初詣の裏の激闘 2
「お役目ご苦労様です」
「ここからは私たち3人に」
「お任せください」
そう言った直後に3人の中の1人が前に出て眼鏡をクイっとあげる。
直後、彼らの周りにいた霊達はピタリと動きを止める。
何とか動こうともがいている霊達だが何らかの力により全く動けないようだ。
「縛の名の元に霊達の動きを止めました。
次は精、お願いしますよ」
「全く……死後くらい大人しくしてもらいたいものですね」
精と呼ばれた男がパンっと手を叩く。
すると先程までもがいていた霊達が力が抜けたように動かなくなってしまった。
心なしか全員が萎んで見える。
「私の仕事は終わりましたので、後は奪にお任せしましょう」
「仕上げの大役ですからね。
任されましょう」
奪と呼ばれた男は指をパチンと鳴らすと彼の横の空間が歪む。
その歪んだ空間が震えた直後に霊達は次々とその中に飛び込んでいった……いや、あれは吸い込まれているのだろうか?
4人には何の影響も無い事から、死者のみに作用する効果らしい。
最後の一体が歪んだ空間に吸い込まれたのを確認して奪が再び指を鳴らす。
その瞬間に空間は元通りとなり、この場には花鳥風月の4人と縛、精、奪の3人のみとなった。
「改めてご協力ありがとうございました。
申し遅れましたが、私こう言う者です」
「以後お見知りおきを」
「ご苦労おかけして申し訳ありません」
3人が其々に謝罪とお礼の言葉を述べながら4人に名刺を渡していく。
そこには『あの世 送迎課』と言う部署名と、縛魂鬼、精魂鬼、奪魂鬼という名が記されていた。
「いえいえ、こちらこそ助かったであります。
やはり、この時期は皆さんお忙しそうですな」
「ええ、どうしても境界が曖昧になってしまうために日本全国の神社やお寺の近くを飛び回っておりますよ」
「慌ただしくて申し訳ありませんが次の予定がありますので失礼いたします」
「皆様のご協力は死後の裁判で評価させていただきますので期待していてください」
3人はそう言うと忙しそうに去っていった。
「あれが噂の三魂鬼ってやつ?」
「そうですぞ。
人が死んだ直後に現れて精魂鬼が精を抜き取って活動を停止させ、奪魂鬼が魂を身体から抜き取り、縛魂鬼が体を腐敗させていく……のが本来の役目だったのですが、日本人が増えすぎて手が回らなくなってきたようですな。
取りこぼしが多くなってしまい定期的に一斉回収をしている状態だそうですぞ」
「あの3人だけじゃ無いんだろうけど、それでも日本全国の死者に対応してるって考えると……」
「ブラック企業……」
バドの説明にカザは想像しながら身震いし、ルナが呆れたように呟いた。
「何にしても小生達のお仕事はこれでお終いでありますから、折角なのでこのまま初詣にでも参りましょうかな?」
「いや、こんな泥と汗まみれで行けるわけないでしょ」
「早くお風呂に入りたい……」
「とりあえず私の教会まで帰りましょう。
ダディがお風呂沸かしてくれてるらしいから、そこに入ってからどうするか考えましょう」
こうして4人は事件を解決して帰路に着くのであった……が、家に辿り着いてから問題が起こった。
Vの仕事も兼任し始めた為に新年最初の配信予定を入れていたのを忘れていたのだ。
それも先輩であるユウとマオに呼ばれていたコラボ放送を。
4人は慌ててジャンケンをして誰が出るか決める事にし……結果、カザが膝から崩れ落ちて「僕たちもブラック企業だ……」と力無く呟いたのであった。