某大手焼肉屋さんにて 1
週に一回は外に食べに行こうという事でユウとマオの2人は有名な焼き肉チェーン店に来ていた。
恐らく焼き肉のチェーン店としては最大手と言える店。
ここでは基本的に90分食べ放題というシステムを取っている。
「コースは何にする?」
「妾はタンが食べたいのう」
「じゃあ、この一番高いコースしかないね。
後はソフトドリンクの飲み放題でいい?」
「今日は食事に来ておるから構わんぞ」
店員を呼んで注文を決めた2人は早速ドリンクを頼む。
マオの元には黒烏龍茶、ユウの元には謎の金色に輝く液体が運ばれてくる。
「むむ……何か変な色をしておるが、その飲み物は何じゃ?」
「えーっと、真なる黄金って意味のどりんくだけど。
ファイト一発系の炭酸飲料だよ」
「確かにあの系統の飲み物は黄金色なイメージがあるのう」
「マオこそ何で黒烏龍茶なの?」
「最近脂がキツくなってきてのう……黒烏龍茶を飲みつつタンやらハラミ辺りを摘もうかと思っておる」
「え〜年寄りくさいよ!
僕は断然カルビかな。
ステーキとかも美味しそう」
「食べ放題なんじゃから好きに食べれば良いぞ。
机に置ける範囲でな」
ユウとマオの前にあるテーブルはそこまで広くないため、多数の種類をいっぺんに頼んでしまってはあっという間に埋まってしまうだろう。
その事を考えて先ずはマオの希望するタン塩とユウが希望するカルビが運ばれてきた。
二人が其々に中央の網に乗せると、ジュウジュウと良い匂いを放ちながら肉の焼けていく音がする。
頃合いと思われるところで2人は其々の取り皿へと移してタレを漬けて口へと運ぶ。
「ん〜〜〜美味しい!!
やっぱり焼肉は最高だね」
「同感じゃな。
まさか牛の舌というものがこんなに美味じゃとは。
何処までも貪欲に食への探求を惜しまぬこの世界の人間には尊敬の念を抱いてしまうのじゃ」
「ホルモンとかもそうだけど内臓を食べようだなんて中々思わないもんね。
それに僕達の世界で牛といえば、農業用に使ってるものが主だったから食用には向いて無かったしね」
「この国でも昔はそうじゃったみたいじゃな。
そもそも江戸時代までは仏教を主としており、動物の肉という生臭モノを食べる風習自体が無かったという話じゃしな」
「手をかければこんなに美味しくなるのにね。
……うーん」
ユウは箸を口に咥えて何やら考え込み始める。
「何を考えておるか分からぬが行儀が悪いのじゃ」
「いや、僕達の世界の魔物も元は普通の生き物が変化したんだから手間をかければ食べれるのかなってね」
「うーむ、それは難しいかもしれぬのう」
ユウの純粋な疑問にマオは食事の手を止めて答え始めた。