女神様の挨拶回り
「女神・・・さま?」
「なんじゃと!?」
2人は驚きに満ちた顔で女神と名乗る女性を見る。
「これは驚いたわね」
「えっ?えっ?」
里中も大きな態度にこそ出ていないものの驚きの言葉を口にし、唯に至っては展開についていけずに頭がパニックに陥っていた。
ただ1人、田中リーブだけは黙々と紙に絵を描いているのだが・・・。
「ええ、そうですよ。
こちらの世界で異世界と呼ばれる世界を管理する神様です」
「それで女神様が何の用なの?」
「妾達を元の世界に戻しにきたというのであればお断りじゃが」
「そうねぇ〜この子達はもう私の所の子供になったようなものだからね。
今更連れていかれても困っちゃうわ」
「はっ・・・そう!その通りですよ!
今更連れていかせたりしませんからね!!」
ユウとマオがハッキリと拒絶の意思を表し、里中と唯も2人の前に立つ。
「あらあら、もちろんそんなつもりはありませんわ。
今日やってきたのは今回の騒動の顛末と2人をよろしくお願いしますという挨拶のためですから」
女神がそう言うと全員が顔を見合わせて安堵のため息を吐く。
「そう言うことなら構わないけれど・・・ずいぶん時間がかかったものね。
この子達はこちらに来て1年。
Vとしてのデビュー1周年も三ヶ月後に迫ってるのよ」
「それに関しては何とも・・・強いて言うのであればこの世界の神様の数が多すぎるんですよ」
「どう言うことですか?」
女神様の話によると普通の世界では単一、もしくは光と闇のように大概の神様は1人か2人らしい。
多くても属性の数で二桁もいかないのだとか。
しかし、この世界では信仰の数だけ神様がおり、この世界に干渉してしまった不始末としてその全ての神様に挨拶に回ったらしい。
「あ〜それはお気の毒様ね。
特にこの日本なんて時間かかったんじゃないの?
八百万の神様なんていうし」
「いえ、日本はまず最初にイザナギ、イザナミ神に挨拶をしてから10月を待って出雲に行けばほぼ全ての神様に会えましたしね。
一番面倒だったのはヨーロッパの方ですね」
「ヨーロッパの神様?」
全員が首を傾げるが里中はハッと気が付いた。
「ヨーロッパ・・・ああ、貴女は異世界の女神様ですものね。
あの好色な神様がそんな逸材を見逃すわけないわよねぇ」
「ええ、御察しの通りですわ。
ゼウス神に見染められてひたすらに口説かれ続けて全く挨拶周りが進まず・・・おまけにヘラ神に睨まれ続けて身動きも取れずに大変でしたわ。
たまたま知り合った神様に教わり、春になるのを待ってその隙に挨拶回りを終えましたが本当に大変でしたわ」
「春だと動きやすい何かがあるのですか?」
女神の言葉に唯が疑問符を浮かべる。
そんな唯の頭を里中はポンポンと叩きながら説明する。
「春になるとゼウスの妻であるヘラは若返りの泉に浸かり純潔を取り戻すの。
この時ばかりは浮気性のゼウスも他の女性に目をくれずに妻一筋になるらしいわよ」
「よくご存知ですわね」
「私、神話とか好きなのよね。
神様達の恋愛なんてロマンチックじゃない?
本物の話を聞くとそうとは思えなさそうだから詳しい説明はいらないわよ」
「そうですわね。
世の中には知ってしまうと後悔することが多々ありますからね」
そうして2人であっはっはっと笑い合うのをユウとマオは恐る恐る見ていた。
彼女達からすれば絶対的な存在が目の前にいるのだ。
しかし、そんな人物とも物怖じせずに話す里中を見て2人は思う。
社長には逆らわないようにしよう・・・と。
空に浮かぶ星座にはその逸話があります。
幾つかはゼウス神の浮気話です。