上で本人にも問い合わせたところ、やはり同一人物でした」

 それを聞いたシルキーは、記録媒体の中から大塩に関する当時の記憶を呼び起こした。

「あのお方は軍籍剥奪や懲戒などは覚悟の上で行動なさっていましたし、あとは私が冥王星に送られた直後の軍の再編で何かあったのかもしれませんわね」

「詳しい事情はこの後の面会で話してくれるらしい。シルキー本人とそれに関わる人達ならと特別に許可してくれたんだ」


 一行がしばらくバスに揺られていると、大塩エレクトロニクスの本社ビルと工場が見えてきた。敷地は大きな鉄の柵で囲われ、その柵に等間隔で監視カメラが設置されている。入り口にたどり着くと警備員が全員バスから降車の上で本人確認証明書などの提出を求めてきたので、一行は降車して携帯端末で証明書を表示し警備員に見せた。

「全員の本人確認がとれました。バスの運転手さんは面会には出ないということですので、申し訳ありませんがこの入り口の脇にある駐車場にバスを停めて中で待っていてください」


 本社ビルに入り、ビルの高層階にある社長室の前にたどり着いた一行は既にへとへとになっていた。ビルに入る前には無人走行の警備車両などに何回か遭遇し、ビル内でも本人確認証明書の提出や所持品の確認を厳重に行われたのだ。特に義体であるシルキーは爆発物を内蔵していないかなどの確認を一度拒否したため話がややこしくなり、それも一行の疲労が溜まる原因となった。

「なんであの時素直に従わなかったの……社長さんが内線通話でなんとかしてくれたけど」

「淑女として、変なところを触られたくなかっただけですわ」

 そんな一行の元へ、一人のスーツ姿の女性がやって来た。

「こんにちは。大塩社長の秘書を務めております、揚羽照子(あげはてるこ)と申します」

 揚羽が丁寧に名刺を差し出し一行に手渡す。渡し終えると、社長室のドアをノックした。

「社長、シルクロードの皆様がおいでになられました」

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