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届ける者として 2

「この人達って本当にデビューしてるの?」


「ええ、してるわよ」


「そうなんじゃな……どんな内容なのじゃ?」


「まぁ……想像できる程度のものよ。

観てくれている人達に向き合ってない以上はその程度のものしか生まれないわよね」


里中はそう言いながら送られてきた履歴書を机の引き出しの中に収める。


「何をやりたいかのビジョンを見せてファンと向き合っていくのが、この世界で力を付ける1番の方法だと思うのじゃがなぁ」


「その未来に対するビジョンが曖昧なんでしょうね。

何となくチヤホヤされて何となく登録者数が増えていく……そして、ファンは次々と自分にお布施と贈り物をしてくれてお金持ちになる。

その程度なのでしょ」


「そんな人達から履歴書送られてきて、所属タレントにしてくださいって言われたら、そりゃ頭の一つも抱えたくなるか」


「自分の居心地の良い場所に留まって、ずっとやっていくのならそれで構わないんでしょうけどね。

企業としてやっていくには心構えも何もかもが足りないのは否めないわ」


里中はそう話しながらキーボードを叩くと、モニターにいくつかの記事が表示された。


そのどれもが不祥事を起こして引退した者達の記事である。


「聞いた事はあったが、これは中々に酷いのう。

一体どういう経緯だったのじゃ?」


「この子は配信中に彼氏が部屋に入ってきて炎上。

こっちの子も彼氏関係で、繋いでいたスマホに彼氏から送られてきたメッセージが表示して炎上。

この子は……ええっと、確か企業Vの他に個人でもV活動していたらしいわね。

それがバレて規約違反ということで解雇だったそうよ」


前2人は炎上の始まりから引退までの記事が載っているが、最後の子に関しては規約違反のために引退としか書かれていない。


しかし、業界の横の繋がりから里中は真相を知っていたのであろう。


「企業、配信者、ファンは信頼関係で成り立っておるからのう。

そこが崩れれば破滅まで一直線ということかのう」


「でも、これってそれだけの問題じゃ済まないよね?

僕たちの身体を描いてくれた産みの親に申し訳が立たないし、動きをつけてくれた人にも……謝って済む問題じゃないよ」


「お金を払ってるからどう使おうが関係ないって気持ちの子もいるんでしょうけどね。

でも、2人の言う通りにこの業界はお金だけの関係じゃなくて信頼関係も大事なの。

だから、その事を雑に考えている子達には預かっている身体を任せられないのよ」


そうして里中が再びキーボードを叩くと、2人が見た事のない格好良い男性や、綺麗な女性、可愛い女の子のイラストが多数出てきた。


「これはデビュー待ちの者達じゃな」


「ええ……折角頂いた身体ですもの。

最高の魂を吹き込んであげたいものよね」


「僕達は……」


そのイラストを見ながらユウは絞り出すように声を出した。


勇気ある者……勇者としては珍しく不安な様子が分かる。


「僕達は……ちゃんと出来ているかな?

社長の理想になれてるのかな」


里中は不安げな様子のユウの頭に手を当てて微笑む。


「貴方達は貴方達だから私の理想とは関係ないわ。

でも……私はユウちゃんもマオちゃんも配信者として尊敬している。

貴方達に身体をくれたリーブ先生も、きっと貴方達のことを誇らしく思っているはずよ」


「そうであれば良いな……妾達はこれからも配信を届ける者として応援してくれる人達のこと第一に考えねばの」


「うん、そうしよう!

社長、今日は良い話をしてくれてありがとう」


「最初の流れからこんな話になるとは思わなかったけど、2人のモチベーションが上がってくれたのは嬉しいわ。

今日の配信も頑張ってね」


「うん!」


「うむ!」


こうして元気に去っていく2人を見送った里中。


しかし、暫くしてからある事に気付いてポツリと呟いた。


「あら?結局あの子達は何しに来たのかしら」

「ゲーム借りにきたの忘れてた!」


不祥事に関してはモデルはいない……という事にしておいてください。

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