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夏は素麺

「あついのう〜」


「まだ6月に入ったばかりなのにねぇ。

すっかり夏だよ」


窓を全開に開けて団扇を仰ぎながらしみじみと呟くマオ。


そんなマオに対して中央のテーブルに何かをセットしていたユウが、外を見ながら答えた。


ユウの話す通りに窓の外では日差しがカンカンと照りつけており、目から見えるもの、肌で感じる温度、更には時折聞こえる虫の声が今日はとても暑い日だ!

と主張しているようであった。


これだけ暑い日であれば冷房を稼働させれば涼しくなる。


そんな事は分かっている2人であったが、とあるイベントの為に敢えて冷房を止めて夏の暑さを肌で感じていた。


「これはセット終わったから、後は薬味のネギと錦糸卵、それと……」


「こっちは終わっておるぞ」


ほれと言ってマオが渡してきたのはすりおろした生姜であった。


「ありがとう!

スイッチ入れて……後は麺を持ってくるね」


そう言って中央に置かれた物体のボタンを押すと。その物体の起動音と共に動き出す。


物体の上にある0を形取った部分に張り詰められた水が意識を持ったように動き出す。


「お待たせ〜後はこれに素麺を入れるだけだね」


そう言って大きめの器には茹でた素麺がたっぷりと入っていた。


そう……テーブルに置かれた機械とは流し素麺機であった。


1000円程度で買ってきた流し素麺機であるが、夏の暑い日には大活躍をしてくれている。


「なんでこうやって回すだけで普通より美味しく感じるんだろうね?」


「風情があるから……と言うと誤魔化しじゃのう。

恐らくは流している間に麺が解れておるからではないかの?」


そう言ってマオが掬った麺には確かにダマが出来ずに真っ直ぐに解れている。


「なるほどねぇ。

言われてみれば確かに」


そう言ってユウも麺を掬って麺つゆに浸してから口に運ぶ。


「うーん、美味しい。

暑いから余計に口の中が涼しく感じるね」


「こればっかりは冷房の入っておる部屋で食べては台無しじゃからのう。

この暑さを利用して食べる流し素麺は実に美味じゃよ」


こうして時にネギを入れたり、錦糸卵を入れたりと味変を楽しみつつ食べ進めていくと、大量にあった筈の素麺はすっかり2人の胃の中に収まってしまった。


「お腹いっぱいだねぇ……暫く動きたくないや」


「全くもって同感じゃな。

暫くゆっくりしておこうかのう」


「ふと思い出したんだけど、前はいつ襲われるか分からなかったから、動きが鈍くなるくらい食べるなんてあり得なかった話だったんだよね」


「そもそもじゃが、そんなに腹が膨れる程に美味しい食べ物じゃったかという話じゃしな」


「ほんと……平和っていいよね」


「こんな生活がいつまでも続けば良いのう」


外からの暑い日差しを感じながらしみじみと語る2人。


そうして暫く休んだ後は、この生活を守る為に仕事という名の配信に向かうのであった。


素麺を食べるだけの話でした。

フラグとかではなく緩く続いていくのでご安心ください。

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