完全分離した女神様
「という訳であちらの世界では絶賛、競走馬の育成ブームの真っ最中らしいですよ」
久しぶりにユウ達の家にやってきたルーナが伝えたのは向こうの世界で流行りだしたお馬さん文化だった。
人間と魔族の戦争が終わって平和になった世界では多少の余裕が出来ている。
それを証明するように新たな娯楽や文化が流行ることはユウ達にとっても嬉しい報告である。
しかし、その中で気になる話が一つ。
「馬並さんの像を彫ったら馬並さんの配信が流れたの?」
そう……配信者を模した像から、その配信者中心の映像が流れた事であった。
こちらの世界とあちらの世界がつながった事で物が映る物質にユウ達の配信が流される事があった。
それをルーナが拾い上げて自分たちの像の目からプロジェクターのように流れるようにしたわけだが、まさか他のライバーの映像まで流れているとは思わなかったのだ。
「ルーナ、これはお主の仕業であろう?
一体どう言う事なのじゃ?」
問い詰めるマオに対してルーナは軽く手を挙げて首を振る。
「私に聞かれても困ります。
私は女神の分体ですが本体から離れすぎた時期が長い上に、あちらに無い物の影響を受けすぎました。
統合される気もする気もないので別人と変わらないのでは?」
「そうかもしれぬが……そうするとお主もここに骨を埋めるつもりなのかえ?」
「その為にこの世界の神達と挨拶をして顔繋ぎした部分もありますからね。
最初の話に戻りますが、私はこの世界の情報をあちらに送りながら楽しく暮らせれば満足なのです。
その送った情報を本体がどう扱うかは興味のない話です」
手をパタパタと振りながらやる気なく答えるルーナに2人はため息をつく。
初めてこの世界で会った時はもう少ししっかりしていたが、いつの間にかこの世界の空気に馴染みすぎるくらいに馴染んでしまったようだ。
だが……
「そうだね。
僕たちもあの世界に干渉するつもりはないから。
配信を見て勝手に影響される分には勝手に影響されてくれって感じだし」
「世界に余裕があれば影響を受けて楽しくなるかもしれぬし、余裕がなければその余裕が出来るまで頑張れと言ったところじゃのう」
この世界の空気に触れて適応してしまったのはこの2人の方が先である。
向こうの女神も積極的に配信を流す方向で動いているのならば、まだ見ぬV達とも積極的にコラボして、あちらの世界をV達の石像だらけにしてしまおうか等と話しながらその日の夜は更けていくのであった。