配信稼業との出会い〜過去編3〜
事務所に案内された二人は驚いた。
夜なのに昼間のように明るい部屋。
これだけならその手の魔道具があるので珍しくはない。
しかし・・・
「魔力が一切感じないのに明るいなんて・・・」
「いや、そもそもこの世界自体に・・・」
「まぁ、その話は後にしてとりあえず座りなさいな」
男性は事務所の隅にあるソファーに案内する。
「な、なんじゃこのふかふかの椅子は?」
「すご〜い!これならお尻も痛くないね!」
「本当、はしゃぎ方がテンプレ過ぎて逆に本物だって思っちゃうわね」
「なんの話?」
「気にしなくていいわよ。
それよりも自己紹介がまだだったわね。
私の名前は里中。
この『くじよじ』の社長をやってるわ」
里中はそう言って二人に名刺を渡した。
「凄いな〜小さな紙にこんなに綺麗な字が書けるんだ」
「・・・字が同じ過ぎやしないかのう?
模写でもここまでズレが無いものか?」
「僕も自己紹介しないと。
僕は勇者のあ・・・ユウだよ」
「妾は魔王マオじゃ」
「オッケー、ユウとマオね。
いい名前じゃないの。
・・・貴女達に提案があるんだけど、私がこの世界のことを教えて生活を保護してあげていいわよ」
里中の言葉にユウは嬉しそうに笑った。
「え、ほんと?
前の世界とあまりに違いすぎるからどうしようか悩んでた所だったんだよね」
「まて、ユウよ。
こういう美味しい話にすぐに飛びつくで無いわ。
里中とやら。
そのような言い方をするに何か交換条件があるのであろう」
マオの言葉に里中は楽しそうに笑う。
「マオちゃんは小さいのに鋭いわね。
この世界は貴女達が経験した以上に狡猾に騙してくる人間が多いから気をつけた方がいいわよ。
話は最後まで聞いて矛盾が無いか確認することが大事ね。
そんなわけで先ずはこれを見てもらいましょうか」
と里中はノートパソコンを取り出して起動させる。
「この時間なら確か何人かライブ配信してる子が・・・ゲーム配信とか見せたら混乱しそうだし、まずは雑談がいいわね。
誰かいい子は・・・あ、この子がいいわ」
そうしてカチャカチャと動かすと画面を2人の方に向ける。
画面の中では巫女服を着て、頭に太陽を模した髪飾りを付けた女性の絵が動き喋っていた。
「え・・・絵の中の女性が動いて喋ってる?」
とユウが驚いていると横からドンという衝撃をうける。
そちらを見るとマオが震えながらユウにしがみついていた。
「お、お、お、お、お主はいきなりこのような心霊現象を見せるとは何を考えておるのじゃ」
「心霊現象?ああ、あははは〜マオちゃん、これは心霊現象じゃないわよ!
そうね〜先に一回こっちの説明をした方がいいわね」
里中はそういうとパソコンを操作して画面を切り替える。
画面には先程のような絵の女性が佇んでいた。
「マオちゃん・・・は怖がってるからユウちゃんにお願いしましょうか。
ほら、ここにカメラ・・・って言っても分からないかしら。
この部分のレンズ、これを見てちょうだい」
「えーと、こうかな?」
「そうそう、それで顔を動かしてみて」
ユウが言われるままに顔を動かすと画面の中の少女同じように動く。
「わわわ、僕と同じ動きをしてる!」
「次はこのマイクって名前なんだけど、この棒に向かって喋ってみて。
挨拶とかでいいわよ」
「えーと、こんにちわ!」
『えーと、こんにちわ!」
画面の中の少女は今度はユウと同じ言葉を喋っていた。
「この仕組みまで見ればマオちゃんも怖い話じゃないって分かってくれたかしら?」
「つ、つまり先程の絵は心霊現象ではなく人間が動かしていたということかの?」
「そういうこと。
それじゃ配信の続きを見てみましょうか」