異世界から来た怪異
2022/04/20 誤字報告受け付けました。
いつもありがとうございます。
「よっと……あれ?
何で大きくなってんの。
そんなに強敵だった?」
結界から脱出したユウがマオの姿を見るなり尋ねる。
「いや、試しにこやつの霊力を吸い取って魔力に変換してみたのじゃが……大した力も持っておらぬ上に変換効率も悪いのう。
恐らく帰る頃には元に戻っておるぞ」
「それは残念だったね。
で、こいつどうする?」
ユウが結界を完全に破壊して脱出した事が信じられずに呆然としている蜘蛛妖怪。
だが、2人の視線が自分に向けられている事でようやく我に返った。
「ひ……お前らは一体何なんだ!?」
「何なんだって……Vの配信者?」
「ただの一般人じゃよ」
「大妖怪でも壊せない結界を粉々に破壊したり、我が貯めた霊力を吸い取って大人になるよう一般人がいるわけ無かろう!」
「ここにいるんだから仕方ないじゃん。
で、何でここに来たのかって事を聞きたいんだろうけど」
「先日世話になった後輩のお礼をしておこうと思ってのう。
というわけで……ほれ」
マオがそう言って手をかざすと蜘蛛妖怪の周りの空間が歪んでいく。
「な、何をする気だ!?」
「なーに、同じような結界に入ってもらうだけよ。
心配せずともこちらは死にはせんし半日ほどで解放する予定じゃ。
まぁ、その時にどれだけの霊力を残しておけるかは知らぬがの」
「や……やめ……」
「では、達者でのう」
「頑張ってねぇ」
蜘蛛妖怪が最後に見たのは笑顔で手を振る2人の女性の姿であった。
半日経った後に本当に解放された蜘蛛妖怪であったが、人間体は無くなり本体の蜘蛛部分も縮んでいた。
そして2度と人間を餌にして力を高めようなどと思わなくなったという。
♢ ♢ ♢
家に帰ってきた2人は最初に巫女に連絡を取った。
「もしもーし、巫女さん。
こっちは終わったよ」
「はぁ〜本当に終わらせちゃったんですね。
本来は退魔士の仕事だったんですよ、これ。
これが私達の知らないところで解決したとなると、より厄介な怪異が出現したって思われちゃいますよ」
電話の向こうからはかなりの恨み節が聞こえてくる。
今回の一件でユウとマオが出向いた事でかなりの弊害が起こるのだろう。
「そのうち忘れてくれるって。
まぁ、実際異世界から来た勇者と魔王なんて怪異そのものな気もするけど」
「そこは否定しませんがお二人を協会が危険視する可能性だって……いや、よく考えたら神様のお墨付きなんですし無いか。
とはいえ、毎回こんな事やられたら本当に困りますから自重してくださいよ」
「今回ばかりは勘弁してほしいのじゃ。
次回からはこんな事にならぬようにあの4人は鍛えておくからのう」
「そうしてあげてください。
本当は私もあの子達にお説教する予定でしたが、お二人の方が効果的でしょう。
……あの子達を頼みますね」
「そこは任せといてよ。
本当に今回はありがとうね」
「助かったのじゃ」
「結果的に大変な事にはなりましたが、仇を打ってくれたのは個人的には感謝しています。
また、本業の方で」
そう言って通話が切れた。
「本業の方で……上手いこと言ってくれるのう」
「僕たちにはVの活動の方が本業だから。
確かにこういう副業は大概にしとかないとね」
こうしてカザが泣きついてきたところから始まった一連の騒動は決着を見せた。
この後、ユウとマオが花鳥風月の特訓に付き合う時はより厳しくなったというオマケを残して。