大人の飲み会 2
とあるスナックにあるVIPルーム。
ここは秘密裏に話したい人達が使う場所なのだが、彼女達はその部屋で飲み会を始めた。
「部屋代だけでもかなりの額が取られそうなのじゃが大丈夫なのかのう?」
「問題ないわ。
このスナックは元々蝶子ちゃんが働いていた店なのよ。
そのコネを使って押さえたわ!」
「それに支払いは後で持ってくれる方がいるので気にしなくていいですよ。
今は仕事が長引いてて遅れてるみたいですけど」
「なんじゃ、まだ誰か来るんじゃな」
「マオちゃんは知っている人だから安心していいわよ。
それじゃ先に始めちゃいましょうか〜カンパーイ!」
『カンパーイ!!」
本日はオフ飲み会ということで古いしきたり道理に全員がビールである。
東洋の伝説上の生き物が描かれたグラスにはその場所を制するものが世界を制すと言われた場所を指すビールが注がれている。
「いや〜久しぶりに飲んだけど美味しいわね、これ」
「プレミアムなビールと並ぶくらいの値段ですものね。
美味しいですがおいそれと飲めるものではありません」
「本当に美味しいわ〜ゴクゴク進んじゃう」
マオを除く3人はそう言うと一杯分すぐに飲み干してしまい追加を頼んでいる。
「話によると後からくる人物が支払うらしいが本当に大丈夫なのじゃろうな」
「だいじょぶだいじょぶ!
下手すれば社長より稼いでるから」
「貯めてるものを使う機会が中々無いと言っていたので良いのでは?」
「あ、私世界記録な黒ビールお願いしまーす」
3人は全く気にせずに飲んでいるのでマオも呆れながらも気にしないことにする。
「蝶子さんの飲んでいる黒ビールとは何なのじゃ?」
「焦がした麦芽を使ってるビールなんだけど、このビールはとても苦味が強いの。
でも泡はクリーミーで滑らかだし、好きな人にはとことん突き刺さる一品って感じかしら?
マオさんも頼んでみたら?」
「そうじゃのう、何事もチャレンジじゃな」
マオもそう言って同じものを注文してみる。
グラスに注がれたビールはその名の通りに黒々としている。
しかし、蝶子の言う通りにビールの泡は普通のビールの泡のように弾けることなくその場に残り続けている。
どのような味かとグラスを傾けるとクリーミーな泡の奥から苦味の強い液体が喉の奥に入ってくる。
それと同時に焦がした麦の香りが感じられ、苦味と合わさって何とも強烈な美味しさを感じ取れた。
「ぷはー!!
これは凄いビールじゃな。
元いた世界のエールと比べるまでも無いほどにこの世界のビールは美味いがこやつは格別じゃな」
「うふふ〜この味の良さが分かる人がいてくれて嬉しいわ」
美味しそうに黒ビールを飲むマオを見て蝶子も楽しそうにグラスを傾ける。
「私はそれ苦手だわ。
味が独特じゃない?」
「私もですわね。
あ、私次はキティを」
「私はまだビール飲みたいからシャンディガフ」
キティは赤ワイン、シャンディガフはビールにジンジャエールを加えたものである。
本来のものよりもアルコール度数が少なく飲みやすいのが特徴のお酒だ。
「おや、軽いものでいくとは珍しいのう」
「そりゃ、支払いしてくれる人が来る前に呑み潰れるわけにはいかないからね」
「私達が幾ら酒好きでもそのくらいの分別はありますわ」
「それは裏を返せばその人物が来たら呑み潰れるまで飲むと宣言しておるようなものではないか。
大丈夫なのかのう?」
「うふふ、私は誰が来るか聞いてますけど大丈夫よ。
あっ、ほら来たみたいですよ」
店員に案内された噂の人物がやってきたらしくドアをノックする音が聞こえた。
みんなで返事をすると扉を開けて現れたのは
「ごめーん、みんなお待たせ!」
火車猫さんの中身こと地獄閻魔先生であった。
黒ビールは美味しいですね。