黄金の展示会 1
筆者の体験レポートコーナーです。
「うわ、この行列なに!?」
「まさか妾達が行こうとしている場所の列待ちでは無いじゃろうな?」
平日の昼間にドームシティへとやってきた2人は、予想だにしない人の群れと行列に出迎えられていた。
「えーっと……なんかグッズ売り場の列って書いてあるから違うみたい」
「うむ……そう言えばこの間コンビニでミスターな子供がライブを行うというポスターを見かけたのじゃが」
「これは間違いなくカブってるね」
そう……2人の会話の内容から分かることであるが、彼女達はライブを見に来たわけではない。
最近まで全話無料公開をして最終回を迎えた漫画の展示会をやっているという話を聞いて、2人はわざわざドームまでやってきたのだ。
「いや〜平日だし、ゴールデンウィーク明けだから空いてるだろうって予想は空振りだったね」
「こればっかりは予想できぬのじゃよ。
間違いなく両方観に来ておる者もいるじゃろうな」
「ドームに何万人ってお客さん来るだろうし、少なく無いだろうね」
そんなことを話している間にお目当てのギャラリーに到着する。
先程のグッズ売り場に比べれば明らかに少ないのだが、それでもかなりの人数が列に並んで待機している。
「まぁ、仕方ないよね。
チケットはこっちみたいだよ。
代表して僕が買ってくるね」
「うむ、よろしく頼むのじゃ」
こうしてチケット売り場に向かったユウは大人と小学生のチケットを購入して戻ってきた。
本当は大人2枚にしておきたいのだが、受付の人が明らかに戸惑うので仕方ない事であろう。
そうして戻ってきたユウは小学生のチケットをマオに渡して仲良く列に並んだ。
「楽しみだね〜無料期間で一気に全部読んじゃったくらい面白かったもんね」
「前から気になっておったのじゃが無料で全話公開はありがたい話じゃったのう。
最初は剛気な事をと思ったものじゃが……」
マオはそう言ってずらっと並んだ人達を一瞥する。
「平日の展示会でこれだけ集まるのであれば、それだけでも価値のある行為じゃったのう」
「確かに……無料期間なかったらこんなに集まってないもんね。
僕達もそうだけど」
「商売のやり方というものを考えさせられるのう。
一見すると無謀と思える行為にも計算されたものがあると言うことじゃな」
こうして斬新な宣伝を行なった事に感動を覚えつつも列はどんどんと先に進んでいき、遂に入り口へと辿り着いた。
入り口でチケットを見せて中に入った2人が最初に目にしたのは……大きなヒグマの剥製であった。




